インフルエンザの症状・原因・検査・治療|福岡市早良区
1. はじめに:その症状、ただの風邪だと思っていませんか?
「急に39℃近い熱が出た」「全身の関節が痛くて、起き上がるのもつらい」「同僚がインフルエンザにかかったけれど、自分は大丈夫だろうか?」——冬が近づくと、このような急な体調不良や不安に悩まされる方が増えてきます。それは、単なる「こじらせた風邪」ではなく、インフルエンザかもしれません。
インフルエンザは、インフルエンザウイルスによって引き起こされる急性の呼吸器感染症です。一般的な風邪に比べ、急な発熱や全身の痛みが目立つことが多く、肺炎や脳症などの合併症を起こすこともあります。特に、高齢の方、心臓や肺、腎臓に持病のある方、糖尿病の方、小さなお子さんや妊婦さんは重症化に注意が必要です[1]。
「熱が下がったので、もう仕事に戻ってもよいですか」「家族にうつさないためには、何をすればよいですか」。熱が下がっても感染を広げる可能性はしばらく残ります。薬の使い方だけでなく、休養や家庭での感染対策も回復までの大切なポイントです。
本記事では、インフルエンザの症状や原因、検査を受けるタイミング、治療と予防について、受診の目安とともに解説します。
【この記事の要点】
- インフルエンザは、急な発熱、頭痛、筋肉痛、強いだるさなどを伴う呼吸器の感染症です。熱が高くならない場合もあります。
- 高齢の方、妊娠中の方、心臓や肺などに持病のある方は、重症化しやすいため早めに相談してください。
- 息苦しい、呼びかけに反応しにくい、けいれんがある場合は救急要請してください。解熱していても、全身の状態が悪ければ受診が必要です。
- 症状や流行状況と検査を組み合わせて判断します。休養と水分補給を基本に、必要に応じて抗インフルエンザ薬を使います。
この記事を書いた医師
うらマイハートクリニック院長 浦 祐次郎
(循環器専門医・総合内科専門医・TAVI実施医/指導医・心血管インターベンション治療学会認定医・SHD心エコー図認証医・心臓リハビリテーション指導士)
循環器専門医院長 浦 祐次郎から一言▶ 総合内科専門医(院長 浦祐次郎)からの一言 「検査が陰性だったので、ただの風邪でしょうか」。発症して間もないと、インフルエンザでも陰性になることがあります。検査結果だけでなく、いつから熱が出たか、周囲で流行しているかも確認します。息苦しさや水分がとれない状態があれば、陰性でも受診を急いでください。
2. インフルエンザとは?(疾患の定義・概要)
インフルエンザ(Influenza)は、インフルエンザウイルス(Influenza virus)に感染することによって発症する、急性の呼吸器感染症です。一般的な風邪(普通感冒)が、ライノウイルス、RSウイルス、アデノウイルスなど多種多様なウイルスによって引き起こされ、主にのどの痛み、鼻水、くしゃみ、軽い咳といった上気道の局所的な症状が比較的ゆっくりと現れるのに対し、インフルエンザは全く異なる様相を呈します[2]。
インフルエンザの特徴は、「急な発症」と「全身症状」です。38℃以上の発熱、悪寒・ふるえ、頭痛、関節痛や筋肉痛、強いだるさなどが現れ、咳、鼻水、のどの痛みを伴うこともあります。ただし、高齢の方やワクチンを接種した方などでは、高熱が出ないこともあります。「高熱がないからインフルエンザではない」とは言い切れません[1]。
季節性の流行を起こすインフルエンザウイルスは、主にA型とB型です。ウイルスが変化すると、過去の感染などで得た免疫が十分に働かないことがあり、繰り返し流行します。特にA型では大きな変化によって新型インフルエンザが出現し、世界的な大流行につながることもあります。2009年のA(H1N1)pdm09による流行も、その一例です[2]。
主な感染経路は、飛沫感染と接触感染です。飛沫感染は、感染した人の咳やくしゃみ、会話で飛び散るしぶきを吸い込むことで起こります。接触感染は、ウイルスが付いたドアノブやスマートフォンなどに触れた手で、目、鼻、口を触ることで起こります。人が集まる学校や職場、高齢者施設などでは、感染が広がりやすくなります[2]。
3. インフルエンザの症状と危険なサイン
インフルエンザの症状や回復までの日数には個人差があります。次の表はよくある経過の目安で、必ずこの順番で進むわけではありません。熱の高さだけでなく、呼吸の様子や水分をとれているかも確認しましょう[1]。
▼インフルエンザの典型的な症状経過
| 経過の段階 | 期間の目安 | 主な症状 | 特徴・自分事として捉えるポイント |
|---|---|---|---|
| 潜伏期間 | 感染から1〜3日 | ほぼ無症状 | 「昨日、満員電車で咳をしている人が近くにいたな…」この時点では自覚症状はありませんが、ウイルスは体内で静かに増殖を始めています。発症の前日から、すでに他人にうつす可能性があることを知っておきましょう。 |
| 急性期(発症初期) | 発症から1〜3日 | ・38℃以上の突然の高熱 ・悪寒、体の震え ・ズキズキする頭痛 ・節々がギシギシと痛む関節痛・筋肉痛 ・起き上がれないほどの強い倦怠感 |
急な寒気や発熱、全身の痛みで始まることが多く、咳やのどの痛みが最初から出る場合もあります。高熱が出ないこともあるため、症状と周囲の流行状況を合わせて考えます[1]。 |
| 呼吸器症状期 | 発症初期から数日 | ・乾いた激しい咳(コンコン) ・鼻水、鼻づまり ・のどの強い痛み、声がれ ・痰が絡む咳(ゴホゴホ) |
咳やのどの痛みは、発症初期から見られることも、熱が下がってから残ることもあります。「熱は下がったけれど、咳で眠れない」という場合は相談してください[1]。 |
| 回復期 | 発症から7〜10日 | 症状は全体的に軽快するが、軽い咳や倦怠感が残ることがある。 | 熱やだるさが改善しても、しばらくウイルスの排出が続くことがあります。登校・登園の基準や職場の規則に沿って休養をとり、咳がある間は周囲への感染対策を続けましょう[1]。 |
多くの方は、休養と必要な治療により1週間から10日ほどで回復に向かいます。ただし、肺炎や脳症などの合併症には注意が必要です。ウイルスそのものや、感染後に別の細菌が入り込む二次感染によって起こることがあります[2]。
▼特に注意すべき合併症
| 合併症の種類 | 主な対象者 | 危険なサイン |
|---|---|---|
| インフルエンザ脳症 | 主に乳幼児(特に1〜5歳) | ・意識障害(呼びかけに答えない、視線が合わない) ・けいれん(ひきつけ)が5分以上続く ・意味不明な言動、おびえ、幻覚(異常行動) |
| 肺炎(ウイルス性・細菌性) | 高齢者、基礎疾患のある方 | ・一度下がった熱が再び上昇する ・呼吸が速い、息苦しい、ゼーゼーする ・胸の痛み ・色のついた痰(黄色、緑色)が出る |
| 心筋炎・心膜炎 | 全年齢(特に若年層) | ・胸の痛み、胸の圧迫感 ・動悸、息切れ ・脈の乱れ |
| 中耳炎 | 小児 | ・耳の強い痛み ・機嫌が悪い、泣き止まない ・耳だれ |
「ぐったりして呼びかけに反応しない」「息が苦しく、唇の色が悪い」「けいれんが続く」場合は、夜間や休日でも救急要請してください。熱がいったん下がってから再び上がる、胸の痛みがある、水分をとれず尿が減っている場合も、早めの受診が必要です[2][3]。
4. 日本におけるインフルエンザの疫学と現状
日本では、インフルエンザは冬を中心に流行する身近な感染症です。ただし、流行の始まりやピークはシーズンによって異なり、冬以外に患者数が増えることもあります。地域の流行状況は、国立健康危機管理研究機構(JIHS)や自治体が公表する情報で確認できます[1]。
新型コロナウイルス感染症の流行期にはインフルエンザの報告が大きく減りましたが、その後は再び流行が見られています。流行時期がずれることもあるため、「まだ冬ではないから大丈夫」とは考えず、周囲の感染状況にも気を配りましょう[1]。
年齢階級別の発生状況を見ると、最も報告数が多いのは5歳から9歳の学童期の子どもたちです。幼稚園や保育園、小学校といった集団生活の場が、感染が広がるきっかけになることがあります。子どもたちは免疫が未熟であることに加え、友人との距離が近く、遊びの中で無意識に接触する機会が多いため、ひとたびウイルスが持ち込まれると、瞬く間にクラスター(集団感染)が発生してしまいます。
一方で、インフルエンザによる重症化や死亡のリスクという観点から最も注意が必要なのは、65歳以上の高齢者の方々です。加齢に伴う免疫機能の低下(免疫老化)に加え、多くの方が心臓病、呼吸器疾患、糖尿病といった何らかの基礎疾患(持病)を抱えているため、インフルエンザの感染が引き金となって持病が急激に悪化したり、重篤な肺炎を合併したりする危険性が非常に高いのです。高齢者施設での集団感染は、入所者の生命を直接脅かす、極めて深刻な事態に直結します。また、年齢にかかわらず、慢性的な心疾患(心不全、狭心症など)、呼吸器疾患(喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)など)、腎臓病、糖尿病、そして免疫不全状態にある方も、インフルエンザのハイリスク群であり、特に厳重な予防と早期治療が求められます[1]。
5. インフルエンザウイルスの原因と分類
インフルエンザウイルスは、内部のタンパク質の違いによってA型、B型、C型、D型に分類されます。このうち、人の間で季節性の流行を起こすのは主にA型とB型です[2]。
| ウイルスの型 | 主な特徴 | 流行の傾向 | 主な感染対象 | 臨床的重要性 |
|---|---|---|---|---|
| A型 | 表面のタンパク質(HA、NA)が変化しやすく、複数の亜型(H1N1、H3N2など)がある。肺炎などの重い合併症に注意する[2]。 | 季節性の流行を起こす。新しい型が出現すると、世界的な大流行につながることがある[2]。 | ヒト、鳥類(カモなど)、哺乳類(ブタ、ウマなど) | 最も高い |
| B型 | 主にヒトに感染する。ビクトリア系統と山形系統に分類されるが、近年の流行はビクトリア系統が中心[1]。 | A型と同じシーズンに流行することがあり、流行の時期や規模は年によって異なる[1]。 | 主にヒトのみ | 高い |
| C型 | 主に小児期に感染し、一般に症状は軽い[2]。 | 大規模な流行は起こさない。感染しても軽い鼻風邪程度の症状で済むことが多い。 | ヒト、ブタ | 低い |
| D型 | 主に牛や豚などの家畜に感染するウイルス。 | 現時点では、ヒトへの感染や発病は確認されていない。 | 牛、豚など | 不明 |
A型は、表面のタンパク質であるヘマグルチニン(HA)とノイラミニダーゼ(NA)の組み合わせによって、さらに細かく分類されます。人の間で主に流行しているのはA(H1N1)pdm09とA(H3N2)です。小さな変化を繰り返すため、過去の感染で得た免疫が十分に働かないことがあります[2]。
B型インフルエンザウイルスは、主にヒトに感染し、A型と同じシーズンに流行することもあります。A型の流行が落ち着いた頃に、B型の患者数が増える年もありますが、流行する順番は一定ではありません。子どもでは腹痛や下痢を伴ったり、筋肉の炎症(筋炎)による足の痛みを訴えたりすることもあります。B型でも肺炎や脳症などの合併症が起こるため、型だけで軽い病気と判断しないことが大切です[2]。
6. 当院での検査・診断アプローチ
インフルエンザの診断では、症状が始まった時期や周囲の流行状況を伺い、必要に応じて検査を行います。検査結果だけでなく、症状や診察所見も合わせて判断します。
現在、最も広く用いられているのが、鼻の奥の粘膜(鼻咽頭)や鼻の入り口付近(鼻腔)を細い綿棒でぬぐい、その検体を使ってウイルスのタンパク質(抗原)を検出する「迅速抗原検査」です。この検査の最大のメリットは、5〜15分という短時間で結果が判明し、その場でA型かB型かの判定も可能である点です。これにより、すぐに適切な治療を開始することができます[2]。
迅速抗原検査は、発症して間もない時期には、感染していても陰性になることがあります。これを「偽陰性」といいます。陰性でも、症状や周囲の流行状況によって再検査や治療を検討します。検査のために一定時間待つ必要はありません。持病のある方や妊婦さん、症状の強い方は、発症早期から受診のタイミングを相談してください[1][4]。
発熱や咳が似ている新型コロナウイルス感染症については、新型コロナウイルス感染症のコラムで詳しく説明しています。
心不全や狭心症、慢性腎臓病(CKD)などの持病がある方では、感染をきっかけに病状が悪化することがあります。検査でインフルエンザを確認するだけでなく、持病への影響も確認します。
息苦しさや胸の痛み、強い脱水などがある場合は、肺炎や持病の悪化がないか、症状に応じて追加の検査を検討します。次の検査をすべての方に行うわけではありません。
▼当院におけるインフルエンザ診療での応用検査
| 検査 | 検査目的 | この検査で何がわかるか |
|---|---|---|
| CT検査 | 肺炎の精密検査 | 症状や診察、胸部X線で肺炎が疑われ、詳しい評価が必要な場合に用います。CT画像だけで細菌性かウイルス性かを確実に区別できるわけではありません。 |
| 心臓エコー検査 | 心機能の評価 | 胸の痛み、動悸、息苦しさなどがある場合に、心臓の動きや血液を送り出す力を調べます。心筋炎が疑われるときは、心電図や血液検査なども組み合わせ、必要に応じて専門施設へ紹介します。 |
| BNP迅速測定 | 心不全のスクリーニング | 心不全が疑われる場合に、血液中のBNPを測定して判断の参考にします。年齢や腎臓の働きなどでも値が変わるため、症状や他の検査と合わせて評価します。 |
| 院内血液検査・尿検査 | 全身状態の評価 | 脱水や腎機能の悪化が疑われる場合に、クレアチニンや電解質(ナトリウム、カリウムなど)、炎症反応を調べます。必要な補液の量や薬の調整を考える参考になります。 |
当院には発熱症状のある方の専用入口があります。インフルエンザが疑われる場合は、受診方法について事前にお電話でご相談ください。
7. 最新ガイドラインに基づく治療・薬物療法
インフルエンザと診断された場合、治療の柱は「①抗インフルエンザウイルス薬による原因療法」と「②症状を和らげる対症療法」、そして「③十分な休養と水分補給」の3つです。
治療の基本は、何よりもまず安静にして、ご自身の免疫力がウイルスと戦うのを助けることです。しかし、ウイルスの増殖を直接抑え込む「抗インフルエンザウイルス薬」を適切なタイミングで使用することで、つらい発熱期間を1〜2日程度短縮し、体外へのウイルス排出量を減らすことで、周囲への感染リスクを低減させる効果が期待できます[1][4]。
抗インフルエンザウイルス薬は、発症から48時間以内に始めると効果が得られやすいため、早めの相談が大切です。ただし、48時間を過ぎたら治療も受診も不要という意味ではありません。重症の方や入院が必要な方、重症化リスクの高い方では、それ以降でも医師が抗ウイルス薬の使用を検討します。全員に抗ウイルス薬が必要なわけではなく、症状や持病を踏まえて判断します[1][5][6]。
日本で使用される主な抗インフルエンザウイルス薬を以下に示します。年齢、症状の重さ、持病、腎臓の働き、内服や吸入が可能かを考えて選びます。表は通常の成人用量であり、小児や腎機能が低下している方では調整が必要です。
▼主な抗インフルエンザウイルス薬の比較
| 薬剤名(一般名) | 商品名® | 剤形 | 用法・用量(成人) | 特徴と注意点 |
|---|---|---|---|---|
| オセルタミビルリン酸塩 | タミフル® | 経口薬(カプセル、ドライシロップ) | 1回75mgを1日2回、5日間内服[7] | ・内服する薬で、小児にはドライシロップを用いることもあります。 ・腎機能が低下している方では、回数や量の調整が必要です[7]。 |
| バロキサビル マルボキシル | ゾフルーザ® | 経口薬(錠剤、顆粒) | 体重80kg未満は40mg、80kg以上は80mgを1回内服[8] | ・1回の内服で治療する薬です。 ・薬が効きにくいウイルスが出現することがあり、特に小児では適応を慎重に判断します[8]。 |
| ザナミビル水和物 | リレンザ® | 吸入薬(吸入粉末剤) | 1回10mgを1日2回、5日間吸入[9] | ・専用の吸入器を正しく操作する必要があります。 ・喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)がある方は、吸入後の気管支の収縮などに注意し、使用を相談します[9]。 |
| ラニナミビルオクタン酸エステル水和物 | イナビル® | 吸入薬(吸入粉末剤) | 40mgを1回吸入[10] | ・1回の吸入で治療しますが、規定量を確実に吸い込む必要があります。 ・吸入が難しい方では別の薬を選びます。喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)がある方は使用を相談してください[10]。 |
| ペラミビル水和物 | ラピアクタ® | 点滴薬(点滴静注) | 通常300mgを15分以上かけて1回点滴静注[11] | ・内服や吸入が難しい場合などに検討します。 ・重症化のおそれがある方では、量や投与日数を調整することがあります。 ・腎機能に応じた減量が必要です。点滴が内服薬より常に優れているわけではありません[11]。 |
解熱鎮痛薬は、年齢や持病に合うものを選びます。特に小児のインフルエンザでは、アスピリンなどのサリチル酸系薬剤、ジクロフェナクやメフェナム酸を自己判断で使用しないでください。医師から別の病気のために処方された薬も、勝手に中止せず使用の可否を確認してください[12]。
発熱や頭痛、関節痛がつらいときには、アセトアミノフェンなどを用います。症状に合わせて短期間使用し、1回量や間隔は年齢・体重・肝臓の状態などに応じた指示を守ってください。市販の風邪薬との重複で同じ成分を多くとってしまうことがあるため、併用する薬は医師・薬剤師に確認しましょう[13]。
抗インフルエンザ薬を使用しているかどうかにかかわらず、小児・未成年者では異常行動が見られることがあります。少なくとも発熱から2日間は、一人にせず、窓や玄関の施錠など転落や飛び出しを防ぐ対策をとってください[7]。
8. 治療後の過ごし方
外来では、「熱が下がった後の薬はどうするか」「いつから仕事に戻れるか」といった相談を受けます。治療後の過ごし方で迷いやすい点を確認しましょう。
課題1:熱が下がったあとの薬の使い方
「熱が下がったので、残りの薬はやめてもよいですか」と聞かれることがあります。タミフル®やリレンザ®は通常5日間使用する薬で、症状が軽くなっても処方された期間に沿って使います。ただし、強い副作用がある、飲めない、吸入できないといった場合は、無理に続けず医師や薬剤師に相談してください。熱が再び上がるときは、肺炎などの合併症も考えて再評価が必要です[7]。
課題2:受診のタイミング——持病のある方は早めの相談を
「仕事が休めず、熱が出てから3日たってしまいました」という場合でも、受診をあきらめる必要はありません。抗ウイルス薬は早い開始ほど効果が得られやすいものの、受診では肺炎や脱水などの合併症がないかも確認します。急な発熱や全身の痛みがあり、特に持病がある方や妊婦さんは、早めに医療機関へ連絡してください[1][5][6]。
課題3:「自分は大丈夫」という過信と周囲への影響
「微熱なので出社してもよいと思いました」と話される方もいます。インフルエンザは、高熱が出ず、微熱やだるさだけで経過することもあります。症状が軽くても周囲にうつす可能性があるため、流行期に体調を崩したときは外出を控え、必要に応じて受診を相談しましょう。
▼インフルエンザと診断された後の社会生活のルール
| 法律・規則 | 対象 | 出席・出勤停止期間の基準 | 目的 |
|---|---|---|---|
| 学校保健安全法 | 幼稚園、小・中・高等学校など | 「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児にあっては3日)を経過するまで」[14] | 学校における集団感染の防止 |
| 職場の就業規則・医師の指示 | 社会人 | 成人に全国一律の法定出勤停止日数はありません。職場の規則、医師の指示、症状を踏まえて復帰を判断します。 | 職場における感染拡大の防止と、本人の十分な療養の確保 |
熱が下がっても、しばらくウイルスの排出が続くことがあります。学校・園は出席停止の基準を確認し、職場は勤務先の規則や医師の指示に沿って復帰を判断してください。体調が戻らないうちに無理をしないことも大切です[14]。
9. 感染後の運動再開
運動の再開は、熱だけでなく、食事や水分がとれているか、だるさが残っていないかも見ながら考えます。
インフルエンザでは筋肉痛が出ることがあります。また、まれに心臓の筋肉に炎症が起こる「心筋炎」を合併します。心筋炎では心臓の働きが低下し、心不全や不整脈につながることがあるため、胸の痛みや動悸、息苦しさがある場合は早めの評価が必要です[2]。
心筋梗塞や狭心症、心不全などの持病がある方では、発熱や脱水によって心臓への負担が増え、症状が悪化することがあります。感染後の運動再開にあたっては、持病の状態も確認します。
感染をきっかけに息切れやむくみが強くなることもあります。心不全の症状や検査については、心不全のコラムで詳しく説明しています。
健康な方では、熱が下がり、食事や水分をとれて体調が戻ってから、軽いウォーキングなどで少しずつ運動を再開しましょう。動悸、息切れ、胸の痛み、めまいが出たら中止して受診を相談してください。心筋炎などの合併症がある場合は、医師が再開の時期を判断します。
感染後も咳が長く続く場合の原因や検査については、慢性咳嗽のコラムをご覧ください。
循環器専門医院長 浦 祐次郎から一言▶ 総合内科専門医(院長 浦祐次郎)からの一言 「熱は下がったのに、少し歩くとしんどいんです」。熱が下がっても、体力がすぐ元に戻るとは限りません。食事や水分がとれ、だるさが軽くなってから、散歩などで少しずつ体を動かしましょう。胸の痛みや動悸、息切れが出る場合は無理をせず、医師に相談してください。
10. インフルエンザの予防と感染拡大防止
予防の一つが、インフルエンザワクチンの接種です。接種には、主に次の二つの効果が期待されます。
- 発症予防効果: ワクチンを接種することで、インフルエンザウイルスに対する免疫(抗体)が作られ、感染しても症状が出にくくなります。完全に感染を防ぐことはできなくても、発症の確率を有意に下げることができます。
- 重症化予防効果:発症を防ぐ効果に加えて、重い合併症や入院、死亡のリスクを下げる効果も期待されています。ただし、効果には年齢や持病、流行株などによる違いがあり、接種すれば重症化を必ず防げるわけではありません[1]。
インフルエンザワクチンの効果が現れるまでには、およそ2週間かかります。流行前の10〜11月ごろの接種が目安ですが、流行が続いている時期にも接種を検討できます。高齢の方や心臓・肺・腎臓などに持病のある方、糖尿病の方、妊婦さんは、特に予防について相談してください。ワクチンの種類や接種回数は年齢などによって異なります。国内では3価のワクチンが使用され、不活化ワクチンは通常、13歳未満では2回、13歳以上では1回の接種が基本です[15]。
ワクチン接種に加えて、手洗いや咳エチケット、換気などの感染対策も続けましょう。
▼今日から実践できる!インフルエンザ予防の5つの基本
| 予防策 | 具体的な行動 | なぜ重要か? |
|---|---|---|
| 1. 手洗い・手指消毒 | 外出後、調理や食事の前、トイレの後など、こまめに石鹸と流水で30秒以上かけて手を洗う。アルコールベースの手指消毒剤も有効。 | 手についたウイルスを物理的に除去・不活化し、接触感染のリスクを断ち切る最も基本的な方法です。 |
| 2. 咳エチケット | 咳やくしゃみが出る際は、不織布マスクを着用する。マスクがない場合は、ティッシュやハンカチ、あるいは服の袖の内側で口と鼻をしっかりと覆う。 | ウイルスを含んだ飛沫が周囲に拡散するのを防ぎ、飛沫感染を防止するための社会的なマナーです。 |
| 3. 適度な湿度の保持 | 空気が乾燥する冬場は、加湿器などを使用して室内の湿度を50〜60%に保つ。 | インフルエンザウイルスは低温・乾燥した環境で活性化します。また、空気が乾燥すると、のどや鼻の粘膜のバリア機能が低下し、ウイルスに侵入されやすくなります。 |
| 4. 十分な休養と栄養 | 普段から十分な睡眠時間を確保し、ストレスを溜めない生活を心がける。主食・主菜・副菜のそろったバランスの良い食事を摂る。 | 免疫システムを正常に機能させ、ウイルスに対する抵抗力を高く保つための土台となります。 |
| 5. 人混みを避ける | 流行シーズンには、不要不急の外出や、繁華街、イベント会場など、不特定多数の人が密集する場所への出入りをできるだけ控える。 | ウイルスに暴露される機会そのものを減らす、物理的な防御策です。 |
11. こんな症状があればすぐにご相談ください(受診の目安)
急な発熱や全身の痛みがあり、インフルエンザが疑われるときは早めに受診を相談してください。特に高齢の方、妊婦さん、持病のある方は、検査のために12時間待つ必要はありません。息苦しさや意識の異常など、次のような危険な症状がある場合は、発症からの日数にかかわらず対応が必要です[1]。
▼見逃してはいけない!インフルエンザの危険なサイン
| 対象者 | カテゴリ | 具体的な症状(一つでも当てはまれば直ちに受診を!) |
|---|---|---|
| 小児(お子様) | 呼吸の状態 | ・呼吸が速い、浅い(肩で息をしている、息がゼーゼー・ヒューヒューする) ・息苦しそうにしている、顔色や唇の色が悪い(青白い、紫色) |
| 意識の状態 | ・呼びかけに反応しない、視線が合わない、ぐったりしている ・意味不明なことを言う、幻覚が見える、ひどくおびえる(異常言動) ・けいれん(ひきつけ)を起こした、またはけいれん後も意識が戻らない |
|
| 全身の状態 | ・嘔吐や下痢がひどく、水分が全く摂れない ・おしっこが半日以上出ていない |
|
| 成人・高齢者 | 呼吸の状態 | ・呼吸困難感、息切れがひどい(少し動いただけでも息が上がる) ・胸に強い痛みや圧迫感がある ・血の混じった痰(たん)が出る、激しい咳が止まらない |
| 熱の経過 | ・3日以上たっても38℃以上の高熱が続く ・一度解熱したのに、再び高熱が出てきた(二峰性発熱) |
|
| 意識の状態 | ・意識がもうろうとしている、話のつじつまが合わない、反応が鈍い ・立てない、歩けない |
|
| 全身の状態 | ・極度の脱水症状(尿量が極端に少ない、口の中がカラカラに乾いている) ・もともとある基礎疾患(心不全、喘息、糖尿病など)が急激に悪化した |
判断に迷う場合は、医療機関や#7119(救急安心センター事業)、#8000(こども医療でんわ相談)へ相談できます。ただし、呼びかけに反応しない、強い呼吸困難がある、けいれんが続く場合は、電話相談で様子を見ずに救急要請してください[3]。
発熱症状のある方は、来院前にお電話ください。症状を伺い、来院時間や受診方法をご案内します。
12. インフルエンザに関するよくあるご質問(FAQ)
外来診療で、患者様からよくいただく質問とその回答をまとめました。
A
熱が下がっても、周囲にうつす可能性はしばらく残ります。学校・園では「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児は3日)を経過するまで」が出席停止の原則です。発症日と解熱日は0日目として数えます。例えば月曜日に発症した場合、発症後の日数だけでも土曜日までは出席停止となり、解熱後の日数も満たす必要があります。職場には全国一律の法定日数はないため、就業規則や医師の指示に沿って判断してください。復帰のための治癒証明書・陰性証明書は、厚生労働省の方針では不要です[1]。
A
タミフル®やリレンザ®は通常5日間使用するため、症状が軽くなっても処方された期間に沿って使ってください。強い副作用がある、薬を飲めない、うまく吸入できない場合は、医師・薬剤師に相談しましょう。途中でやめると必ず再燃したり耐性ウイルスが生じたりする、と言い切れるものではありません[7]。
A
ワクチンを接種しても感染・発症することはありますが、発症や重症化のリスクを下げる効果が期待されます。「かかったから意味がなかった」とは言えません。一方で、その方の症状が軽かった理由をワクチンだけで説明することもできません。接種後も手洗いや咳エチケットを続けましょう[1]。
A
食欲がなければ、一度にたくさん食べようとせず、食べやすいものを少量ずつ取りましょう。水分もこまめに補給してください。水分まで吐いてしまう、尿が減る、ぐったりする場合は受診が必要です。心不全や腎臓病で水分制限中の方は、補給量を医師に相談してください[1]。
A
強い息苦しさ、呼びかけへの反応の低下、意識を失う、けいれんがある場合は救急要請してください。高熱の程度だけで判断せず、呼吸や意識、全身の状態を見てください[3]。
福岡市でインフルエンザの診療なら|うらマイハートクリニックの特徴
うらマイハートクリニック(福岡市早良区藤崎・原)は、内科・循環器内科・腎臓内科・呼吸器内科を診療するクリニックです。
院長(浦 祐次郎)は、循環器専門医・総合内科専門医・心血管インターベンション治療学会認定医・TAVI実施医/指導医・SHD心エコー図認証医・心臓リハビリテーション指導士として、九州医療センターで13年間、小倉記念病院で1年半にわたり、重症心疾患の診療に従事してきました。副院長の浦 雅紀子は腎臓内科医として、福岡山王病院で約5年間、九州医療センターで6年間にわたり、心腎連関を踏まえた包括的な腎臓病診療に従事してきました。
現在はうらマイハートクリニックにて内科医2名体制で円滑な診療に努めています。
- 院内の検査体制:BNPなど、当日結果がわかる血液検査、心臓エコー検査を含む各種エコー検査、CT検査(冠動脈CTを含む)に対応。
- 通いやすい診療体制:診療開始は8時30分から、水曜は20時まで診療。駐車場11台完備。発熱症状のある方の専用入口あり。
急な発熱や全身の痛みがある方、インフルエンザの感染や予防接種について相談したい方は、福岡市早良区のうらマイハートクリニックまでお気軽にご相談ください。
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参考文献
[1] 厚生労働省. 令和8年度冬季 急性呼吸器感染症(ARI)総合対策に関するQ&A.
[2] 国立健康危機管理研究機構(JIHS). インフルエンザ(詳細版).
[3] 総務省消防庁. 救急車を上手に使いましょう―救急車 必要なのはどんなとき?―. 2025.
[4] 日本感染症学会. 今冬のインフルエンザに備えて 治療編〜前回の提言以降の新しいエビデンス〜. 2021.
[6] 日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会. 2025/26シーズンのインフルエンザ治療・予防指針. 2025.
[7] 医薬品医療機器総合機構(PMDA). タミフルカプセル75.
[8] 医薬品医療機器総合機構(PMDA). ゾフルーザ錠10mg/錠20mg/顆粒2%分包.
[10] 医薬品医療機器総合機構(PMDA). イナビル吸入粉末剤20mg.
[11] 医薬品医療機器総合機構(PMDA). ラピアクタ点滴静注液バッグ300mg/バイアル150mg.
[12] 医薬品医療機器総合機構(PMDA). 医薬品・医療用具等安全性情報 No.167:インフルエンザによる発熱に対して使用する解熱剤について. 2001.