たこつぼ心筋症の症状・原因・検査・治療|福岡市早良区
「突然胸が痛くなり、心筋梗塞かと思った」「入院したら、たこつぼ心筋症と言われた」。聞き慣れない病名に、どんな病気なのか、元の生活に戻れるのかと戸惑う方もいるでしょう。
たこつぼ心筋症は、心臓の筋肉の一部が急にうまく縮まなくなる病気です。心臓の動きは回復することが多いものの、発症直後には入院して慎重に経過をみる必要があります。
強い悲しみや驚きの後に起こることが知られていますが、きっかけは心の負担だけではありません。感染症や手術など体の負担が関係することも、はっきりした原因が見当たらないこともあります。「ストレスがある人の病気」と決めつけると、症状を見逃したり、ご本人が必要以上に自分を責めたりすることにつながります。
この記事では、胸の痛みや息苦しさが出たときの対応、原因、病院で受ける検査、薬の考え方、退院後の過ごし方を説明します。今、強い胸痛や冷汗、息苦しさがある方は、記事を読み進めず救急要請してください。[1][2][3]
この記事の要点
- たこつぼ心筋症は、心臓の筋肉の一部の動きが急に悪くなり、胸痛や息苦しさが現れる病気です。
- 心筋梗塞と症状が似ているため、自宅では見分けられません。強い胸痛、冷汗、呼吸困難、失神がある場合は救急要請してください。
- 心の負担だけでなく、感染症や手術などもきっかけになり、明らかなきっかけなしに発症することもあります。
- 心臓の動きは数日から数か月で回復することが多く、心エコーなどで経過を確認しながら、薬と活動量を調整します。
この記事を書いた医師
うらマイハートクリニック院長 浦 祐次郎
(循環器専門医・総合内科専門医・TAVI実施医/指導医・心血管インターベンション治療学会認定医・SHD心エコー図認証医・心臓リハビリテーション指導士)
循環器専門医院長 浦 祐次郎から一言▶ 循環器専門医(院長 浦祐次郎)の臨床コメント 「最近つらいことがあったので、胸の痛みもストレスでしょうか」。そう思っても、痛みの原因は検査で確かめる必要があります。たこつぼ心筋症も心筋梗塞も、発症直後は急いで対応したい病気です。強い症状があるときは、ご自身で病名を決めず、救急車を呼んでください。
症状|突然の胸の痛み、息苦しさに注意する
胸の中央が締めつけられる、圧迫される、急に息が苦しくなるといった症状がよくみられます。動悸、冷汗、吐き気、めまいを伴うこともあります。胸の痛みが目立たず、息苦しさが中心となる方もいます。
こうした感じ方だけで、たこつぼ心筋症と心筋梗塞を区別することはできません。[1][4]
心臓の働きが大きく低下すると、肺に水分がたまって呼吸が苦しくなる心不全や、血圧が下がって全身に血液が十分届かない状態を起こすことがあります。横になると苦しい、話すのもつらい、意識が遠のくといった症状は、普段の外来予約まで待つ状態ではありません。
別の病気で入院中に発症する場合は、ご本人が胸痛を訴えられず、心電図の変化や血圧の低下から見つかることもあります。「胸が痛くないから、この病気ではない」とは言い切れません。心不全による息切れやむくみについては、心不全のコラムをご覧ください。
症状が少し軽くなっても、自分で運転しない
強い胸痛、冷汗を伴う胸の圧迫感、急な息苦しさ、失神があれば救急要請してください。痛みがいったん弱まっても、重い心臓病が否定されたわけではありません。
ご自身で車を運転して受診せず、救急隊に症状と始まった時刻を伝えてください。意識がなく普段どおりの呼吸がない場合は、周囲の方が救急要請し、指示に従って胸骨圧迫とAEDの使用を行います。[3][5]
たこつぼ心筋症とは|心臓の動きが一時的に悪くなる病気
心臓は筋肉が縮むことで血液を送り出します。たこつぼ心筋症では、その筋肉の一部が急に十分縮まなくなります。典型的なタイプでは、左心室の先端付近の動きが弱くなり、心臓が縮むときにその部分がふくらんだ形になります。その見た目が、たこを捕るための壺に似ていることから、この名前がつきました。
すべての方が同じ形になるわけではなく、心室の中央や根元の動きが弱くなるタイプもあります。医療機関では「たこつぼ症候群」「たこつぼ型心筋症」と呼ぶこともあります。大切なのは形の名前を覚えることより、どの程度心臓の働きが落ちているか、合併症があるかを確認することです。[1][6]
急性心筋梗塞では、一般に心臓を養う冠動脈が詰まり、血液の届かない心筋が傷みます。たこつぼ心筋症では、一つの血管の詰まりだけでは説明できない範囲で心臓の動きが悪くなることが特徴です。ただし、動脈硬化や心筋梗塞を同時に伴う場合もあり、血管が狭いからたこつぼ心筋症ではない、とは判断できません。[1][6]
原因|心の負担、体の負担、明らかなきっかけがない場合
発症の仕組みには、緊張や体の負担に反応する交感神経と、アドレナリンなどの物質の急な増加が関係すると考えられています。心臓の細い血管の働き、ホルモン、脳と心臓の反応も研究されていますが、なぜ同じ出来事で発症する人としない人がいるのかは十分には分かっていません。[2][6]
精神的なきっかけには、大切な方との別れ、大きな驚き、争い、災害などがあります。悲しい出来事だけでなく、喜びや興奮がきっかけになる場合もあります。
一方、肺炎などの感染症、手術、けが、強い痛み、脳の病気といった身体的な負担でも起こります。心のストレスに心当たりがないことは、診断を否定する理由にはなりません。
閉経後の女性に多い病気ですが、男性や若い方にも発症します。男性では重い合併症が多いという報告もあり、女性に多いという情報だけで受診の必要性を判断しないでください。[2]
「気持ちを強く持てば防げた」「考えすぎたせいだ」とご自身を責める必要はありません。明確なきっかけが見当たらない方もいます。診療では、発症前の生活だけでなく、感染症、服用している薬、持病、手術などを確認し、治療が必要な体の病気がないかを調べます。
検査|心筋梗塞などを除外し、心臓の回復も確かめる
心電図と血液検査
心電図は、胸や手足に電極をつけて心臓の電気の動きを記録する検査で、通常痛みはありません。たこつぼ心筋症でも心筋梗塞に似た変化が出ます。QT延長など、不整脈につながる変化も確認します。入院中は一度の心電図だけでなく、モニターで脈を続けて観察することがあります。
採血では、心筋の傷みを反映するトロポニン、心臓への負担を反映するBNPやNT-proBNP、腎機能、カリウムなどを調べます。たこつぼ心筋症でもトロポニンが上がることがあるため、血液検査の数値一つで心筋梗塞と区別することはできません。[4]
心エコー
胸に超音波の器具を当て、心臓の動きを見る検査です。どの部分の動きが弱いか、血液を送り出す力、弁からの逆流、心臓の中の血の塊を確認します。体を切らずに繰り返せるため、診断時だけでなく回復をみるときにも役立ちます。
たこつぼ心筋症では、心臓から血液が出る通り道が一時的に狭くなることがあります。左室流出路狭窄という状態で、同じ息苦しさや低血圧でも、これがあるかどうかで治療が変わります。[1]
冠動脈の検査と心臓MRI
急性心筋梗塞が疑われる状況では、冠動脈造影を急いで行うことがあります。手首や足の付け根の血管から細い管を入れ、造影剤で心臓の血管を調べます。造影剤によるアレルギー、腎機能への影響、出血などの危険も評価して行います。
状態が安定している一部の方では冠動脈CTを選ぶ場合もありますが、急な胸痛や心電図の変化があるときに、外来CTの予約を待てばよいという意味ではありません。緊急性と検査の負担を踏まえて、病院で方法を決めます。
心筋炎や心筋梗塞との区別が難しい場合には、心臓MRIを追加します。最初の検査結果と、その後に心臓の動きが回復する経過を合わせて診断します。[4][6]
入院が必要な理由|回復を待つ間の合併症に対応する
心臓の動きが回復する病気でも、発症直後から自宅で様子をみてよいとは限りません。心不全、重い不整脈、急な血圧低下などが起こり得るため、急性期は通常、入院して心電図、血圧、呼吸、尿量などを観察します。集中治療が必要になる方もいます。[2][4]
動きの弱い心臓の中では血液がよどみ、血の塊ができることがあります。この血栓が脳などに流れると脳梗塞などを起こすため、心エコーで繰り返し確認します。すべての方に起こるわけではありませんが、心臓の先端の動きが広い範囲で弱くなっている場合は、特に注意します。[1]
入院期間を「必ず何日」と一律に決めることはできません。呼吸と血圧が安定し、不整脈や血栓の危険が評価でき、退院後の薬と通院の計画が立ったかを確認します。
治療|心不全、血圧、不整脈、血栓の状態に合わせる
たこつぼ心筋症そのものを、全員に同じ薬で確実に治す治療法は確立していません。治療は、心臓の回復を支えながら、起こっている合併症に対応することが中心です。感染症などのきっかけがあれば、その治療も並行します。「特効薬がない」という説明は、治療をせず放置するという意味ではありません。[4][6]
発症直後に行う治療
血液中の酸素が少ない場合は酸素を使い、肺に水分がたまっている場合は利尿薬などで呼吸の負担を軽くします。重い不整脈には、それに応じた薬や電気的な治療を行います。血圧が著しく低く、薬だけで全身への血流を保てない場合には、専門病院で一時的に血液の循環を助ける装置を使うことがあります。[4][6]
一方、心臓の出口が狭くなっている方では、血管を広げる薬や水分を強く減らす治療が、かえって状態を悪くすることがあります。治療内容が別の患者さんと違っていても、心臓の状態に合わせた選択である場合があります。[1][4]
退院後に使う薬の例
心不全が続く場合には、ACE阻害薬など、心臓への負担を減らす薬を使うことがあります。エナラプリルはその一例です。薬の量は、血圧や腎機能、併用薬に応じて調整します。[6][7]
むくみや肺の水分を減らすための飲み薬には、フロセミドなどがあります。脱水や血圧低下を避けるため少量から始め、状態に合わせて量を調整します。水分のたまりがない方に、回復を早める目的で一律に処方する薬ではありません。[6][8]
血栓を防ぐ薬は、必要な方に使う
心臓の中に血栓ができた方や、血栓の危険が高い方には、血液を固まりにくくする抗凝固薬を検討します。血栓が確認された場合は、心臓の動きや血栓の消失、出血の危険を確認しながら治療期間を決めます。たこつぼ心筋症だったという理由だけで、全員が生涯抗凝固薬やアスピリンを飲むわけではありません。[6]
薬はいつまで必要か
退院時の薬を一生続けるとは限りません。心エコーで心臓の動きを確認し、症状、血圧、心電図、血栓の有無をみながら、一つずつ継続の必要性を判断します。高血圧や心不全が残る方は、長く治療を続ける場合があります。
回復までの期間と退院後の通院
心エコーでみる心臓の動きは、数日から数か月で回復することが多く、数週間ほどで改善が確認できる方もいます。ただし、退院できる時期、心臓の動きが戻る時期、体力が戻る時期は同じではありません。数値が改善しても、疲れやすさや息切れが残ることがあります。[1][4][6]
退院後は指示された時期に受診し、心エコー、心電図、採血などで経過を確認します。回復が予想より遅い場合や症状が続く場合は、心不全の残り、別の心臓病、肺の病気、貧血なども調べます。
循環器専門医院長 浦 祐次郎から一言▶ 循環器専門医(院長 浦祐次郎)の臨床コメント 「検査では良くなったのに、前のように動けません」。そのような場合は、心臓の回復と体力の回復を分けて考えます。階段、買い物、家事など、つらくなる場面を教えてください。検査を確認しながら、薬と活動量を見直し、日常生活に戻る道筋を一緒に整理します。
暮らし|動く量を少しずつ戻し、負担を一人で抱えない
発症直後や心不全が残っている時期に、息を切らせる運動、重い荷物を持つ作業、急な階段昇降を無理に行わないでください。状態が安定したら、主治医の許可を得て短い距離の歩行から再開し、胸痛、強い息切れ、動悸、ふらつきが出ない範囲で少しずつ増やします。
心不全や体力低下がある方では、心臓リハビリテーションを検討します。運動だけでなく、薬、食事、日々の症状、仕事への復帰を確認する機会にもなります。
食事でこの病気を直接治す食品はありません。心不全や高血圧がある場合は塩分を控え、汁物を残す、漬物や加工食品を毎食重ねないなど、続けやすい工夫をします。水分の制限は全員に必要ではなく、むくみや血液検査を踏まえた指示に従ってください。
「また起きるのでは」と心配で眠れない、発症前の出来事を思い出すとつらい、外出が怖くなったという場合も、主治医に伝えてください。家族や職場と負担を調整し、十分に休める時間をつくることも、生活を戻す助けになります。
再発と受診の目安|以前と同じ症状でも改めて調べる
たこつぼ心筋症は再発することがありますが、すべての方が繰り返すわけではありません。再発を確実に防ぐ薬や方法は、まだ確立していません。睡眠や休養、持病の治療、負担の調整は勧められますが、ストレスを完全になくすことをご本人の課題にしないでください。[6][9]
再び強い胸痛や息苦しさが出たときは、「前もたこつぼ心筋症だったから、今回も同じ」と判断しないでください。心筋梗塞など別の病気の可能性もあり、救急要請が必要です。冠動脈の病気による胸痛については、狭心症のコラムをご覧ください。
退院後の息切れが増える、むくみが強くなる、脈の乱れが続く、薬を飲んでふらつく場合は、次の定期受診を待たずに処方元へ連絡してください。突然の片側の手足の力の入りにくさ、顔のゆがみ、言葉が出ない症状も、脳梗塞の可能性があるため救急要請してください。
よくある質問
A
心臓の動きは回復することが多い病気です。ただし、発症直後の重症化や、回復後も続く息切れには注意が必要です。薬は心臓の回復、心電図、血栓、持病を確認して見直します。全員が生涯同じ薬を飲むわけではありませんが、症状が消えた時点で自己中止せず、検査で継続の必要性を確認してください。
A
一律に何日後とは決められません。呼吸、血圧、不整脈、心エコーの結果を確認して、歩行や軽い家事から段階的に再開します。重い物を持つ仕事、夜勤、激しいスポーツは個別の相談が必要です。
A
この病気だけを理由に、特定の食品を全面的に禁止する必要はありません。心不全や高血圧があれば減塩を相談し、水分制限はむくみや血液検査の状態に応じて決めます。極端な食事制限や水分不足は体力低下や脱水につながるため、食欲が戻らない場合も受診時に伝えてください。
A
一般的な遺伝性心筋症のように、原因遺伝子を調べて家族全員を定期検査する仕組みは通常ありません。親が発症したから子どもにも起こると決まっているわけではありません。ご家族に心筋症や若い年齢での突然死がある場合は、別の病気の評価も含めて相談してください。
A
心電図や胸からの心エコーは通常痛みがなく、採血では針の痛みがあります。冠動脈造影は血管に管を入れるため局所麻酔を使い、出血などの危険も確認します。急性期は合併症の観察と心筋梗塞との区別のため、通常は入院が必要です。回復後の心エコーや採血などは外来で行えます。
A
強い胸痛や胸の圧迫感に冷汗・吐き気を伴う、急に呼吸が苦しくなる、失神する場合は救急要請してください。以前の発症と似ていても、自宅では再発と心筋梗塞を区別できません。突然の言葉の出にくさや片側の手足の麻痺も救急要請してください。ご自身で運転して病院に向かわないでください。
A
あります。感染症、手術、強い痛みなど体の負担がきっかけになることも、はっきりしたきっかけが見つからないこともあります。医師には最近の体調、持病、薬の変更などを伝えてください。心の負担に心当たりがないために、診断や症状を否定する必要はありません。
A
血管の詰まりがなくても、心臓の筋肉の動きが弱くなっている間は、心不全、不整脈、血圧低下、血栓が起こることがあります。入院は、回復を待つ間にこうした変化を見つけ、必要な治療を行うためです。「血管は大丈夫だった」と「すぐ普段どおりに動いてよい」は同じではありません。
A
まず現在の心臓の状態と、外出時に注意したい症状を主治医と確認しましょう。許可された範囲で近所の短い散歩から始めるなど、活動を少しずつ戻します。不眠や強い不安が続く場合は、心臓の診療とあわせて相談できます。日常の小さな緊張をすべて危険と考えて、生活を狭める必要はありません。
福岡市でたこつぼ心筋症の診療なら|うらマイハートクリニックの特徴
うらマイハートクリニック(福岡市早良区藤崎・原)は、内科・循環器内科・腎臓内科・呼吸器内科を診療し、心臓リハビリテーションにも対応するクリニックです。
院長(浦 祐次郎)は、循環器専門医・総合内科専門医・心血管インターベンション治療学会認定医・TAVI実施医/指導医・SHD心エコー図認証医・心臓リハビリテーション指導士として、九州医療センターで13年間、小倉記念病院で1年半にわたり、重症心疾患の診療に従事してきました。
副院長の浦 雅紀子は腎臓内科医として、福岡山王病院で約5年間、九州医療センターで6年間にわたり、心腎連関を踏まえた包括的な腎臓病診療に従事してきました。
- BNPなどを含む当日結果をご説明できる血液検査、心臓を含む各種エコー検査、64列CT(冠動脈CTを含む)に対応しています。
- 心臓リハビリ施設「ReHeart Gym」で、専門スタッフが体力回復や再発予防を支援します。
- 診療開始は8時30分から、水曜は20時まで診療しています。駐車場11台を完備し、発熱症状のある方には専用入口をご案内しています。
たこつぼ心筋症の退院後の通院や、息切れ・体力の回復、薬の継続について相談したい方は、福岡市早良区のうらマイハートクリニックまでお気軽にご相談ください。
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当院の専門外来では最適な治療プランをご提案しております。
参考文献
[1] 日本循環器学会ほか.2021年改訂版 循環器超音波検査の適応と判読ガイドライン
[2] 日本循環器学会ほか.2024年改訂版 多様性に配慮した循環器診療ガイドライン
[3] 総務省消防庁.救急車利用マニュアル「救急車を上手に使いましょう」
[7] 医薬品医療機器総合機構(PMDA).レニベース錠(エナラプリルマレイン酸塩)電子添文