狭心症とは?症状・原因・検査・治療を循環器専門医が解説|福岡市早良区
「最近、階段を上るだけで胸がキュッと締め付けられる」「急いで歩くと胸に圧迫感がある」。これらの症状は、年齢や疲れのせいではなく、心臓が発している重要なSOSサイン、「狭心症」かもしれません。
狭心症は、放置すると命に関わる「心筋梗塞」へと進行する可能性のある身近な病気です。日本国内の患者数は約97万8,000人と報告されており、決して稀ではありません[1]。
本記事では、循環器専門医の視点から、狭心症の症状、原因、そして当院が力を入れる冠動脈CT検査を含む最新の検査・治療法までを詳しく解説します。
【この記事の要点】
- 狭心症は、心臓の筋肉への血流が一時的に不足し、胸の痛みや圧迫感などが現れる病気です。
- 「階段や坂道で胸が苦しい」「休むと治る胸の違和感を繰り返す」は早めに相談したいサインです。
- 突然の強い胸痛、安静にしても治まらない胸痛、冷や汗や息苦しさを伴う場合は、救急要請が必要です。
- 診断には心電図、血液検査、心エコー、冠動脈CTなどを組み合わせ、病状に応じた治療で症状の改善と心筋梗塞の予防を目指します。
この記事を書いた医師
うらマイハートクリニック院長 浦 祐次郎
(循環器専門医・総合内科専門医・TAVI実施医/指導医・心血管インターベンション治療学会認定医・SHD心エコー図認証医・心臓リハビリテーション指導士)
循環器専門医院長 浦 祐次郎から一言▶ 循環器専門医(院長 浦祐次郎)の臨床コメント 見逃されやすいポイントですが、実際の診療では「少し休めば治るから大丈夫」と考えて受診が遅れる方が非常に多くいらっしゃいます。 しかし、そのような症状の中に、心筋梗塞の前触れが隠れているケースも少なくありません。
狭心症とは?定義と心臓で起きていること
狭心症とは、心臓の筋肉(心筋)に酸素と栄養を供給する「冠動脈(かんどうみゃく)」という血管が、主に動脈硬化で狭くなり、心筋への血流が一時的に不足する状態です。心臓が「栄養不足」に陥ることで、胸の痛みや圧迫感といった症状が引き起こされます[2][3]。
これは、血管が完全に詰まって心筋が壊死する「心筋梗塞」とは異なり、血流が一時的に不足する(虚血:きょけつ)状態ですが、心筋梗塞につながる可能性のある重要なサインであり、早期発見と適切な管理が極めて重要です[2][4]。
狭心症の症状|胸の痛みだけではない多様なサイン
狭心症のサインは、典型的な胸の痛みのほか、心臓から離れた場所に現れる「放散痛」もあります。心臓からのSOSを見逃さないために、多様な症状を知っておくことが大切です。「休むと治るから大丈夫」と思っている方ほど注意が必要です[2][4]。
循環器専門医院長 浦 祐次郎から一言▶ 循環器専門医(院長 浦祐次郎)の臨床コメント 「胸ではなく、あごや胃の不快感だけ」というケースもあり、 ご本人は心臓の病気だと思っていなかったという方も少なくありません。また、「買い物に行くだけで胸がなんとなく苦しくなり、休むと治る」という状態を繰り返していた方が、検査で狭心症と診断されるケースも少なくありません。
典型的な症状と放散痛
| 症状の種類 | 具体的な自覚症状 | 解説 |
|---|---|---|
| 典型的な胸部症状 | 胸の中央部から左側にかけての「締め付けられる感じ」「圧迫感」 | 心筋の酸素不足による痛み信号。通常は数分〜15分以内で治まります。 |
| 放散痛 | 左肩、腕の内側、あご、歯、のど、背中などに広がる痛み | 心臓の痛みを伝える神経が、他の部位の感覚神経と交錯するために起こる関連痛です。 |
| 非典型的な症状 | 息切れ、動悸、吐き気、胃の不快感 | 高齢の方や糖尿病の方では、典型的な胸痛が出にくいことがあります。 |
進行・重症化のサイン|こんな症状は緊急受診を
以下の症状は、不安定狭心症や心筋梗塞への移行を示唆する危険なサインです。症状が続いている場合や強い症状がある場合は、ご自身で運転せず、ためらわずに119番を呼んでください[2][4][10]。
- 今までよりも軽い動作で胸の痛みが起こる
- 安静にしていても胸の症状が出る
- 胸の痛みが15分以上続く
- 胸の痛みの頻度が増えた
- 冷や汗や吐き気を伴う
強い胸痛や冷や汗、息苦しさなどがある場合は、15分経つのを待たずに救急要請してください[4][10]。
循環器専門医院長 浦 祐次郎から一言▶ 循環器専門医(院長 浦祐次郎)の臨床コメント 「いつものこと」と様子を見ているうちに症状が悪化し、 緊急治療が必要な状態で来院される方もいらっしゃいます。 早い段階での受診が、結果的に身体への負担を最小限にします。
狭心症の原因|動脈硬化と生活習慣のドミノ倒し
労作性狭心症の主な原因は、血管の老化現象である「動脈硬化」です。自覚症状なく静かに進行し、ある日突然、胸の痛みという形で姿を現します[6]。
主な原因は「動脈硬化」
高血圧や糖尿病などにより血管の内壁が傷つくと、そこに悪玉(LDL)コレステロールなどが沈着し、お粥状の塊(プラーク)を形成します。このプラークが大きくなると血管が狭くなり、狭心症が発症します[6]。
生活習慣病という名のドミノ倒し
動脈硬化は、不健康な生活習慣から始まる「ドミノ倒し」に例えられます。
生活習慣の乱れ → 高血圧・糖尿病・脂質異常症 → 動脈硬化 → 狭心症・心筋梗塞
「症状のない期間」にこのドミノが倒れ始めていることに気づき、早期に対策を始めることが重要です。
心臓と腎臓の深い関係「心腎連関」
「腎臓が悪いと心臓も悪くなり、心臓が悪いと腎臓も悪くなる」という「心腎連関」が知られています。慢性腎臓病(CKD)がある方では、冠動脈疾患の発症・重症化リスクが高くなります。当院では心臓と腎臓の専門家が連携し、この心腎連関を念頭に置いた診療を行います[2][3][6]。
狭心症の種類|労作性・不安定・冠攣縮性
狭心症は、原因や症状の現れ方によって主に3つのタイプに分類され、それぞれ治療方針が異なります[2][4][5]。
| 種類 | 主な原因 | 症状の特徴 |
|---|---|---|
| 労作性狭心症 | 動脈硬化による冠動脈の慢性的な狭窄 | 階段昇降など、体を動かした時に胸痛が起こり、安静にすると数分で治まる。 |
| 不安定狭心症 | プラークの破綻による急激な狭窄 | これまでより軽い動作や安静時にも胸痛が起こる。心筋梗塞に移行する危険性が非常に高い。 |
| 冠攣縮性狭心症 | 冠動脈の一時的なけいれん(攣縮) | 早朝や夜間の安静時に胸痛が起こりやすい。日本人に多く、喫煙やストレスが誘因となる。 |
狭心症の検査・診断|冠動脈CTが早期発見の鍵
胸の症状で来院された方には、問診で症状を詳しくお聞きし、心臓の状態を客観的に評価するため、以下の検査を組み合わせて診断を進めます[2][3][4][5]。
主な検査
| 検査名 | 何がわかるか | 特徴 |
|---|---|---|
| 心電図 | 心筋虚血のサイン、不整脈の有無 | 発作時以外は正常なこともあります。症状や疑われる病態に応じて、運動負荷心電図やホルター心電図などを追加します[3][5]。 |
| 血液検査 | 心筋障害(高感度トロポニン)、心不全の合併(BNP) | 急性冠症候群や心不全など、緊急性の高い病態との鑑別に用います[4]。 |
| 心エコー検査 | 心臓の動き、大きさ、弁の状態、壁運動異常 | 心機能やほかの心疾患を評価します。安静時には異常がみられないこともあります[3]。 |
| 冠動脈CT検査 | 冠動脈の狭窄、動脈硬化(プラーク)の評価 | 造影剤を使用し、冠動脈の狭窄やプラークを3Dで評価します。検査前確率や腎機能などを踏まえて適応を判断します[2][3]。当院でも実施可能です。 |
※冠動脈CTについて:冠動脈CTはすべての方に適するわけではありません。造影剤アレルギー、高度の腎機能低下、不整脈、強い冠動脈石灰化などがある場合は、画質や安全性を考慮して別の検査を選ぶことがあります[2][3]。また、心筋梗塞や不安定狭心症が疑われる場合は、CTよりも救急搬送・緊急治療を優先します[4]。
狭心症の治療|薬物療法・カテーテル治療・心臓リハビリ
治療目標は、胸痛をなくすだけでなく、動脈硬化の進行を抑えて心筋梗塞を予防し、生活の質(QOL)を維持することです。治療は「薬物療法」「血行再建術」「心臓リハビリテーション」の3本柱で行います[2][8][9]。
薬物療法
薬物療法は狭心症治療の基本です。労作性狭心症、冠攣縮性狭心症などの病態や、心筋梗塞・PCIの既往、出血リスクに応じて、症状を和らげる薬と心血管イベントを予防する薬を選択します[2][5][7]。
| 薬剤クラス | 主な目的 | 代表的な薬剤 |
|---|---|---|
| 抗血小板薬 | 動脈硬化性の冠動脈疾患やPCI後などで血栓形成を防ぐ。出血リスクも含めて適応を判断します[7]。 | アスピリン、クロピドグレル、プラスグレルなど |
| 脂質低下薬 | LDLコレステロールを下げ、プラークを安定化させる[2][6]。 | スタチンなど |
| 血管拡張薬 | 冠動脈を広げ、発作を予防・治療する[2][5]。 | ニトログリセリン、ニコランジルなど |
| β遮断薬 | 主に労作性狭心症で、心拍数や心臓の仕事量を減らし、酸素需要を抑える[2]。 | カルベジロール、ビソプロロールなど |
| カルシウム拮抗薬 | 労作性狭心症の症状を和らげ、冠攣縮性狭心症では冠動脈の攣縮を抑える[2][5]。 | ジルチアゼム、ベニジピン、アムロジピンなど |
血行再建術(カテーテル治療・バイパス手術)
至適薬物治療を行っても症状が残る場合や、左主幹部病変・広範な心筋虚血など予後への影響が大きい病変では、冠動脈の解剖、虚血の程度、腎機能、出血リスク、患者さんの希望を踏まえて「血行再建術」を検討します[2][8]。
- 経皮的冠動脈インターベンション(PCI):いわゆる「カテーテル治療」。手首などからカテーテルを挿入し、風船(バルーン)とステント(金属の網)で血管を広げます。体への負担が少なく、短期入院での治療が可能です。
- 冠動脈バイパス手術(CABG):体の血管を使い、狭窄部を迂回する新しい道(バイパス)を作る心臓外科手術です。
心臓リハビリテーション
「心臓が悪いから安静に」は過去の考えです。適切な運動療法(心臓リハビリテーション)は、再発予防とQOL向上に不可欠です。医師の管理のもと、運動療法、食事指導、カウンセリングなどを包括的に行います[9]。
運動療法は、病状が安定していることを確認してから行います。安静時にも胸痛が出るなど、不安定狭心症が疑われる場合は、運動より診察・治療を優先します[9]。
当院の強み:専用の心臓リハビリ器具を備え、スタッフの見守りのもとで運動療法を行います。薬物療法に運動療法を組み合わせ、定期的に体調や体重、血圧などを確認することで、狭心症悪化の変化に早く気づけるよう支援します。
狭心症の予防と再発防止|日常生活でできること
狭心症と診断された後も、生活習慣を見直すことで病気の進行を穏やかにできます[2][6][9]。
- 食事療法:食塩は1日6g未満を目安にし、野菜・魚・大豆製品などを取り入れ、飽和脂肪酸のとり過ぎを避けます[6]。
- 運動療法:医師の許可のもと、ウォーキングなどの有酸素運動を継続[9]。
- 禁煙:禁煙は心筋梗塞などの再発予防に極めて重要です。受動喫煙もできるだけ避けましょう[2][6][9]。
- リスク管理:冠動脈疾患の再発予防では、LDL(悪玉)コレステロールを十分に下げることが重要です。目標値は病状や再発リスクに応じて設定し、70mg/dL未満や、より厳格な55mg/dL未満を目指す場合があります。処方された薬を確実に服用し、定期的に通院して心臓の状態をチェックし続けることが不可欠です[2][11]。
このような症状があればご相談ください
以下のような症状に心当たりがある方は、狭心症の可能性を考え、お早めに循環器専門医への相談をお勧めします。
- 労作時(階段、坂道など)に胸が痛む、圧迫感がある
- 胸だけでなく、肩や腕、あごにも痛みが広がる
- 最近、息切れしやすくなった
- 健康診断で心電図異常やコレステロール高値を指摘された
その胸の違和感は、心臓からの大事なサインかもしれません。「まだ大丈夫」と思っている段階での受診が早期発見・早期治療につながり、心筋梗塞を防ぎ、あなたの心臓を守る最も重要なタイミングです。
よくある質問(FAQ)
狭心症は、遺伝的な体質と生活環境などが関係する病気です。家族に患者さんがいても必ず発症するわけではありませんが、若い年齢で狭心症や心筋梗塞になった血縁のご家族がいる場合は、診察時に伝えてください。家族性高コレステロール血症などが隠れていることもあるため、ご自身の血圧・血糖・コレステロールを確認することが大切です[6]。
福岡市で狭心症の診療なら|うらマイハートクリニックの特徴
うらマイハートクリニック(福岡市早良区藤崎・原)は、内科・循環器内科・腎臓内科・呼吸器内科を診療し、心臓リハビリテーションにも対応するクリニックです。
院長(浦 祐次郎)は、循環器専門医・総合内科専門医・心血管インターベンション治療学会認定医・TAVI実施医/指導医・SHD心エコー図認証医・心臓リハビリテーション指導士として、九州医療センターで13年間、小倉記念病院で約2年間にわたり、重症心疾患の診療に従事してきました。副院長の浦 雅紀子は腎臓内科医として、福岡山王病院で約5年間、九州医療センターで6年間にわたり、心腎連関を踏まえた包括的な腎臓病診療に従事してきました。
現在はうらマイハートクリニックにて内科医2名体制で円滑な診療に努めています。
- 院内での迅速な検査体制:BNPなど含む当日結果のわかる多様な血液検査、心臓を含む各種エコー検査、総合病院レベルの64列CT(冠動脈CT含む)に対応。
- 治療後のサポート:心臓リハビリ施設「ReHeart Gym」で専門スタッフが体力回復・再発予防を支援。
- 通いやすい診療体制:診療開始は8時30分から、水曜は20時まで診療。駐車場11台完備。発熱症状のある方の専用入口あり。
胸の症状にお悩みの方、健康診断で異常を指摘された方、狭心症と診断された方、カテーテル治療を行った方は、福岡市早良区のうらマイハートクリニックまでお気軽にご相談ください。
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当院の専門外来では最適な治療プランをご提案しております。
参考文献
[1] 厚生労働省. 令和5年(2023)患者調査 傷病別年次推移表(狭心症).
[2] 日本循環器学会. 2022年JCSガイドライン フォーカスアップデート版 安定冠動脈疾患の診断と治療.
[3] 日本循環器学会. 慢性冠動脈疾患診断ガイドライン(2018年改訂版).
[4] 日本循環器学会. 急性冠症候群ガイドライン(2018年改訂版).
[5] 日本循環器学会/日本心血管インターベンション治療学会/日本心臓病学会. 2023年JCS/CVIT/JCCガイドライン フォーカスアップデート版 冠攣縮性狭心症と冠微小循環障害の診断と治療.
[6] 日本動脈硬化学会. 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版.
[7] 日本循環器学会. 2020年JCSガイドライン フォーカスアップデート版 冠動脈疾患患者における抗血栓療法.
[8] 日本循環器学会. 安定冠動脈疾患の血行再建ガイドライン(2018年改訂版).
[9] 日本循環器学会/日本心臓リハビリテーション学会. 2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン.