気管支喘息の症状・原因・検査・治療を解説|福岡市早良区
「息を吐くとヒューヒュー鳴る」「夜中に咳と息苦しさで目が覚める」「風邪のたびにゼーゼーする」。こうした症状を繰り返すときは、気管支喘息(きかんしぜんそく)が原因かもしれません。大人になってから初めて発症することもあります。
一方、咳や息切れ、ヒューヒューという呼吸音は、心不全などの心臓の病気でも起こります。FeNOを含む呼吸器の検査と、必要に応じた心臓の検査を組み合わせて診療します。
この記事では成人の喘息について、症状、原因、検査の順番、吸入薬の使い方を説明します。
【この記事の要点】
- 気管支喘息は、気道の炎症によって咳・ゼーゼーする呼吸音・息苦しさを繰り返す病気です。
- 「夜中に咳で目が覚める」「風邪のたびにゼーゼーする」「運動すると苦しい」は相談したいサインです。
- 呼吸機能検査やFeNOなどを組み合わせて診断し、心不全を含めたほかの病気も確認します。
- 治療の基本は、気道の炎症を抑える吸入ステロイド薬です。症状が落ち着いていても自己判断で中止せず、医師と相談しながら治療を調整します。
この記事を書いた医師
うらマイハートクリニック院長 浦 祐次郎
(循環器専門医・総合内科専門医・TAVI実施医/指導医・心血管インターベンション治療学会認定医・SHD心エコー図認証医・心臓リハビリテーション指導士)
循環器専門医院長 浦 祐次郎から一言▶ 総合内科専門医(院長 浦祐次郎)からの一言 「診察のときには苦しくないので、うまく伝えられない」ということもあると思います。夜に目が覚める回数や、どんな動作で息苦しくなるかを教えてください。症状が軽い日の検査も含め、繰り返す変化から原因を考えます。
喘息の症状:ヒューヒュー・ゼーゼー、咳、息苦しさ
喘息では、空気の通り道である気道に炎症があり、刺激に反応して狭くなります。症状が出たり軽くなったりすることが特徴で、診察時に症状がないこともあります。
- 喘鳴(ぜんめい):主に息を吐くときに、ヒューヒュー・ゼーゼーと鳴る。
- 咳:夜間や明け方に出やすく、痰を伴うこともある。
- 息苦しさ・胸の圧迫感:階段や運動で息が切れる、胸が締め付けられるように感じる。
- 繰り返す症状:風邪、冷気、季節の変わり目、特定の場所などで悪化する。
「熱がないから病気ではない」「昼は平気だから大丈夫」とは限りません。夜眠れない、普段の活動が難しい、新たに喘鳴や息苦しさが出た場合は、咳の期間にかかわらず受診してください。咳だけが続き、喘鳴や息苦しさが目立たない病型は「咳喘息」と呼ばれます。詳しくは別コラム「咳喘息」で説明しています。
息苦しくて会話ができない、唇が青紫色、意識がぼんやりする場合は救急要請が必要です。重い発作では、空気がほとんど通らず喘鳴が弱くなることもあるため、それだけで判断することはできません。
喘息の原因と、発作を起こすきっかけ
喘息は体質と環境などが重なって発症する病気で、すべてが同じ原因ではありません。ダニ・花粉・カビ・犬や猫などのアレルギー原因物質(アレルゲン)が関係するタイプと、原因物質がはっきりしないタイプがあります。アレルギー検査が陰性でも喘息は否定できません。
風邪などの感染、喫煙・受動喫煙、冷たい空気、運動、細かいほこり(粉じん)、強い香り、過労などは、どちらのタイプでも症状を引き起こすことがあります。仕事中や特定の作業で悪化し休日に軽くなる場合は、職場で粉じんや薬品などを吸い込んでいないかも確認します。ストレスだけが原因と断定することはできません。
喘息があるとロキソニンは飲めない?
すべての喘息患者さんで禁止というわけではありませんが、ロキソプロフェン(ロキソニン)やアスピリンなどの解熱鎮痛薬で発作が誘発される方がいます。「アスピリン喘息」と呼ばれ、鼻ポリープ(鼻茸)や慢性副鼻腔炎を伴うこともあります。過去に痛み止めや風邪薬で息苦しくなった方は必ず申告してください。市販薬を含め、使用前に医師・薬剤師に確認しましょう。アセトアミノフェンも、すべての方に必ず安全とは限らず、薬と用量を個別に選びます[3]。
喘息と心不全の違い:ヒューヒューしても肺だけとは限りません
心不全では、肺に血液や水分がたまることで咳や喘鳴が出ることがあります。「心臓喘息」と呼ばれることもありますが、気道の炎症が主な原因である気管支喘息とは治療が異なります[4]。
特に、横になると苦しく座ると楽になる、夜中に息苦しくて起きる、足がむくむ、短期間に体重が増える、以前より歩けなくなったといった変化は、心臓も調べる手がかりです。ただし、夜間の息苦しさは喘息でも起こり、むくみがない心不全もあります。症状だけでどちらか一方と決めつけず、両方が重なる可能性も考えます。
心不全が疑われる場合は、心電図、BNPなどの血液検査、心エコーで心臓への負担や働き、弁の状態を確認します。BNPの数値や、心臓が血液を送り出す力だけで判断せず、診察・画像・腎機能などと合わせて考えます。
喘息とCOPDの特徴が重なる「ACO」
喘息と慢性閉塞性肺疾患(COPD)は別の病気ですが、両方の特徴を持つ方もいます。日本の手引きでは、この状態を「喘息とCOPDのオーバーラップ(ACO)」と呼びます。特に40歳以上で、喫煙歴がある、痰や動いたときの息切れが続く、喘息の治療をしても呼吸機能検査で空気の通りにくさが残る場合には、COPDの合併も考えます。
診断では、症状の出方や喫煙歴、呼吸機能検査に加え、必要に応じて胸部CT、FeNO、血液検査などを組み合わせます。治療は吸入ステロイド薬を含む吸入薬を基本に、長く効く気管支拡張薬を組み合わせます。喫煙している方は、紙巻きたばこだけでなく、加熱式たばこや電子たばこも含めた禁煙が大切です[27]。
このほか、肺炎、胃食道逆流、鼻副鼻腔の病気、喉の狭まりなどでも似た症状が出ます。咳の原因全般については別コラム「慢性咳嗽」もご覧ください。
喘息の検査と診断:検査の順番と、それぞれの役割
診断では「症状が変動すること」と「空気の通りにくさが変動すること」を確認し、ほかの病気も検討します。全員に同じ検査をするのではなく、次の流れを基本に症状に合わせて選びます。強い発作では、検査結果をそろえるよりも治療を優先します[1][22][24]。
1.問診・診察で緊急性と症状の出方を確認
いつ、どこで、何をすると症状が出るか、夜眠れるか、これまでの発作や入院、喫煙、鼻炎、仕事、使用中の薬を確認します。聴診や酸素飽和度の測定も行います。症状の記録、お薬手帳、使っている吸入器があると診療に役立ちます。
2.胸部X線などで、別の原因を確認
初めての喘鳴、長引く咳、発熱、心不全が疑われる所見などがあれば、胸部X線で肺炎や、心不全によって肺に水分がたまった状態などを調べます。X線は喘息そのものを確定する検査ではありません。CTは全員に必要ではなく、X線の異常、血痰、治療で改善しない症状などがある場合に検討します。
3.FeNOで気道の炎症の手がかりを確認
FeNO(呼気一酸化窒素濃度)は、一定の速さで息を吐き、好酸球という白血球が関わる気道の炎症の手がかりとなる数値を測る検査です。同日に呼吸機能検査も行う場合は、強く息を吐く操作の影響を避けるため、原則としてFeNOを先に測定します。
日本人成人の研究では、未治療喘息と非喘息を分ける目安として22 ppb、健常成人の上限として約37 ppbが報告されています[5][25][26]。
| 日本人成人の研究をもとにしたFeNOの目安 | 読み方 |
|---|---|
| 22 ppb未満 | 喘息を疑う材料にはなりにくい値ですが、喘息を否定はできません。吸入ステロイド使用中や喫煙では低くなることがあります。 |
| 22〜36 ppb | 喘息を疑う手がかりです。症状、鼻炎の有無、喫煙、呼吸機能、治療歴などと合わせて判断します。 |
| 37 ppb以上 | 日本人健常成人の上限を超える値で、好酸球が関わる気道の炎症を考える手がかりが強くなります。ただし、鼻炎などでも高くなり、FeNOだけでは喘息と確定できません。 |
FeNOだけで喘息かどうかを決めることはできません。アレルギー性鼻炎、アレルギーを起こしやすい体質、原因物質との接触、好酸球が関わる気管支炎(好酸球性気管支炎)などでも高くなります。一方、喘息でも、吸入・内服ステロイドの使用中、喫煙、好酸球による炎症が少ないタイプでは低くなることがあります。症状とほかの検査を合わせて判断するため、使用中の薬、喫煙、直前の食事や運動について伝えてください[5][25][26]。
4.呼吸機能検査で、気道の狭まりと改善を確認
スパイロメトリーでは大きく吸って強く吐き、1秒間に吐き出せる量などを測定します。必要に応じて、気管支を広げる薬を吸う前後で呼吸機能を比べる検査(気道可逆性試験)を行います。成人では、1秒量が吸入前より12%以上かつ200 mL以上増えることなどが、喘息を支持する所見です[2]。
喘息でも、症状が落ち着いている時期には呼吸機能が正常で、気管支を広げる薬を吸っても数値が変わらないことがあります。疑いが残れば、症状がある時期の再検査、自宅でのピークフロー(息を吐く最大速度)の記録、気道過敏性検査などを検討します。FeNOだけ、あるいは1回の呼吸機能検査だけで結論を出さないことが大切です。
5.必要な追加検査と、治療後の確認
血液検査では、好酸球の数や、アレルギー反応に関わるIgEなどを調べ、炎症の特徴や症状のきっかけを考えます。アレルギー検査が陽性でも、その物質が今の症状の原因とは限りません。心不全が疑われる場合は心臓の検査を並行して行います。
治療開始後は、咳・喘鳴、夜間の目覚め、日常生活への影響、発作時の薬を使った回数、吸入器を正しく使えているかを確認します。必要に応じて呼吸機能やFeNOも再評価します。吸入薬で楽になったという経過だけで診断を確定せず、改善が乏しければ診断と治療内容を見直します。
喘息の吸入薬:毎日の治療と発作時の薬を分けて理解しましょう
目標は、夜も眠れ、仕事や運動を続けられる状態を保ち、重い発作を防ぐことです。すべての治療ステップで気道の炎症を抑える吸入ステロイド薬(ICS)が第一選択です。必要に応じて気管支を広げる薬などを組み合わせます。症状がなくても、症状を安定させるために処方された吸入薬は続けます[1][22][24]。
日本のガイドラインは4段階で治療を調整します
未治療の方では症状の頻度や生活への影響から開始段階を決めます。治療中は、発作歴や呼吸機能も含めて評価し、薬を増やす前に診断、吸入手技、使い忘れ、喫煙・アレルゲン、鼻炎や逆流などを確認します[1][22][24]。
| 治療段階 | 症状の目安(未治療) | 主な長期管理 |
|---|---|---|
| ステップ1 | 週1回未満で軽く短い。夜間症状は月2回未満 | 少ない量の吸入ステロイド薬(ICS)。使えない場合は、アレルギー反応などを抑える飲み薬(LTRA)や、気管支を広げる飲み薬(テオフィリン徐放製剤)などを検討 |
| ステップ2 | 週1回以上だが毎日ではない。生活・睡眠への影響がある | 少量〜中等量の吸入ステロイド薬(ICS)。不十分なら、効果が長く続く気管支拡張薬(LABA、LAMA)やLTRAなどを1剤追加 |
| ステップ3 | 毎日症状がある、または週1回以上生活・睡眠が妨げられる | 中等量〜多い量の吸入ステロイド薬(ICS)に、効果が長く続く気管支拡張薬などを追加。条件により注射薬(生物学的製剤)も検討 |
| ステップ4 | 増悪症状が毎日あり、日常生活が難しい | 多い量の吸入ステロイド薬(ICS)に複数の薬を追加し、注射薬(生物学的製剤)を検討。飲み薬のステロイドは、必要なときに短期間だけ使うことが原則 |
良好な状態が3〜6か月以上続けば、医師が段階的な減量(ステップダウン)を検討します。反対に症状が続く場合は、吸入手技や継続状況を整えたうえで治療を強めます。ステップ3〜4でも改善しない場合は、吸入方法や服薬状況、診断、併存症などを改めて確認し、治療内容を見直します。自己判断での増量・減量・中止は避けてください[1][22][24]。
毎日使う吸入薬の種類と用法の例
以下は成人の通常用量の例です。薬の量は症状・発作歴・呼吸機能などから決めます。表は代表例で、国内で使用できる吸入薬のすべてを示すものではありません[1][6][7][8][9][22][24]。
| 種類・薬剤例 | 通常用量の例とポイント |
|---|---|
| 吸入ステロイド薬(ICS):ブデソニド (パルミコートタービュヘイラー) |
1回100〜400 μgを1日2回。気道の炎症を抑えます。吸入回数は規格によって異なります。 |
| 吸入ステロイド薬+長時間作用性気管支拡張薬(ICS/LABA):ブデソニド/ホルモテロール (シムビコートタービュヘイラー) |
通常1回1吸入を1日2回。1吸入は160/4.5 μg。症状により調整し、維持療法の上限は1回4吸入・1日2回。発作時の追加使用は下記の条件があります。 |
| 吸入ステロイド薬+長時間作用性気管支拡張薬(ICS/LABA):フルチカゾンフランカルボン酸エステル/ビランテロール (レルベアエリプタ) |
通常100を1回1吸入、1日1回。症状に応じて200を選びます。急な発作を止めるための追加吸入はしません。 |
| 吸入ステロイド薬+長時間作用性気管支拡張薬(ICS/LABA):フルチカゾンプロピオン酸エステル/サルメテロール (アドエア) |
ディスカス100・250・500は1回1吸入、1日2回。エアゾール50・125・250は1回2吸入、1日2回。規格は医師が選びます。発作時の追加吸入には使いません。 |
LABA(長時間作用性β2刺激薬)は、効果が長く続く気管支拡張薬です。喘息では、毎日の治療にLABAだけを使うことはせず、吸入ステロイド薬(ICS)と組み合わせます。ICS/LABAは、症状に応じて初めから選ぶこともあります。治療を続けても症状や発作を十分に抑えられない場合には、長時間作用性抗コリン薬(LAMA)の追加や、ICS/LABA/LAMAの3剤配合薬などを検討します。喘息単独では、3剤配合薬を最初から用いるのが一般的ではありません。ただし、COPDの特徴もある方では、症状や呼吸機能などに応じて治療開始時から3剤を検討することがあります[1][22][24][27]。
追加薬の代表例は、長時間作用性抗コリン薬(LAMA)のチオトロピウム(スピリーバレスピマット)、3剤配合薬のフルチカゾンフランカルボン酸エステル/ウメクリジニウム/ビランテロール(テリルジーエリプタ)、モメタゾン/グリコピロニウム/インダカテロール(エナジアブリーズヘラー)です。いずれも維持療法に使い、急な発作を止めるための追加吸入には使いません。LAMAは、閉塞隅角緑内障や、前立腺肥大などによる排尿障害がある方には使用できないため、該当する方は必ず医師に伝えてください[1][17][18][22]。
発作時の吸入薬:自己判断で追加できる薬は限られます
発作時に使う薬と回数を、あらかじめ医師と確認しておきます。短時間作用性β2刺激薬(SABA)のサルブタモール(サルタノールインヘラー100 μg)は、薬の説明書(電子添文)では、成人は通常1回2吸入、次の吸入まで通常3時間以上あけ、1日4回・計8吸入までです[10]。また、短時間作用性β2刺激薬(SABA)を1〜2吸入し、効果が不十分なら1時間まで20分おきに追加する方法もあります。これでも改善しない、苦しくて横になれない、症状が悪化する場合は、吸入を繰り返して受診を遅らせず、救急外来を受診してください[22]。
短時間作用性β2刺激薬(SABA)は気管支を広げますが、気道の炎症を抑える維持療法の代わりにはなりません。使用が増える、効きにくい、夜間に症状が出る場合は、コントロール不十分のサインです。
シムビコートを毎日と発作時の両方に使う方法(SMART/MART)
医師からこの方法を指示された場合は、毎日のシムビコートに加えて発作時にも同じ薬を使います。国内では、毎日の定期吸入が1回1〜2吸入・1日2回の方が対象です。発作時は1吸入し、数分たっても続けばさらに1吸入します。1回の発作で最大6吸入ですが、その回の定期吸入に続けて使う場合は、それも含めて6吸入以内です[6][22]。
1日の合計は通常8吸入までです。医師の指示で一時的に12吸入まで使える場合がありますが、8吸入を超える場合は受診が必要です。上限まで吸ってから受診するという意味ではなく、効果が乏しい、悪化する、強く息苦しい場合は早めに医療機関へ連絡してください。
吸入器の使い方で、薬の届き方が変わります
粉末を吸うドライパウダー吸入器は、薬をセットし、器具から口を離して息を吐いたあと、しっかり深く吸います。噴霧式の吸入器は、薬の噴霧に合わせてゆっくり深く吸います。操作のタイミングを合わせにくい場合は、製剤に応じてスペーサーという補助具を検討します。吸入後は無理のない範囲で息を止め、ゆっくり吐きます。
製品ごとの説明を優先し、診察や薬局で実際に使って確認しましょう。「効かない」原因が、吸入器の使い方や、薬が残っていないことである場合もあります。ICSを含む薬の使用後は、うがい・口すすぎを行います。声がれ、口の中に白いものが付着する口腔カンジダ、動悸、手の震えなどがあれば相談してください。吸入ステロイドは内服より全身への影響が少ない一方、高用量を長く使う場合は、体全体に及ぶ副作用にも注意します[6][7][9]。
循環器専門医院長 浦 祐次郎から一言▶ 総合内科専門医(院長 浦祐次郎)からの一言 「症状がない日も吸入が必要ですか」という疑問は、ぜひ診察でお聞かせください。毎日の薬と発作時の薬は役割が違います。薬の名前だけでなく、いつ・何回使うか、どの状態なら受診するかを一緒に確認しましょう。
吸入薬以外の治療と、治療を調整する考え方
症状や鼻炎の有無に応じて、アレルギー反応などを抑える飲み薬(ロイコトリエン受容体拮抗薬)を追加することがあります。成人の通常用量は、モンテルカスト(シングレア、キプレスなど)が1回10 mg・1日1回就寝前、プランルカスト(オノンなど)が1回225 mg・1日2回朝夕食後です。これらは今起こっている発作をすぐ止める薬ではありません[11][12]。
薬を増やす前に、診断、吸入手技、飲み忘れ・吸い忘れ、喫煙やアレルゲン、鼻炎や逆流などを確認します。
ダニアレルギーがあり、特にアレルギー性鼻炎を合併し、喘息が安定して呼吸機能が保たれている場合は、アレルギーの原因物質に少しずつ体を慣らす治療(アレルゲン免疫療法)を検討することがあります。国内の舌下免疫療法はアレルギー性鼻炎に対する治療で、喘息発作中や症状が十分に安定していないときに、自己判断で始める治療ではありません[1][22][24]。
重症喘息では、生物学的製剤も検討します
適切な吸入治療を続けても重い発作を繰り返す場合は、専門施設と連携し、炎症に関わる特定の物質を狙って抑える注射薬(生物学的製剤)を検討します。代表例は、オマリズマブ(ゾレア)、メポリズマブ(ヌーカラ)、ベンラリズマブ(ファセンラ)、デュピルマブ(デュピクセント)、テゼペルマブ(テゼスパイア)です。好酸球・IgE・FeNOなどの検査値や、アレルギー、ほかの病気の有無から、その薬が合うかを判断します。日本のガイドラインでは、長期の経口ステロイドによる副作用を避ける観点から、適応があれば生物学的製剤を優先して検討します[1][19][22][24]。
内服・点滴ステロイドは、どのようなときに必要?
吸入ステロイドが毎日の気道の炎症を抑える基本薬であるのに対し、内服・点滴のステロイドは全身に作用します。必要なときに短期間だけ使うことを原則とし、主に中等度以上の発作、発作治療薬の吸入で十分に改善しない場合、急速に悪化している場合などに追加します。咳が続くという理由だけで、一律に使う薬ではありません[1][22][24]。
薬を飲むことができ、胃腸からの吸収に問題がなければ、通常は飲み薬で治療できます。点滴は、強い呼吸困難や嘔吐で飲めない、意識障害がある、人工呼吸管理が必要などの場合に選びます。点滴にすれば必ず飲み薬よりよく効くわけではありません。効果が現れるまで時間がかかるため、発作時の気管支拡張薬や必要な酸素投与も並行します。重い発作は病院への搬送・入院が必要です[20]。
成人の用量・用法の例
以下は成人の喘息発作時の治療例です。
| 投与方法・薬剤 | 成人の用量・用法と期間 |
|---|---|
| 内服:プレドニゾロン (プレドニン錠など) |
国内の公開診療指針では0.5 mg/kg/日を経口投与する例が示されています。体重60 kgなら30 mg/日が目安です。投与期間と用量は症状・治療反応で決めます[13][22]。 |
| 点滴・静注:メチルプレドニゾロンコハク酸エステルナトリウム (ソル・メドロール静注用40 mg・125 mg) |
NSAIDs過敏喘息の可能性がないことを確認したうえで、初回40〜125 mgを緩徐に静注または点滴静注します。以後は症状に応じて40〜80 mgを4〜6時間ごとに緩徐に追加します。これは医療機関での急性期用法で、全員に反復投与するものではありません[14][22]。 |
| 点滴:ベタメタゾンリン酸エステルナトリウム (リンデロン注2 mg・4 mg〔0.4%〕) |
国内の公開診療指針・解説では、ベタメタゾンとして1回4〜8 mgを点滴静注し、必要に応じて6時間ごとに追加する方法が示されています。これはガイドラインに示された救急時の使用例であり、薬の説明書(電子添文)の点滴静注の用法とは異なる場合があります。実際には医療機関で重症度と治療反応を確認して判断します[21][22][23]。 |
点滴を続ける日数は固定せず、改善して薬を飲める状態になれば、飲み薬への切り替えを検討します。点滴と飲み薬を合わせた治療期間で判断し、切り替えた日から必ず追加で5〜7日間飲む、という意味ではありません。
アスピリン喘息(NSAIDs過敏喘息)が疑われる、または否定できない方では、ソル・メドロールなど一部の注射用ステロイドや、その添加物で発作が悪化することがあります。この場合は、過去の薬による発作を確認し、ベタメタゾンやデキサメタゾンを比較的安全な選択肢として検討します[16][22]。
副作用を減らすために、発作後の見直しが大切です
短期間でも不眠、気分の変化、食欲増加、血糖上昇などが起こることがあります。繰り返し使う場合や長期間使う場合は、感染症、骨粗しょう症、体内でステロイドホルモンを作る働きの低下(副腎機能の抑制)などにも注意が必要です。糖尿病や心不全などの持病がある方では、それらへの影響も見ながら使います。症状が心不全によるものかどうかも確認し、必要な発作治療を行います[13][14]。
長期の内服ステロイドは、吸入治療の最適化や生物学的製剤などを検討してもコントロールできない場合の最終的な選択肢です。
喘息そのものに抗菌薬(抗生物質)は効きません。肺炎などの細菌感染が合併している場合を除き、咳や発作だけを理由に通常は処方しません。
喘息についてよくある質問
A
コントロールが良ければ、運動は通常可能です。準備運動を行い、冷気や煙などの誘因を避けます。運動で症状が出る場合は、治療の調整や運動前の薬の使い方を相談してください。発作中に無理に運動することは避けます。
A
喘息を治す特定の食べ物はなく、食物アレルギーがなければ一律の食品制限は不要です。バランスのよい食事と適切な体重管理を心がけます。胸やけ・逆流がある方は、食べ過ぎや就寝直前の食事を避けましょう。飲酒で症状が出る方は控えてください。
A
喘息になりやすさには遺伝的な要因がありますが、家族に患者さんがいても必ず発症するわけではありません。体質に環境などが重なって発症します。喘息は人から人へうつる病気ではありません。
A
FeNOと呼吸機能検査は息を吐いて行い、通常は針を使わず外来で受けられます。強く吐く際に咳や一時的なふらつきが出ることがあります。採血には針の痛みがあります。
A
処方時に決めた発作治療薬を使い、座るなど楽な姿勢を取ります。苦しくて横になれない、発作治療薬を1〜2時間おきに必要とする、症状が悪化していく場合は、直ちに救急外来を受診してください。息苦しくて会話や歩行が難しい、唇が青紫色、意識がぼんやりする・反応が鈍い、急な強い胸痛がある場合は、ためらわず救急要請してください[22]。
福岡市で気管支喘息の診療なら|うらマイハートクリニックの特徴
うらマイハートクリニック(福岡市早良区藤崎・原)は、内科・循環器内科・腎臓内科・呼吸器内科を診療し、心臓リハビリテーションにも対応するクリニックです。
院長(浦 祐次郎)は、循環器専門医・総合内科専門医・心血管インターベンション治療学会認定医・TAVI実施医/指導医・SHD心エコー図認証医・心臓リハビリテーション指導士として、九州医療センターで13年間、小倉記念病院で1年半にわたり、重症心疾患の診療に従事してきました。副院長の浦 雅紀子は腎臓内科医として、福岡山王病院で約5年間、九州医療センターで6年間にわたり、心腎連関を踏まえた包括的な腎臓病診療に従事してきました。
現在はうらマイハートクリニックにて内科医2名体制で円滑な診療に努めています。
- 院内での迅速な検査体制:BNPなど含む当日結果のわかる多様な血液検査、心臓を含む各種エコー検査、総合病院レベルの64列CT(冠動脈CT含む)に対応。
- 治療後のサポート:心臓リハビリ施設「ReHeart Gym」で専門スタッフが体力回復・再発予防を支援。
- 通いやすい診療体制:診療開始は8時30分から、水曜は20時まで診療。駐車場11台完備。発熱症状のある方の専用入口あり。
咳やゼーゼーする呼吸、息苦しさを繰り返す方、喘息の検査や吸入薬の使い方を相談したい方は、福岡市早良区のうらマイハートクリニックまでお気軽にご相談ください。
【補足:ステロイド短期投与は減量が必要? 長期内服ではどう減らす?】
日本のガイドラインでは、全身に作用するステロイドは、必要なときに短期間だけ使うことが原則です。普段は全身ステロイドを使っておらず、今回だけ5〜7日間など2週間未満の短期投与で症状が改善した場合は、通常、段階的に減らさず処方された期間で終了できます。吸入ステロイドを含む毎日の治療は継続します[2][22][24]。
投与が2週間を超える場合は、喘息の再発を防ぐため、少しずつ減らす必要があることがあります。一方、体内でステロイドホルモンを作る働きの低下という点では、3〜4週間以上続けて飲んでいる場合や、短期投与を繰り返している場合が特に重要です。これまで使った量と期間を確認し、一人ひとりに合わせて減らし方を決めます。長期投与後に急に中止すると、強いだるさ、吐き気、血圧低下などの「副腎不全」を起こすことがあります[2][15]。
長期の飲み薬を減らすときは、喘息が安定し、ほかの治療で状態を保てることを確認して始めます。量が多いうちは比較的大きな幅で、少量になったらゆっくり減らすのが基本です。国際的な内分泌ガイドラインの例では、プレドニゾン換算10〜20 mg/日の範囲は2.5 mgずつ1〜4週間ごと、5〜10 mg/日の範囲は1 mgずつ1〜4週間ごとの減量が示されています。プレドニゾロンでも同等量を目安にします。実際の減らし方は患者さんごとに異なるため、自己判断では調整しません[15]。
約5 mg/日まで減ったあとは、症状を確認しながらさらに慎重に減量するか、朝の血液検査(コルチゾール)などで、体内でステロイドホルモンを作る力が戻っているかを調べて中止を判断します。息苦しさの再発と、減量によるだるさなどを区別することも大切です。長期内服中は、発熱・手術・嘔吐で薬が飲めないときの対応も主治医と決めておきましょう[15]。
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参考文献
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[21] PMDA.リンデロン注2 mg(0.4%)/注4 mg(0.4%)電子添文.2026年3月改訂.
[22] 岐阜県喘息・アレルギー系疾患対策事業連絡協議会.喘息ガイドライン―成人―(岐阜県版).『喘息予防・管理ガイドライン2024』に基づくまとめ.2025年12月.
[23] 大阪大学大学院医学系研究科 呼吸器・免疫内科学.喘息発作.2019年11月.喘息予防・管理ガイドライン2018に基づく公開解説.
[24] 日本アレルギー学会.喘息予防・管理ガイドライン2024.協和企画,2024.
[25] Matsunaga K, Hirano T, Kawayama T, et al. Reference ranges for exhaled nitric oxide fraction in healthy Japanese adult population. Allergol Int. 2010;59:363–367. doi:10.2332/allergolint.10-OA-0197.
[26] Matsunaga K, Hirano T, Akamatsu K, et al. Exhaled nitric oxide cutoff values for asthma diagnosis according to rhinitis and smoking status in Japanese subjects. Allergol Int. 2011;60:331–337. doi:10.2332/allergolint.10-OA-0277.
[27] 日本呼吸器学会喘息とCOPDのオーバーラップ(ACO)診断と治療の手引き第2版作成委員会 編.喘息とCOPDのオーバーラップ(Asthma and COPD Overlap:ACO)診断と治療の手引き 第2版2023.メディカルレビュー社,2024.