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睡眠時無呼吸症候群(SAS)

睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは?症状・原因・検査・治療を循環器専門医が解説|福岡市早良区

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「最近、いびきがうるさいと家族に言われる」「昼間にどうしようもない眠気に襲われて、仕事に集中できない」。そんなお悩みはありませんか?もしかしたら、それは単なる疲れや体質のせいではなく、睡眠時無呼吸症候群という病気のサインかもしれません。

睡眠時無呼吸症候群は、眠っている間に呼吸が止まったり浅くなったりすることを繰り返す病気です。これにより血液中の酸素濃度が何度も低下し、睡眠が分断されます。こうした状態が続くと、交感神経の活性化や血圧上昇などを通じて心臓や血管に負担がかかり、高血圧、不整脈、心不全、冠動脈疾患、脳卒中などと関連することが分かっています[1][2]。

日本では、30〜69歳における推計で、無呼吸低呼吸指数(AHI)5以上の閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)が約2,200万人(32.7%)、無呼吸低呼吸指数15以上が約940万人(14.0%)と報告されています[1][3]。一方、診断や治療に至っていない方も多く、見逃されやすい病気です。

この記事では、循環器専門医として、経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP)を含む睡眠時無呼吸症候群の診療に携わる立場から、ご自身やご家族が気づくべき症状、心臓や血管との関係、検査・治療法について、一つひとつ丁寧に解説していきます。

【この記事の要点】

  • 睡眠時無呼吸症候群は、眠っている間に呼吸が止まったり浅くなったりし、睡眠の質が低下する病気です。
  • 「大きないびき」「寝ている間に息が止まる」「十分寝ても昼間眠い」は、早めに相談したいサインです。
  • 眠気が目立たない方や、やせている方にも起こります。強い眠気があるときは、運転を控えてください。
  • 自宅での簡易検査や詳しい睡眠検査で調べ、原因や重症度に応じて経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP)やマウスピースなどで治療します。

この記事を書いた医師
うらマイハートクリニック院長 浦 祐次郎
(循環器専門医・総合内科専門医・TAVI実施医/指導医・心血管インターベンション治療学会認定医・SHD心エコー図認証医・心臓リハビリテーション指導士)

循環器専門医
院長 浦 祐次郎から一言
▶ 循環器専門医(院長 浦祐次郎)の臨床コメント 実際の診療では、「いびきを指摘されていたが放置していた」という方が、心房細動や高血圧の悪化、心不全をきっかけに診断されるケースも少なくありません。

睡眠時無呼吸症候群とは? – 眠っている間に呼吸が止まる病気

睡眠時無呼吸症候群は、一言でいえば「眠っている間に呼吸が止まる、または浅くなることを繰り返す病気」です。閉塞性睡眠時無呼吸は、無呼吸や低呼吸が1時間に何回起きるかだけでなく、日中の眠気などの症状や高血圧・心血管疾患などの併存疾患をあわせて診断します。一般に、症状または関連する併存疾患があり無呼吸低呼吸指数が5以上の場合、あるいは症状がなくても無呼吸低呼吸指数が15以上の場合に閉塞性睡眠時無呼吸と診断されます[4]。

多くの場合、ご本人は呼吸が止まっていることに気づいていません。睡眠中に呼吸が妨げられると、血液中の酸素が低下したり、眠りが繰り返し途切れたりします。その結果、睡眠の質が低下し、日中の眠気や心臓・血管への負担につながります。

そのいびき、大丈夫?睡眠時無呼吸症候群の症状

睡眠時無呼吸症候群の症状は、ご自身で気づきにくい夜間の症状と、日中の生活に支障をきたす症状に分けられます。ご家族からの指摘で初めて気づくケースも少なくありません。

ご家族に指摘されやすい症状(夜間)

夜間の症状は、一緒に寝ている方が先に気づくことがほとんどです。もし以下のような点を指摘されたら、注意が必要です。

  • 激しいいびき: ただの大きないびきではなく、「ゴーゴー」というような音の後に、突然静かになり、しばらくして「ガガッ!」と大きな音とともに呼吸を再開するのが特徴です。
  • 呼吸の停止: いびきが完全に止まり、数十秒間、息をしていないように見える状態です。
  • 息苦しそうな呼吸: 窒息しているかのように、あえぐような呼吸をすることがあります。
  • 頻繁に目が覚める: 無呼吸による息苦しさから、無意識に何度も目が覚めてしまいます。夜中に何度もトイレに起きる(夜間頻尿)原因の一つとも言われています。
  • 寝汗や寝相の変化: 寝汗をかいたり、寝相が悪くなったりすることもあります。ただし、これらの症状だけで睡眠時無呼吸症候群と判断することはできません。

ご自身で気づきやすい症状(日中)

夜間に質の良い睡眠がとれていないため、日中の活動にさまざまな影響が出ます。 日中の眠気が目立たない方にも、睡眠時無呼吸症候群がみられます[1]。

  • 日中の強い眠気: 最も代表的な症状です。会議中や電車の中はもちろん、運転中や食事中など、通常では考えられない状況で居眠りをしてしまうことがあります。居眠り運転の原因となることもあり、社会的にも重要な問題です。
  • 起床時の頭痛: 睡眠中の呼吸障害や睡眠の分断により、朝起きたときに頭が重かったり、ズキズキと痛んだりすることがあります。
  • 熟睡感の欠如: いくら長く寝ても、ぐっすり眠れた感じがせず、常に疲れが残っています。
  • 集中力・記憶力の低下: 睡眠の分断や低酸素の影響により、仕事や勉強に集中できなくなったり、物忘れが増えたりします。

日中の眠気には、睡眠不足や生活リズムの乱れなど、さまざまな原因があります。眠気だけで睡眠時無呼吸症候群とは判断できません。いびきや呼吸停止の指摘も含めて、以下のチェックリストで確認してみましょう。

睡眠時無呼吸症候群のセルフチェック

症状の種類 具体的な症状
夜間の症状 □ 家族やパートナーから、激しいいびきを指摘される
□ いびきが止まり、しばらくして大きな呼吸とともに再開する
□ 睡眠中に息が苦しそう、または止まっていると言われる
□ 睡眠中に何度も目が覚める、トイレに起きる
□ 朝、起きたときに汗をびっしょりかいている
日中の症状 □ 日中、会議中や運転中などに強い眠気を感じる
□ 朝、スッキリ起きられず、頭痛がすることがある
□ 十分な時間寝ても、熟睡した感じがしない
□ 集中力が続かず、仕事や家事でミスが増えた
□ 記憶力が落ちた、物忘れが多くなったと感じる

気になる項目が複数ある場合や、ひとつでも運転中の強い眠気、睡眠中の呼吸停止などがある場合は、早めに医療機関へご相談ください。 このチェックだけで診断はできません。強い眠気があるときは自動車の運転や危険を伴う作業を控え、早めに受診してください[1][4]。

なぜ呼吸が止まるのか?睡眠時無呼吸症候群の原因とリスク因子

睡眠時無呼吸症候群、特に最も多い閉塞性(閉塞性睡眠時無呼吸)は、なぜ起こるのでしょうか。その根本的な原因は、空気の通り道である「上気道」が狭くなることにあります。

主な原因は「空気の通り道(上気道)の閉塞」

私たちののどは、筋肉や脂肪でできています。起きている間は筋肉が緊張しているため、気道は十分に開いています。しかし、眠ると全身の筋肉が緩み、重力によって舌がのどの奥に落ち込んだり(舌根沈下)、のどの周りの軟らかい組織(軟口蓋)がたるんだりして、気道が狭くなりやすくなります。特に、以下のような方はリスクが高まります。

  • 肥満: 最も一般的な原因です。体重が増えると、首周りや舌、のどの内部にも脂肪が沈着します。この脂肪が、仰向けで寝たときに気道を圧迫し、狭めてしまいます。
  • 骨格の問題: 日本人を含むアジア人は、欧米人に比べて顎が小さく、後退している傾向があります。そのため、もともと気道が狭く、肥満でなくても睡眠時無呼吸症候群を発症しやすいと言われています。
  • 扁桃肥大・アデノイド: のどの奥にある扁桃腺や、鼻の奥にあるアデノイドが大きいと、物理的に気道を狭めてしまいます。これはお子さんの睡眠時無呼吸症候群の主な原因となります。
  • 加齢: 年齢とともに、のどの筋肉も衰えてたるみやすくなります。これにより、気道が塞がりやすくなります。
  • その他: 鼻づまりや鼻の骨の曲がり(鼻中隔弯曲症)などがあると、口呼吸になりやすく、睡眠中の気道閉塞を悪化させることがあります。

「痩せているから大丈夫」は誤解 ― 日本人に多い非肥満睡眠時無呼吸症候群

「睡眠時無呼吸症候群は太っている人の病気」というイメージをお持ちの方が多いかもしれません。しかし、これは大きな誤解です。

睡眠時無呼吸症候群は肥満のある方に多い一方、肥満のない方にもみられます。日本人では体型だけで閉塞性睡眠時無呼吸を否定できず、いびきや日中の眠気などがあれば検査を検討することが大切です[1][4]。

その背景の一つに、顎顔面の骨格的な特徴があります。下顎が小さい、または後退している場合は上気道のスペースが狭くなりやすく、体重が正常範囲でも睡眠中に気道が閉塞することがあります[1][4]。

「自分は痩せているから関係ない」と思い込んでしまうことが、診断の遅れにつながる大きな要因となっています。いびきや日中の眠気がある方は、体型に関わらず一度検査を受けることをお勧めします。

睡眠時無呼吸症候群の種類

睡眠時無呼吸症候群は、呼吸が止まる原因によって、主に2つのタイプに分けられます。

閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)

閉塞性睡眠時無呼吸は、空気の通り道である上気道(のどや舌の付け根など)が物理的に狭くなる、あるいは完全に塞がってしまうことで発生し、睡眠時無呼吸症候群の多くを占めます。肥満によって首周りに脂肪がついたり、扁桃が大きかったり、顎が小さいといった骨格上の特徴が原因となります。眠ると筋肉が緩むため、さらに気道が狭くなり、いびきや無呼吸を引き起こします。

中枢性睡眠時無呼吸(CSA)

中枢性睡眠時無呼吸は、気道が塞がっているわけではないのに、脳の呼吸中枢からの呼吸指令が一時的に弱くなる、または途絶えることで呼吸が止まるタイプです。心不全や脳卒中などに伴ってみられることがあり、閉塞性とは異なる治療が必要です。閉塞性睡眠時無呼吸ほど典型的ないびきが目立たないこともあります[1]。

循環器内科の立場から特に注意が必要なのは、心不全に合併する中枢性睡眠時無呼吸です。心不全が中枢性睡眠時無呼吸の発症や悪化に関係し、中枢性睡眠時無呼吸の合併は心不全の予後とも関連します。まず心不全治療を最適化し、そのうえで睡眠呼吸障害のタイプを評価して治療法を選ぶことが重要です[1]。

睡眠時無呼吸症候群の診断・検査

「もしかして自分も睡眠時無呼吸症候群かもしれない」と感じたら、まずは専門の医療機関に相談することが第一歩です。診断は、問診から始まり、ご自宅でできる簡単な検査、そして必要に応じてより詳細な精密検査へと進みます。

診断の流れ

  1. 問診・診察: まずは医師が、いびきや日中の眠気といった自覚症状、生活習慣、既往歴などを詳しくお伺いします。また、肥満の程度や、顎の形、のどの状態などを診察します。
  2. 簡易検査(スクリーニング検査): 睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合、ご自宅で使用できる携帯型の簡易睡眠検査機器にて検査を行います。指と鼻に小さなセンサーを取り付けて一晩眠ることで、呼吸の状態や血液中の酸素濃度を記録します。
  3. 終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)による精密検査: 簡易検査だけでは診断や治療方針を決めにくい場合、簡易検査が陰性でも睡眠時無呼吸症候群が強く疑われる場合、より詳細な評価が必要な場合などに行います。脳波、心電図、筋電図、呼吸、酸素濃度などを記録し、実際の睡眠時間と呼吸の状態を総合的に評価します。多くは一泊で行いますが、実施方法は医療機関によって異なります。

【定義】

無呼吸は、睡眠中に気流がほぼ停止した状態が10秒以上続くことです。低呼吸は、気流が30%以上低下した状態が10秒以上続き、血液中の酸素濃度低下または脳波上の覚醒反応を伴うものを指します。終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)では睡眠1時間あたりの回数を無呼吸低呼吸指数(AHI)、簡易検査では記録1時間あたりの回数を呼吸イベント指数(REI)と呼びます[4]。

この状態は、単なる睡眠不足とは全く異なり、放置すればさまざまな生活習慣病や心血管疾患のリスクを高める、治療が必要な病気なのです。

無呼吸低呼吸指数(AHI)による重症度分類

睡眠時無呼吸症候群の重症度は、1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数を示す無呼吸低呼吸指数(AHI)で分類されます。

重症度 無呼吸低呼吸指数(AHI)
1時間あたりの回数
状態の目安
正常 5回未満 睡眠時無呼吸症候群の基準未満の目安
軽症 5〜15回未満 症状や併存疾患を踏まえて治療を検討
中等症 15〜30回未満 経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP)を検討
重症 30回以上 経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP)などを積極的に検討

無呼吸低呼吸指数が30以上の重症閉塞性睡眠時無呼吸は、高血圧、心房細動、心不全、冠動脈疾患、脳卒中などとの関連が強く、症状や合併症を含めた早期の評価と治療が重要です[1][2]。

当院の専門的な検査体制:心臓への影響を的確に評価

睡眠時無呼吸症候群では、無呼吸の重症度に加え、心臓や血管の病気が隠れていないかを必要に応じて確認します。当院は循環器内科を専門としており、睡眠時無呼吸症候群の診断とあわせて心血管系の合併症を評価できます。

  • 心臓超音波(心エコー)検査: 睡眠時無呼吸症候群の患者さんでは、高血圧や心不全などを合併することがあります。心エコー検査では、超音波を使って心臓の大きさ、壁の厚さ、ポンプ機能、弁の状態などを確認します。
  • 院内血液検査: 当院では、心不全の評価に用いるBNPなどを院内で測定できます。症状、診察所見、心電図、心エコーなどと組み合わせることで、心臓への負担を評価する手がかりになります。
  • 64列CTによる冠動脈CT検査: 胸痛などの症状や検査所見から狭心症などの冠動脈疾患が疑われ、医学的に必要と判断した場合には、冠動脈CTで心臓の血管の狭窄やプラークを評価できます。すべての睡眠時無呼吸症候群患者さんに行う検査ではなく、症状や心血管リスクに応じて選択します。

睡眠時無呼吸症候群の治療法

睡眠時無呼吸症候群の治療目標は、睡眠中の無呼吸や低呼吸を減らし、睡眠の質と日中の症状を改善することです。治療法は重症度、症状、合併症、患者さんの希望などを踏まえて選びます。中等症から重症の閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)では、経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP)が標準的な治療の一つです[1][4]。

経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP) ― 最も標準的な治療

経鼻的持続陽圧呼吸療法は、鼻に装着したマスクから、一定の圧力をかけた空気を送り込むことで、狭くなった気道を物理的に押し広げ、睡眠中の無呼吸やいびきを防ぐ治療法です。いわば「空気の添え木」のような役割を果たします。

経鼻的持続陽圧呼吸療法は、装着している間に気道の閉塞を防ぐ治療であり、適切に使用すれば初日から無呼吸やいびきの改善が期待できます。一方、使用を中断すると再び無呼吸が起こることが多いため、継続して使うことが大切です。

2026年6月から経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP)の保険診療上の基準が変更

日本の保険診療では、2026年6月に「在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料2」の対象基準が見直されました。原則となる無呼吸低呼吸指数(AHI)の基準は20以上から15以上へ、終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)に関する所定要件を省略できる基準は40以上から30以上へ引き下げられています[5]。

基準 2026年5月まで 2026年6月から
原則となる無呼吸低呼吸指数(AHI) 20以上 15以上
終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)に関する所定要件を省略できる無呼吸低呼吸指数(AHI) 40以上 30以上

ただし、無呼吸低呼吸指数(AHI)が30以上であっても、数値だけで自動的に保険診療で経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP)を始められるわけではありません。日中の強い眠気や起床時の頭痛などの症状があり、日常生活に支障があるかどうかも確認します。AHIが15以上30未満の場合は、終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)で睡眠が何度も途切れていないかなどを詳しく調べ、保険診療の基準を満たしていることを確認する必要があります。CPAPを保険診療で行えるかどうかは、検査結果や症状、合併している病気などをもとに、医師が総合的に判断します[4][5]。

経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP)と心血管リスク

経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP)は、睡眠中の無呼吸や低呼吸を減らし、日中の眠気や生活の質を改善する治療です。血圧を下げる効果も期待できます[1][2]。

一方、CPAPを使用すれば、すべての患者さんで心筋梗塞や脳卒中を予防できるとまでは証明されていません。ただし、複数の研究をまとめた解析では、1晩4時間以上継続して使用できた患者さんで、心筋梗塞や脳卒中などの再発が少なかったことが報告されています[6]。

既存の臨床試験を詳しく解析した研究では、睡眠中の低酸素による負担が大きい患者さんなど、心臓や血管の病気を起こす危険性が高い方では、CPAPによる予防効果が得られる可能性も示されています[7]。ただし、どのような患者さんに特に効果が大きいかは、まだ十分に分かっていません。

そのため、心臓や血管への効果だけで判断するのではなく、無呼吸の程度、日中の眠気、血圧、合併している病気などを総合して治療を続けることが大切です。

経鼻的持続陽圧呼吸療法の主な効果と、現在分かっていることは以下のとおりです。

  • 日中の眠気、倦怠感、生活の質の改善
  • 無呼吸・低呼吸、いびき、夜間の低酸素の改善
  • 血圧の低下(特に夜間高血圧や治療抵抗性高血圧)
  • 心房細動の再発リスクを下げる可能性
  • 心血管イベント予防効果は一律ではなく、十分な使用時間や患者さんの病態が関係する可能性

大切なのは、毎晩、睡眠中を通してできるだけ長く経鼻的持続陽圧呼吸療法を使い続けることです。使用時間や治療中の無呼吸低呼吸指数をモニタリングしながら継続管理することが重視されています[5]。当院では、装置の使い心地やマスクの調整など、継続しやすい環境づくりをサポートします。

マウスピース(口腔内装置)

下顎を前方に少し突き出させるように固定する特殊なマウスピースを、睡眠中に装着する方法です。これにより、舌の付け根の沈み込みを防ぎ、気道を広げます。主に軽症から中等症の患者さんが対象となり、作製は専門の歯科医に依頼します。経鼻的持続陽圧呼吸療法がどうしても使えない場合の代替治療としても位置づけられています。

舌下神経刺激療法(HNS)― 新しい治療選択肢

経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP)が不適または継続できない閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)患者さんでは、条件を満たす場合に舌下神経刺激療法が選択肢となります。鎖骨の下に装置を埋め込み、睡眠中に舌下神経を刺激して舌を前方へ動かし、気道の閉塞を防ぐ治療です。日本では2021年に保険収載されていますが、無呼吸低呼吸指数(AHI)、体格指数(BMI)、上気道の形態、中枢性無呼吸の割合などに厳しい適応基準があり、専門施設で評価します[1]。

生活習慣の改善

肥満が閉塞性睡眠時無呼吸の原因となっている場合、減量は重要な治療の一つです。体重を減らすことで無呼吸が改善することがありますが、効果には個人差があり、減量だけで十分とは限りません。また、就寝前のアルコールを控え、禁煙に取り組むことも大切です[1][4]。

外科手術

扁桃腺やアデノイドが極端に大きい場合など、物理的な原因が明らかな場合には、それらを切除する手術が選択されることもあります。

放置は危険!循環器疾患との深い関係

睡眠時無呼吸症候群で重要なのは、日中の眠気だけではありません。無呼吸と低呼吸に伴う低酸素や睡眠の分断が繰り返されると、心臓や血管に負担がかかり、さまざまな心血管疾患と関連します。

体の中で何が起きているのか ― 間欠的低酸素のメカニズム

無呼吸や低呼吸が起こると血液中の酸素濃度が低下し、呼吸が再開すると回復します。この繰り返しを「間欠的低酸素血症」と呼びます。さらに、呼吸を再開するたびに短い覚醒反応が起こり、交感神経が活性化して、心拍数や血圧が変動します。

循環器領域のガイドラインや近年の総説では、間欠的低酸素や睡眠の分断が、次のような経路を通じて心血管系に影響すると考えられています[1][2][8]。

  1. 交感神経の過剰活性化 → 心拍数・血圧の上昇
  2. レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)の活性化 → 体液貯留・血圧上昇
  3. 血管内皮機能の障害 → 動脈硬化の促進
  4. 酸化ストレスの増大 → 血管壁の炎症・損傷
  5. 全身性の慢性炎症 → 動脈硬化のさらなる進行

このような過酷な状況が長年続くと、血管は柔軟性を失って硬くなり(動脈硬化)、心臓は常に高い圧力に逆らって血液を送り出さなければならなくなります。

睡眠時無呼吸症候群と関連する主な循環器疾患

中等症から重症の閉塞性睡眠時無呼吸は、心血管疾患、脳卒中、全死亡リスクの上昇と関連することが、複数の観察研究やメタアナリシスで示されています。ただし、実際のリスクは年齢、肥満、喫煙、既存の心血管疾患などによって異なります[1][2][8]。以下に、睡眠時無呼吸症候群と特に関連の深い循環器疾患を解説します。

高血圧 ― 治療抵抗性高血圧との関係

閉塞性睡眠時無呼吸患者さんの約半数に高血圧がみられます。特に、適切な3種類以上の降圧薬を使用しても血圧が目標に届かない「治療抵抗性高血圧」では、検査基準によって差はありますが、約64〜83%に閉塞性睡眠時無呼吸が認められたとの報告があります[1]。また、通常は夜間に血圧が下がるはずが、閉塞性睡眠時無呼吸では夜間も血圧が高い「non-dipper型」や、夜間に血圧が上昇する「riser型」を示すことがあります。

「お薬を飲んでいるのに血圧が下がらない」という方は、睡眠時無呼吸症候群が隠れている可能性を考える必要があります。

心房細動 ― カテーテルアブレーション後の再発リスク

心房細動は、心房が不規則に興奮する不整脈で、脳梗塞の重要な原因です。心房細動患者さんに睡眠呼吸障害を合併する割合は21〜74%と報告されており、日本のカテーテルアブレーション患者を対象とした研究では、53.3%に無呼吸低呼吸指数15以上の睡眠呼吸障害が認められました[1]。心房細動の患者さんでは、症状が乏しくても睡眠時無呼吸症候群のスクリーニングを検討することが重要です。

閉塞性睡眠時無呼吸を適切に治療することで、心房細動の再発を減らし、カテーテルアブレーションなどの治療効果を高められる可能性があります。このため日本循環器学会(JCS)2023ガイドラインでは、心房細動の再発予防や治療効果の改善を目的として睡眠呼吸障害(SDB)の治療を考慮するとしています[1]。当院では、心房細動と睡眠時無呼吸症候群をあわせて管理します。

心不全 ― 睡眠時無呼吸症候群と心不全の悪循環

心不全の患者さんでは、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)だけでなく中枢性睡眠時無呼吸(CSA)も多くみられます。治療はタイプによって異なり、閉塞性睡眠時無呼吸では症状などに応じて経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP)を検討します。一方、心不全に伴う中枢性睡眠時無呼吸では、まず心不全の標準治療を最適化し、心機能や呼吸パターンを評価して呼吸療法を選択します。経鼻的持続陽圧呼吸療法を一律に行うものではありません[1]。

虚血性心疾患・脳卒中

閉塞性睡眠時無呼吸は、冠動脈疾患や脳卒中とも関連します。また、高血圧、心不全、冠動脈疾患、心房細動、脳卒中などの患者さんでは、一般集団より閉塞性睡眠時無呼吸の合併頻度が高く、疾患や検査基準によっては40〜80%程度と報告されています[1][2][8]。

このように、睡眠時無呼吸症候群は、睡眠だけの問題ではなく、心臓、血管、代謝、腎臓などにも関係する病気です。いびきや眠気を手がかりに、合併症を含めて評価することが大切です。

循環器専門医
院長 浦 祐次郎から一言
▶ 循環器専門医(院長 浦祐次郎)の臨床コメント 夜間就寝中は、本来心臓を休めなければいけないにもかかわらず、睡眠時無呼吸があることによって夜間にも心臓を頑張らせてしまうことが大きな問題です。経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP)によって呼吸を助け、心臓をできるだけ休ませることが重要です。

日常生活での注意点・予防

睡眠時無呼吸症候群の改善と予防には、治療と並行して日常生活を見直すことも非常に重要です。

  • 適正体重の維持: 肥満は閉塞性睡眠時無呼吸の主要なリスク因子です。バランスの取れた食事と適度な運動を心がけ、体重をコントロールすることは重要なセルフケアです。
  • 横向きで寝る: 仰向けで無呼吸が増えるタイプでは、横向き寝が役立つことがあります。効果には個人差があり、必要な治療の代わりになるとは限りません[1][4]。
  • 就寝前のアルコールを控える: アルコールは、のどの筋肉を緩め、無呼吸を悪化させることがあります。特に寝る前の飲酒は控えましょう。
  • 禁煙: タバコは、のどの粘膜に炎症を引き起こし、気道を狭める原因となります。また、動脈硬化を促進し、心血管疾患のリスクをさらに高めてしまいます。
  • 睡眠薬の服用に注意: 睡眠薬の種類や患者さんの状態によっては、呼吸に影響することがあります。服用中の薬を自己判断で中止したり追加したりせず、医師にご相談ください。

このような症状があれば早めにご相談ください

睡眠時無呼吸症候群は、「ただのいびき」と思っている間に心臓や血管に大きな負担をかけ続けてしまう病気です。

また、ご自身では気づきにくく、治療が必要な状態でも見過ごされることがあります。以下のようなサインに心当たりがあれば、放置せずご相談ください。

  • 家族やパートナーから、大きないびきや呼吸の停止を指摘された
  • 日中、特に会議中や運転中に、耐えがたいほどの強い眠気を感じる
  • 夜中に何度も目が覚める、トイレに起きる
  • 朝起きたときに頭痛がしたり、熟睡感がなかったりする
  • すでに高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病を治療中である
  • お薬を飲んでいるのに血圧がなかなか下がらない(治療抵抗性高血圧)
  • 心不全や不整脈(心房細動)などの心臓病と診断されている
  • 痩せているが、顎が小さいと言われたことがある

特に、高血圧、心不全、心房細動、冠動脈疾患などがある方では、睡眠時無呼吸症候群の評価と治療が循環器疾患の包括的な管理につながります。「たかがいびき」と軽視せず、ご自身の症状を確認してみてください。

睡眠時無呼吸症候群についてよくある質問

Q睡眠時無呼吸症候群は治りますか? CPAPは一生必要ですか?
A

原因や重症度によって異なります。減量や、適応のある方への手術などで改善する場合もあれば、長く治療を続ける必要がある場合もあります。経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP)は装着している間の呼吸を助ける治療です。いびきや眠気が改善しても自己判断で中止せず、再検査の結果を踏まえて医師と相談しましょう[1][4]。

Q運動してもよいですか?
A

一般には、ウォーキングなどの適度な運動が勧められます。肥満がある方では、体重管理にも役立ちます。心臓の病気などがある方は、運動の種類や強さを主治医に確認してください[1][4]。

Q食事で気をつけることはありますか?
A

肥満がある方は、食べすぎを見直し、無理のない体重管理に取り組みましょう。特定の食品だけで治る病気ではありません。また、飲酒は睡眠中ののどを狭くしやすいため、特に寝る前の飲酒を控えることが大切です[1][4]。

Q家族歴や遺伝は関係しますか?
A

顎や顔の骨格、太りやすさなど、家族で似た特徴が発症に関係することがあります。ただし、家族に患者さんがいるからといって、必ず発症するわけではありません。体型にかかわらず、いびきや無呼吸を指摘されたら相談してください[1]“>[4]。

Q検査は痛いですか? 入院が必要ですか?
A

睡眠の検査は、体にセンサーを付けて呼吸などを記録するため、通常は強い痛みを伴いません。簡易検査は自宅で行えることが多く、詳しい検査では一晩の入院が必要になる場合があります。検査方法は、症状や持病などに応じて選びます[4]。

Qどのような場合に救急車を呼ぶべきですか?
A

呼びかけても反応がない、普段どおりの呼吸がない場合は、すぐに救急要請してください。強い胸の痛みや、起きているときにも続く強い息苦しさがある場合も救急要請が必要です。睡眠中に呼吸が止まって再開することを繰り返している場合は、放置せず早めに医療機関へ相談してください。

Q何科を受診すればよいですか?
A

睡眠外来や、睡眠時無呼吸症候群を診療している呼吸器内科・循環器内科などに相談してください。鼻づまりや扁桃の腫れが目立つ場合は、耳鼻咽喉科での診察が役立つこともあります。

Qいびきのアプリで診断できますか?
A

録音したいびきなどは受診時の参考になりますが、一般的ないびきアプリだけでは診断できません。記録で異常がなくても、無呼吸を指摘されたり、強い眠気が続いたりする場合は相談してください[4]。

福岡市で睡眠時無呼吸症候群の診療なら|うらマイハートクリニックの特徴

うらマイハートクリニック(福岡市早良区藤崎・原)は、内科・循環器内科・腎臓内科・呼吸器内科を診療し、心臓リハビリテーションにも対応するクリニックです。

院長(浦 祐次郎)は、循環器専門医・総合内科専門医・心血管インターベンション治療学会認定医・TAVI実施医/指導医・SHD心エコー図認証医・心臓リハビリテーション指導士として、九州医療センターで13年間、小倉記念病院で1年半にわたり、重症心疾患の診療に従事してきました。副院長の浦 雅紀子は腎臓内科医として、福岡山王病院で約5年間、九州医療センターで6年間にわたり、心腎連関を踏まえた包括的な腎臓病診療に従事してきました。

現在はうらマイハートクリニックにて内科医2名体制で円滑な診療に努めています。

  • 院内での迅速な検査体制:BNPなど含む当日結果のわかる多様な血液検査、心臓を含む各種エコー検査、総合病院レベルの64列CT(冠動脈CT含む)に対応。
  • 治療後のサポート:心臓リハビリ施設「ReHeart Gym」で専門スタッフが体力回復・再発予防を支援。
  • 通いやすい診療体制:診療開始は8時30分から、水曜は20時まで診療。駐車場11台完備。発熱症状のある方の専用入口あり。

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参考文献

[1] Kasai T, et al. JCS 2023 Guideline on Diagnosis and Treatment of Sleep Disordered Breathing in Cardiovascular Disease. Circ J. 2024;88(11):1865-1935. doi:10.1253/circj.CJ-23-0489.

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浦 祐次郎

この記事の監修者:
うらマイハートクリニック院長 
浦 祐次郎

循環器専門医・総合内科専門医・TAVI実施医/指導医・心血管インターベンション治療学会認定医・SHD心エコー図認証医・心臓リハビリテーション指導士

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