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心筋炎

心筋炎の原因・症状・検査・治療を循環器専門医が解説|福岡市早良区

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風邪が治ったはずなのに、息切れや動悸が続いていませんか?「少し動いただけですぐに疲れる」「階段で急に息が上がる」「動悸や胸の違和感が残る」。それは単なる体力の低下ではなく、心筋炎という“見逃すと危険な病気”の可能性があります。風邪症状がない場合もあり、「なんとなくきつい」「むくみが出て体重が増えた」という症状で見つかる方もいます。

その症状の裏には、心臓の筋肉に炎症が起きる「心筋炎」が隠れている可能性があります。心筋炎は健康な若者にも突然発症し、時に命に関わる不整脈や心不全を引き起こすため、軽視できない疾患です。心筋炎は、症状が軽い場合などには診断が難しく、日本でどのくらいの人が発症しているかは、正確にはわかっていません[1]。

本記事では、心筋炎の基本から原因・症状・検査・治療法、拡張型心筋症との鑑別が重要な慢性心筋炎まで、循環器専門医が詳しく解説します。

この記事の要点

  • 心筋炎は、心臓の筋肉に炎症が起こり、胸の痛み・息切れ・動悸・強いだるさなどが現れる病気です。
  • 「風邪のあとに階段がつらい」「動悸や胸の違和感が続く」は早めに相談したいサインです。風邪症状がない場合もあります。
  • 安静時の強い息苦しさ、冷や汗を伴う強い胸痛、失神や意識の異常がある場合は、119番で救急車を呼んでください。
  • 診断には心電図、血液検査、心エコー、心臓MRIなどを組み合わせます。回復後も通院を続け、運動の再開は医師と相談します。

この記事を書いた医師
うらマイハートクリニック院長 浦 祐次郎
(循環器専門医・総合内科専門医・TAVI実施医/指導医・心血管インターベンション治療学会認定医・SHD心エコー図認証医・心臓リハビリテーション指導士)

循環器専門医
院長 浦 祐次郎から一言
▶ 循環器専門医 院長 浦祐次郎からの一言 見逃されやすいポイントですが、実際の診療では「ただの風邪が長引いているだけだと思っていた」「まさか緊急入院が必要な心臓の病気だとは思っていなかった」とおっしゃる方が多く、心不全症状が軽度の初期は診断が難しいことも多いです。若い方も数時間〜数日で急激に悪化することがある危険な心臓病です。

心筋炎とは?定義と心臓で起きていること

心筋炎とは、心臓の筋肉「心筋」に炎症が生じる疾患です。心臓は心筋のポンプ作用で全身に血液を送りますが、心筋炎で心筋細胞が傷つくとポンプ機能が低下し、心不全症状(息切れ、むくみ)や危険な不整脈(動悸、めまい、失神)を引き起こすことがあります。

最も多い原因はウイルス感染です。ウイルスによる直接の傷害や、感染に伴う免疫反応などが関わって、心筋に炎症が起こります。

心筋炎の症状|風邪の後の不調は見逃さないで

心筋炎の症状は個人差が大きく、典型的には風邪のような症状が先行するため心臓の病気と気づきにくいのが特徴です。風邪症状がない方もおられます。

先行する症状(風邪のような症状)

典型的には、心臓の症状が現れる数日〜2週間ほど前に、発熱、咳、倦怠感、筋肉痛といった感冒様症状が先行します [1]。風邪症状に続いて、あるいは風邪症状とともに心臓の症状が現れることがあるため、「風邪が長引いている」と自己判断しがちですが、このタイミングでの変化に注意することが早期発見につながります。

心臓に現れる症状

先行症状に続き、心機能低下による心不全症状や、不整脈症状が多彩に現れます。

症状の種類 具体的な内容 なぜ起こるのか
胸部症状 動悸、胸痛、胸の圧迫感 心筋の炎症による刺激や、心機能低下を補うための頻脈。
呼吸器症状 労作時の息切れ、呼吸困難 肺に血液が滞る「肺うっ血」のため。
全身症状 倦怠感、むくみ、めまい、失神 全身への血液供給不足や体液貯留、または不整脈による脳血流低下。

救急車を呼ぶ症状

以下の症状が見られた場合は、心筋炎かどうかを自己判断せず、119番で救急車を呼んでください。これらは心筋梗塞など、ほかの緊急性の高い病気でも現れる症状です。

  • 安静にしていても息が苦しくて横になれない(起坐呼吸)
  • 冷や汗を伴う強い胸痛が続く
  • 意識が遠のく、または失神した
  • 強い動悸に、息苦しさや失神しそうな感覚を伴う

これらの症状は心不全の悪化や致死的不整脈を示唆し、一刻も早い専門的医療が必要です。自分で車を運転して受診することは避けてください。

心筋炎の原因|ウイルス感染と免疫の過剰反応

心筋炎の主な原因の一つはウイルス感染で、ウイルスによる直接の傷害や、感染に伴う免疫反応が関わります。

主な原因となるウイルス感染

風邪の原因となるコクサッキーウイルス、アデノウイルス、インフルエンザウイルスなどが代表的です [1]。これらのウイルスが心筋に直接ダメージを与えることに加え、ウイルスを排除しようとする免疫反応が過剰に働き、心筋組織に強い炎症を引き起こします。

ウイルス以外の原因

頻度は低いですが、細菌感染、薬剤性(一部の抗がん剤や免疫チェックポイント阻害薬など)、自己免疫疾患(膠原病)に伴うものもあります。

心筋炎の疫学|若者やアスリートも無関係ではない

心筋炎はあらゆる年齢で発症しますが、特に若年層や中年層に多く見られます。若い方の突然死の原因の一つとしても知られており、健康な方でも注意が必要です[1][2]。

また、アスリートが突然心停止を起こす原因の一つとしても知られています。風邪症状の後に十分な休養を取らず激しい運動を再開することが引き金になる可能性も指摘されており、健康に自信がある若い方でも注意が必要です。

心筋炎の種類|経過による分類と重症度

心筋炎は経過や重症度により分類されます。最新のESC 2025ガイドライン [2] では、時間経過に基づく分類が整理されました。

分類 期間の目安 主な特徴
急性心筋炎 発症から4週間以内 最も一般的なタイプ。多くはウイルス感染が先行する。予後は様々。
亜急性心筋炎 4週間を超え3か月以内 急性期から慢性期への移行段階。症状が遷延する。
慢性心筋炎 3か月を超えて持続 炎症が長引くタイプ。心機能低下を伴う炎症性心筋症へ進むことがある。
劇症型心筋炎 急性期に急激な循環不全 急性心筋炎のうち、急激に生命を脅かす状態に陥る重症型。集中治療や機械的補助循環が必要。

分類や期間の定義はガイドラインによって異なります。日本の2023年ガイドラインでは、30日以上にわたり心筋の炎症と心筋細胞の傷害が持続する状態を「慢性活動性心筋炎」として区別しています[1]。

ACC 2024の新しい病期分類

ACC 2024 Expert Consensus [3] では、心不全の病期分類に準じた新しいステージ分類が提唱されています。

ステージ 状態 対応
Stage A リスク因子あり(ウイルス感染後など)、心筋炎の症状・所見なし 経過観察
Stage B 画像や血液検査などで心筋炎を示す所見があるが、症状はない モニタリング、心エコーフォロー
Stage C 症候性心筋炎(胸痛、息切れ、不整脈など) 病状に応じた入院・心不全治療。激しい運動を避け、検査で再開時期を判断
Stage D 血圧の低下や危険な不整脈を伴う重症心筋炎 集中治療、心臓や肺の働きを補う機械的補助循環

心筋炎の検査・診断|心筋トロポニン・心エコー・心臓MRI・心筋生検

「風邪の後の不調」が心筋炎か診断するには、複数の検査で心臓を多角的に評価します。

診断の流れ

まず問診と身体診察で症状や経過を伺い、心電図、胸部X線、血液検査、心エコーで心臓の異常を調べます。心筋炎が疑われる場合は、心臓の磁気共鳴画像(MRI)検査で心筋の炎症や傷みを詳しく調べ、必要に応じて心筋生検を行います。また、心筋梗塞などとの鑑別のため、病状に応じて冠動脈のコンピュータ断層撮影(CT)検査や心臓カテーテル検査を行います。ESC 2025ガイドラインでは、心臓MRIが身体への負担を抑えて診断するうえで重要な検査とされています[1][2]。

主な検査

検査名 何がわかるか
心電図検査 心筋障害、不整脈、伝導障害の有無
血液検査 心筋の傷み(トロポニン)、心臓への負担(脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP))、炎症反応(C反応性蛋白(CRP))
心臓超音波検査(心エコー) 心臓の動き、大きさ、ポンプ機能、心嚢液の有無
胸部X線検査 心臓の大きさ(心拡大)、肺うっ血の有無
冠動脈CT検査 冠動脈の狭窄・閉塞の有無(心筋梗塞との鑑別に重要)
心臓MRI検査 心筋のむくみや傷んだ部分を評価する。慢性心筋炎の評価にも役立つが、結果を他の検査と合わせて判断
心内膜心筋生検(EMB) 炎症細胞や心筋の傷みを詳しく調べ、心筋炎の種類や治療方針を判断する

心内膜心筋生検(EMB)の適応|いつ生検が必要か

心筋生検は、心筋炎の種類や治療方針を判断するうえで重要な検査です。すべての方に必要なわけではなく、重症度や検査結果、治療への反応などに応じて、専門施設で必要性を判断します[1][2][5]。主に以下のような場合に検討します。

  • 急性心不全や心原性ショックを呈する場合
  • 致死的な不整脈や高度伝導障害を伴う場合
  • 心機能が著しく低下している場合(左室駆出率(LVEF)40%以下など)
  • 巨細胞性心筋炎や心臓サルコイドーシスが疑われる場合
  • 標準的な心不全治療に反応しない場合
  • 免疫抑制療法を検討するため、炎症の種類やウイルス感染の関与を調べる必要がある場合

心筋生検に基づく心筋炎の分類と治療法

心筋炎は「原因不明の心不全」として一括りにされがちですが、実は心筋生検で得られた組織を顕微鏡で調べることで、いくつかの重要なタイプに分類できます。この分類は治療方針に直結するため、非常に重要です [2][3]。

リンパ球性心筋炎(最も一般的)

頻度: 心筋炎の中で最も一般的なタイプです。

病態: 主にウイルス感染をきっかけに、リンパ球(免疫細胞の一種)が心筋に浸潤し、心筋細胞を傷害します。

治療: 基本は支持療法(心不全治療)です。心臓を休ませながら、β遮断薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)、ナトリウム・グルコース共輸送体2阻害薬(SGLT2阻害薬)、利尿薬などを状態に応じて組み合わせます[1]。多くの場合、炎症が落ち着くにつれて、心機能は回復に向かいます。

免疫抑制療法の適応: リンパ球性心筋炎では、免疫抑制療法をすべての患者さんに行うわけではありません。心筋生検などで炎症の状態やウイルス感染の関与を確認し、病状に応じて専門施設で検討します[1][2]。

予後: 軽症では数週間で改善することが多い一方、心機能の低下や不整脈が残る場合もあります。経過は重症度などによって異なるため、回復後も必要な検査と通院を続けます[2][3]。

巨細胞性心筋炎(GCM)|早期診断と免疫抑制が生死を分ける

頻度: 稀ですが、最も致死率が高いタイプの一つです。

病態: 心筋組織に「多核巨細胞」と呼ばれる大きな免疫細胞が出現し、好酸球を含む混合的な炎症浸潤と広範な心筋壊死を引き起こします。自己免疫的な機序が関与していると考えられています。

臨床的特徴: 急速に進行する心不全と致死的不整脈が特徴です。若年〜中年に多く、急激な経過をたどります。

治療: 強力な免疫抑制療法が必須です。シクロスポリン+ステロイド、場合によってはアザチオプリンを加えた多剤併用療法が行われます [2][3]。

予後: 進行が速く、重症化しやすいタイプですが、早期に診断し、複数の免疫抑制薬を組み合わせて治療することで、予後の改善が期待されます[1][2]。

好酸球性心筋炎|原因への対応とステロイド治療

頻度: 比較的稀ですが、特定の原因がある場合に発症します。

病態: 好酸球(アレルギー反応に関与する白血球の一種)が心筋に浸潤し、炎症を引き起こします。

主な原因: 薬剤アレルギー(抗菌薬、抗てんかん薬など)、好酸球増多症候群、寄生虫感染などが知られています[1][2]。

治療: 原因となる薬剤の中止や原因疾患の治療を行い、重症度や原因に応じてステロイドを使用します。治療により改善が期待できますが、重症例では集中治療が必要です[1][2]。

予後: 早期に適切な治療を行えば良好ですが、壊死性好酸球性心筋炎に進展した場合は予後不良となることがあります。

心臓サルコイドーシス|日本人に多い難病

頻度: 全身性サルコイドーシスでは、心臓にも病変が生じることがあります。心臓病変は日本人に比較的多いことが知られています[4]。

病態: 原因不明の肉芽腫(免疫細胞の塊)が心筋に形成され、心筋を障害します。巨細胞性心筋炎と異なり、「非乾酪性肉芽腫」と呼ばれる特徴的な組織像を示します。

臨床的特徴: 完全房室ブロック(脈が極端に遅くなる)、心室性不整脈、心機能低下が三大徴候です。日本では中高年の女性に多い傾向があります[4]。

治療: ステロイド(プレドニゾロン)が第一選択です。効果不十分な場合はメトトレキサートなどの免疫抑制薬を追加します [1][4]。完全房室ブロックにはペースメーカー、致死的不整脈には植込み型除細動器(ICD)が必要となることがあります。 炎症の活動性や症状を踏まえて、治療の必要性を判断します[13]。

診断: 心筋生検に加え、放射性の薬剤を用いて炎症のある部位を調べる陽電子放出断層撮影(PET)検査(18F-FDGを使用)が、心臓の活動性炎症の評価に有用です[4]。

心筋生検に基づく分類のまとめ

組織型 頻度 主な原因 治療の柱 予後
リンパ球性 最も多い ウイルス感染後 心不全治療。検査結果に応じて免疫抑制療法を検討 軽症では改善が多いが、心機能低下が残る場合もある
巨細胞性(GCM) 稀 自己免疫 強力な免疫抑制療法が必須(シクロスポリン+ステロイド) 未治療で極めて不良
好酸球性 稀 薬剤アレルギー、寄生虫 原因への対応。重症度や原因に応じたステロイド 改善が期待できるが、重症例もある
心臓サルコイドーシス 日本人に多い 原因不明(肉芽腫形成) ステロイド+免疫抑制薬 治療反応性あり

慢性心筋炎・炎症性心筋症と拡張型心筋症(DCM)の鑑別

拡張型心筋症の背景に、炎症が続いていることがあります

心臓が大きく拡張し、ポンプ機能が低下する「拡張型心筋症(DCM)」は、原因不明の心筋症として長年知られてきました。拡張型心筋症と診断された方の中には、心筋に炎症が持続している方もいます[11]。

心筋の炎症に加えて心臓の働きの低下などを伴う状態は、「炎症性心筋症」と呼ばれます。慢性心筋炎と関連しますが、完全に同じ意味ではありません。炎症が長引くことで、心筋が徐々に傷み、心臓の拡大や機能低下につながる場合があります[2][11]。

なぜ鑑別が重要なのか|治療で心機能が回復する可能性

炎症の有無を調べることが重要なのは、その結果によって、追加できる治療が見つかる場合があるためです。

拡張型心筋症でも、薬物療法などによって心機能が改善することがあります。そのうえで、心筋に炎症が持続している場合は、原因や検査結果に応じて、ステロイド(プレドニゾロン)やアザチオプリンなどの免疫抑制療法を追加することがあります[1][11]。

日本の2023年ガイドラインでは、慢性心筋炎に対する免疫抑制療法について、効果を裏付ける根拠は十分に確立されていないとしています。一方、炎症が持続する場合には、心不全や不整脈への治療を含めた積極的な対応が必要とされており、免疫抑制療法の適応も、炎症の種類や病状を踏まえて判断します[1]。

ウイルス陰性の炎症性心筋症を対象としたTIMIC試験では、免疫抑制療法を受けた方の88%で、6か月後に心機能の改善が認められました。長期追跡でも、治療を受けなかった対照群より、心血管死や心臓移植が少ないことが報告されています。ただし、長期成績は観察研究での比較であり、すべての患者さんに同じ効果が得られるわけではありません[9]。また、209例を対象とした後ろ向き研究でも、免疫抑制療法を受けた群では、心臓移植を受けずに生存できた割合や心機能の改善幅が大きいことが報告されています[10]。

このため、必要に応じて専門施設で炎症の有無を詳しく評価し、ウイルス感染の関与や病状を確認したうえで、免疫抑制療法が適しているかを検討します[1][11]。

鑑別の方法|心臓MRIと心筋生検の役割

心臓MRIによる身体への負担の少ない評価

心臓MRIは、心筋のむくみや傷んだ部分を調べ、慢性心筋炎などを評価する手がかりになります。次の表は代表的な傾向をまとめたものですが、所見には重なりがあり、この表だけでは診断できません[1][6][11]。

MRI所見 慢性心筋炎・炎症性心筋症 治癒後の心筋炎 特発性拡張型心筋症
T2マッピング(浮腫) 高値になることがあるが、正常でも炎症を否定できない 正常化することが多い 正常の場合も、高値になる場合もある
遅延ガドリニウム造影(LGE)
心筋の傷み・線維化
心筋の外側や中層などにみられる。分布はさまざま 炎症が治まっても残ることがある 認めない場合もあり、心筋の中層などにみられる
T1マッピング
心筋の性状
高値になることがある 線維化などで高値が残ることがある 高値になることがある

T2マッピングは心筋のむくみを調べる方法ですが、異常があっても炎症だけが原因とは限りません。また、慢性期には異常を捉えにくいこともあり、MRIが正常でも炎症が残っている場合があります。必要に応じて心筋生検を組み合わせます[1][6][11]。

心筋生検による詳しい評価

心筋生検では、炎症細胞の種類や数、心筋細胞の傷み具合などを総合的に評価します。炎症細胞の数だけで、炎症の活動性を判断することはできません[1][2][8]。必要に応じてウイルスの遺伝子を調べるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査も行い、免疫抑制療法が適しているかを判断します。

心筋炎の治療|安静と心機能のサポートから免疫抑制療法まで

心筋炎の治療は、心臓を休ませ、心機能の回復をサポートすることが基本です。急変する危険性もあるため、重症度や病状に応じて入院での管理を行います。

基本治療(安静と心不全治療)

治療の根幹は、心臓への負担を減らすための安静です。心機能が低下している場合は、標準的な心不全治療に準じ、β遮断薬、ACE阻害薬/ARB、SGLT2阻害薬、利尿薬などを状態に応じて組み合わせます [1]。

重症例(劇症型心筋炎)の治療

「劇症型心筋炎」では、薬物治療だけでは救命困難な場合、心臓と肺の働きを一時的に補うVA-ECMOなどの機械的補助循環装置を迅速に導入します[1]。

循環器専門医
院長 浦 祐次郎から一言
▶ 循環器専門医(院長 浦祐次郎)の臨床コメント 私はこれまでに多くの心筋炎患者の集中治療・慢性期治療に携わってきました。その経験に基づき、重症化リスクを的確に判断し、最適なタイミングで高度医療機関と連携します。

組織型に応じた免疫抑制療法

心筋生検などで炎症の種類や原因を調べ、病状に応じて、次のような免疫抑制療法を検討します[1][2]。

組織型 免疫抑制療法の内容 注意点
リンパ球性(ウイルス陰性) 適応を判断してステロイドやアザチオプリンを検討 炎症の状態やウイルス感染の関与を評価
巨細胞性(GCM) シクロスポリン+ステロイド±アザチオプリン 早期開始が予後を左右する
好酸球性 重症度や原因に応じたステロイド 原因薬剤の中止や原因疾患の治療も行う
心臓サルコイドーシス ステロイド(プレドニゾロン)±メトトレキサート 長期投与が必要な場合が多い
免疫チェックポイント阻害薬関連 高用量ステロイド、原因薬の中止 がん治療との兼ね合いが重要

回復期を支える心臓リハビリテーション

炎症が続いている間は、激しい運動を避けて心臓を休ませます。米国の2024年専門家合意文書では、症状のある心筋炎などで3〜6か月、激しい運動を避けることが勧められています[3]。2025年の欧米の指針では、炎症の消失や心機能、不整脈の有無を確認して、運動の再開時期を個別に判断することが重視されています[2][12]。回復後は医師の指導のもと、無理のない運動から段階的に再開し、体力回復や社会復帰を支えます。

当院の強み:専用の心臓リハビリ器具を完備しており、専門スタッフの監視下で心電図や血圧をモニターしながら、一人ひとりの病状に合わせた運動療法プログラムを提供しています。退院後も地域で必要なリハビリを継続できるよう、連携病院と協力し、心筋炎の回復期を支援します。

心筋炎の予防と退院後の注意点

ウイルス感染が主な原因のため完全な予防は困難ですが、手洗いやワクチン接種、風邪をひいた際の十分な休養といった基本的な感染対策がリスクを低減します。

退院後も、運動の再開は医師が検査結果や不整脈の有無などを確認してから、段階的に行います。心機能低下が残った場合は、毎日の体重測定や塩分制限(1日6g未満を目安に、病状に応じて調整)といった心不全管理が、心不全の悪化を防ぐために大切です。

このような症状があればご相談ください

風邪後の息切れが気になる方は、心筋炎の可能性があります。お早めにご相談ください。

受診の目安|早めの相談が大切なケース

心筋炎は早期発見・早期治療が予後を左右します。特に巨細胞性心筋炎のような致死的なタイプは、早期の心筋生検による診断が生死を分けることがあります。以下のような症状があれば、決して放置せず、お早めに循環器専門医にご相談ください。

  • 風邪の後、いつまでも動悸、息切れ、胸の違和感が続く
  • 階段を上るのが急に辛くなった
  • 胸の痛みや圧迫感がある
  • 健康診断で心電図異常や心拡大を指摘された
  • 理由なく急に体重が増え、足がむくむ

よくある質問

Q心筋炎は治りますか? 一生薬を飲む必要がありますか?
A

軽症では数週間で改善することが多い一方、心機能の低下や不整脈が残る場合もあります。経過は心筋炎の種類や重症度によって異なるため、正確な診断と適切な治療が重要です。回復後も、医師の指示に沿って検査と通院を続けてください[2][3]。 薬を続ける期間は、原因や重症度、回復の程度によって異なり、全員が一生服薬するわけではありません。症状がなくなっても治療が必要なことがあるため、自己判断で薬をやめず、主治医と相談してください。

Q心筋炎と診断されたら運動はもうできませんか?
A

炎症が続いている間は、激しい運動を避ける必要があります。運動を再開する時期は、症状だけでなく、血液検査や心臓の画像検査、不整脈の有無を確認して決めます。回復後は医師の指導のもと、無理のない運動から段階的に再開します。競技スポーツへの復帰は、専門医と相談してください[2][3][12]。

Q新型コロナワクチンと心筋炎の関係は?
A

新型コロナウイルス感染でも、ワクチン接種後にも、心筋炎が起こることがあります。接種後の心筋炎はまれですが、特に若い男性で多く報告されています。多くは治療により改善しますが、接種後に胸痛や息苦しさ、動悸が出た場合は受診してください。接種のメリットとリスクは、年齢や基礎疾患などを踏まえて判断します[7]。

Q拡張型心筋症と言われましたが、慢性心筋炎の可能性はありますか?
A

拡張型心筋症と診断された方の中には、心筋に炎症が持続している方もいます。心臓MRIで炎症を調べ、必要に応じて心筋生検を行います。ただし、MRIだけでは判断できない場合もあります。検査結果や病状によっては免疫抑制療法が役立つこともあるため、気になる方は循環器専門医にご相談ください[1][11]。

Q食事で気をつけることはありますか?
A

特定の食品やサプリメントだけで心筋炎を治すことはできません。回復を支えるため、無理なく食べられる範囲で栄養の偏りを避けましょう。心不全やむくみがある場合は、塩分を控えることが大切です。水分量は病状によって調整するため、自己判断で極端に制限したり、大量に飲んだりせず、主治医に確認してください。

Q心筋炎は遺伝しますか。家族も検査が必要ですか?
A

心筋炎と診断されたからといって、必ず家族に遺伝するわけではありません。ただし、一部では心筋症に関連する遺伝的な背景が関わることがあります。心筋炎を繰り返す方や、ご家族に心筋症・若年での突然死の方がいる場合は、そのことを主治医に伝えてください。家族の検査が必要かどうかを個別に判断します[2][3]。

Q検査は痛いですか。入院が必要ですか?
A

心電図や胸の上から行う心エコーは、通常、強い痛みを伴いません。採血や造影剤を使う検査では針を刺す痛みがあります。心筋生検は、血管から細い管を入れて心筋の一部を採取する検査で、専門施設で必要性や合併症について説明を受けて行います。すべての方に生検が必要なわけではありません。入院の必要性は、心機能や不整脈、急変の危険性などから判断します[1][2]。

Qどのような症状なら救急車を呼ぶべきですか?
A

安静にしていても強く息苦しい、冷や汗を伴う強い胸痛がある、失神した、意識がもうろうとしている場合は、119番で救急車を呼んでください。強い動悸に息苦しさや失神しそうな感覚を伴う場合も同様です。心筋炎かどうかを自分で判断する必要はありません。自分で車を運転して受診することは避けてください。

福岡市で心筋炎の診療なら|うらマイハートクリニックの特徴

うらマイハートクリニック(福岡市早良区藤崎・原)は、内科・循環器内科・腎臓内科・呼吸器内科を診療し、心臓リハビリテーションにも対応するクリニックです。

院長(浦 祐次郎)は、循環器専門医・総合内科専門医・心血管インターベンション治療学会認定医・TAVI実施医/指導医・SHD心エコー図認証医・心臓リハビリテーション指導士として、九州医療センターで13年間、小倉記念病院で1年半にわたり、重症心疾患の診療に従事してきました。副院長の浦 雅紀子は腎臓内科医として、福岡山王病院で約5年間、九州医療センターで6年間にわたり、心腎連関を踏まえた包括的な腎臓病診療に従事してきました。

現在はうらマイハートクリニックにて内科医2名体制で円滑な診療に努めています。

  • 院内での迅速な検査体制:BNPなど含む当日結果のわかる多様な血液検査、心臓を含む各種エコー検査、総合病院レベルの64列CT(冠動脈CT含む)に対応。
  • 治療後のサポート:心臓リハビリ施設「ReHeart Gym」で専門スタッフが体力回復・再発予防を支援。
  • 通いやすい診療体制:診療開始は8時30分から、水曜は20時まで診療。駐車場11台完備。発熱症状のある方の専用入口あり。

「風邪が長引いてなかなか治らない」「風邪だと思っていたが息苦しさが出るようになった」「心筋炎で入院していて退院したが今後のかかりつけを探している」「退院後も心臓リハビリを継続したい」といった方は、うらマイハートクリニックにお気軽にご相談ください。

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参考文献

[1] 日本循環器学会. 2023年改訂版 心筋炎の診断・治療に関するガイドライン. https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2023/03/JCS2023_nagai.pdf

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浦 祐次郎

この記事の監修者:
うらマイハートクリニック院長 
浦 祐次郎

循環器専門医・総合内科専門医・TAVI実施医/指導医・心血管インターベンション治療学会認定医・SHD心エコー図認証医・心臓リハビリテーション指導士

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