心筋梗塞とは?症状・原因・検査・治療を循環器専門医が解説|福岡市早良区
「突然、胸が締め付けられるように痛い」「冷や汗や息苦しさを伴う胸の圧迫感がある」――このような症状は、心筋梗塞のサインかもしれません。突然の強い症状がある場合は、この記事を読み進めるより先に救急要請してください。自分で車を運転して受診しないでください [1]。
心筋梗塞は、心臓に栄養を送る重要な血管である「冠動脈」の血流が、血栓(血の塊)などによって急に悪くなり、心臓の筋肉(心筋)が壊死する病気です。日本循環器学会のJROAD 2024によると、2023年の1年間に全国1,500の施設で82,516例の急性心筋梗塞が診療され、そのうち7,405例が入院中に死亡したと報告されており、極めて緊急性の高い疾患です [1][5][6]。
心筋梗塞の発症前には、約半数の方に前兆となる症状がみられるとされています。数日前から新たな胸部症状が出たり、これまでより頻繁で長時間の強い症状になったりすることがあります。一方で、前兆なく突然発症することもあります。ご自身の危険因子を知り、症状が出たときに適切に行動することが大切です [15]。
本記事では、日本循環器学会の『急性冠症候群ガイドライン』などに基づき、見逃してはいけない症状や前兆、原因となる危険因子、検査や治療、退院後の生活まで、循環器専門医の視点で解説します。
【この記事の要点】
- 心筋梗塞は、心臓の血流が著しく不足し、心筋の一部が壊死する病気です。
- 新たな胸の違和感や、以前より頻繁になったり長く続いたりする胸痛は、放置せず相談したいサインです。
- 突然の強い胸痛、冷や汗を伴う胸の圧迫感、強い息苦しさがある場合は、救急要請が必要です。
- 診断には心電図や血液検査、心エコーなどを用い、緊急時は検査結果を待たず治療を優先します。
この記事を書いた医師
うらマイハートクリニック院長 浦 祐次郎
(循環器専門医・総合内科専門医・TAVI実施医/指導医・心血管インターベンション治療学会認定医・SHD心エコー図認証医・心臓リハビリテーション指導士)
循環器専門医院長 浦 祐次郎から一言▶ 循環器専門医(院長 浦祐次郎)の臨床コメント 実際の診療では、「様子を見ていたら突然強い胸の痛みが出た」と救急搬送される方も少なくありません。数日前から軽い胸の違和感があったというケースも多く、前兆を見逃さないこと、軽い症状のうちに受診することが非常に重要です。
心筋梗塞とは?定義と心臓で起きていること
心筋梗塞を理解するために、まずは心臓の仕組みからご説明します。心臓の周りには、心臓自身に酸素と栄養を供給するための「冠動脈」という血管が王冠のように取り巻いています。心筋梗塞の多くは、冠動脈にできたプラーク(血管内のこぶ)が傷つき、そこに血栓ができて血流が急に悪くなることで起こります [1][6]。
冠動脈の血流が著しく不足すると、その先の心筋に酸素が届かなくなり、心筋の一部が壊死します。狭心症と心筋梗塞の大きな違いは、血流不足による心筋の壊死が起きているかどうかです。血管が完全に詰まっていなくても心筋梗塞は起こります [1][6]。
一度壊死してしまった心筋は、残念ながら二度と元に戻ることはありません。周囲の一時的に動きが低下した心筋は、早く血流を再開できれば機能が改善することがあります。壊死の範囲が広いほど、心不全や危険な不整脈を起こすリスクが高くなるため、早期治療が重要です [1][6]。
心筋梗塞の症状|見逃してはいけない「前兆」から典型的な発作まで
心筋梗塞は「突然死」のイメージが強いですが、実際には発症前に警告サインが出ていることも少なくありません。症状のサインを正しく理解することが、ご自身や大切な人の命を救う第一歩となります。
心筋梗塞の前兆(不安定狭心症)|発症前の警告サイン
心筋梗塞の発症前に、新たな安静時の胸痛や、以前より頻繁・長時間・強くなった胸部症状が現れることがあります。不安定狭心症などの可能性があるため、症状が治まっていても当日中に医療機関へ相談してください。強い症状がある、症状が続く、または繰り返す、冷や汗や息苦しさを伴う場合は、予約を待たず救急要請してください [1]。
循環器専門医院長 浦 祐次郎から一言▶ 循環器専門医(院長 浦祐次郎)の臨床コメント 見逃されやすいポイントですが、「いつもより少し違う感じがするけど、すぐ治るから大丈夫」「まさか自分が心臓の病気にはならないだろう」と考えて受診が遅れる方が多い印象です。
| 症状の種類 | 具体的なサイン |
|---|---|
| 安静時痛の出現 | これまで運動した時だけだった胸の圧迫感が、じっとしている時にも現れるようになった。 |
| 症状の悪化 | 胸痛の頻度が増えた、痛みの持続時間が長くなった(例:5分→15分)、痛みの程度が強くなった。 |
| ニトロが効きにくい | 狭心症の薬であるニトログリセリンを使っても、以前より効きが悪くなった、または効かなくなった。 |
| 労作時の息切れ | 以前は平気だった階段や坂道で、胸の痛みだけでなく強い息切れを感じるようになった。 |
心筋梗塞発作の典型的な症状|こんな症状は救急車を
心筋梗塞では、次のような症状が現れます。ただし、症状の強さには個人差があり、強い胸痛がない場合もあります。突然の強い症状がある場合は、直ちに救急要請してください。
- 胸の痛みや圧迫感:「胸を締め付けられる」「胸が重く押される」と感じる症状。数分以上続く、いったん治まっても繰り返す場合は注意が必要です。「20分たつまで待つ」「ニトログリセリンが効いたから大丈夫」と判断しないでください [1]。
- 放散痛:痛みが胸だけでなく、左肩、左腕の内側、あご、歯、背中、みぞおちなどに広がる。
- 冷や汗、吐き気:脂汗のような冷たい汗がびっしょり出て、強い吐き気や嘔吐を伴うことがある。
- 呼吸困難:心臓のポンプ機能が低下するなどして、強い息苦しさを感じることがある。
- 意識消失:心室細動などの致死的な不整脈が起こり、突然意識を失って倒れることがある。
循環器専門医院長 浦 祐次郎から一言▶ 循環器専門医(院長 浦祐次郎)の臨床コメント 「もう少し早く受診していれば」と振り返られるケースも少なくありません。「そのうち治るだろう」と思っている間に進行するのが心筋梗塞です。痛みが続く場合は、迷わず救急要請してください。
非典型的な症状とサイレント心筋梗塞
特に糖尿病を長年患っている方やご高齢の方では、典型的な胸痛が目立たず、息切れ、吐き気、冷や汗、急な倦怠感などで発症することがあります。一方、「サイレント心筋梗塞」は、明確な発作を自覚しないまま、後の心電図や画像検査で梗塞の跡が見つかる状態を指します [1][6]。
胸痛がなくても、原因不明の吐き気、急に始まった息切れ、著しい倦怠感、食欲不振などが心筋梗塞のサインである可能性があります。突然の強い症状や、冷や汗・息苦しさ・失神を伴う症状が続く場合は、「年のせい」「胃の調子が悪いだけ」と自己判断で様子を見ず、救急車を呼んでください [1]。
心筋梗塞の原因|動脈硬化の進行と危険因子
心筋梗塞の主な原因は、冠動脈の動脈硬化に関連して起こる血流の障害です。動脈硬化では、血管の壁にコレステロールなどが蓄積し、プラーク(粥腫)と呼ばれる盛り上がりができます。
主な原因は動脈硬化とプラークの破綻
心筋梗塞の多くは、プラークが傷つくことをきっかけに起こります。血小板などが集まって血栓ができ、冠動脈の血流が急に悪くなると、心筋がダメージを受けます。もともとの血管の狭さが軽く見える場所でも、プラークの状態によって心筋梗塞が起こることがあります [1][6]。
動脈硬化だけでなく、冠動脈のけいれん、血管の壁が裂ける病気、血栓が流れてきて詰まることなどでも心筋梗塞は起こります。また、重い貧血、低酸素、低血圧、非常に速い脈などによって、心臓への酸素の供給が需要に追いつかなくなることも原因になります。2026年の「第5次心筋梗塞ユニバーサル定義」でも、原因に応じた分類と評価が示されています [6]。
心筋梗塞になりやすい人の特徴と危険因子
高血圧、脂質異常症、糖尿病、喫煙、肥満、運動不足などは、動脈硬化と心筋梗塞の主な危険因子です。年齢、遺伝的な体質、家族歴、慢性腎臓病なども関わるため、生活習慣だけで発症が決まるわけではありません [8][9]。
| 危険因子 | 心筋梗塞との関連 |
|---|---|
| 高血圧 | 血管の壁に常に高い圧力がかかることで、血管内皮が傷つき、動脈硬化が進行する。 |
| 脂質異常症 | 特に悪玉(LDL)コレステロールの高値は、動脈硬化を進める重要な危険因子となる [8][9]。 |
| 糖尿病 | 高血糖の状態が血管の内皮細胞を傷つけ、動脈硬化を著しく促進させる。 |
| 喫煙 | 血管を収縮させ、血管内皮を傷つけ、血栓をできやすくするなど、多方面からリスクを高める最大の危険因子の一つ。 |
| 肥満(特に内臓脂肪型) | 高血圧、脂質異常症、糖尿病を引き起こしやすく、動脈硬化の間接的な原因となる。 |
| 家族歴 | 親や兄弟に若くして(男性55歳未満、女性65歳未満)心筋梗塞や狭心症を発症した人がいる場合、遺伝的な素因も考えられる。 |
| 慢性腎臓病(CKD) | 腎機能の低下や尿蛋白は、心血管病の重要な危険因子となる [2]。 |
危険因子は重なるほど全体のリスクが高くなります。「血圧が高いと言われたまま」「コレステロールが高いけれど症状がないから大丈夫」と考えている方も、まずはご自身の状態を確認しましょう。禁煙や治療の継続など、改善できることから取り組むことが予防につながります。
心臓と腎臓の深い関係「心腎連関」
心臓と腎臓は互いに影響し合っており、この関係を「心腎連関」と呼びます。慢性腎臓病(CKD)は、心筋梗塞などの心血管疾患のリスクを高めます。腎機能の低下や尿蛋白の増加に伴ってリスクも高まるため、心臓だけでなく腎臓の状態も併せて確認することが重要です [2]。
また、心筋梗塞を発症して心機能が低下すると、腎臓への血流が悪化し、腎機能がさらに低下するという悪循環に陥ります。この悪循環を断ち切るためには、心臓と腎臓の両方を専門的な視点で同時に管理することが不可欠です。当院では、循環器専門医である院長(浦 祐次郎)と、腎臓内科医である副院長(浦 雅紀子)が緊密に連携し、この心腎連関に基づいた包括的な診療を行っています。
心筋梗塞の検査・診断|迅速な判断が命を救う
胸痛などから心筋梗塞が疑われる場合は、心電図や血液検査などで速やかに評価します。必要な検査は並行して行い、緊急治療が必要な場合は、採血結果やCTを待たずに救急搬送やカテーテル治療を優先します。すべての検査を順番に終えてから治療するわけではありません [1][4]。
診断のために行う評価
問診・身体診察:症状がいつから始まったか、どのような症状か、危険因子があるかなどを確認します。
心電図検査:ST上昇などの変化を直ちに確認します。初回の心電図に明らかな異常がなくても心筋梗塞を否定できない場合があり、症状に応じて繰り返し調べます [1]。
血液検査:心筋が傷つくと増えるトロポニンを測定します。救急診療では高感度トロポニンが用いられますが、発症直後は初回値が正常でも否定できず、時間を置いて再検することがあります。上昇の原因は心筋梗塞以外にもあるため、症状や心電図などと合わせて判断します [1][6]。
心エコー検査(心臓超音波検査):血流不足などによって動きが低下した部分や、心臓のポンプ機能、合併症の有無を評価します。壁の動きが悪いことだけで、心筋の壊死を断定することはできません。
胸部X線など:心不全による肺のうっ血や、ほかの病気の可能性などを必要に応じて確認します。
心臓カテーテル検査:冠動脈の詰まりや狭まりを確認し、治療方針を判断します。血流を急いで回復させる必要があれば、そのままカテーテル治療へ進みます [1][4]。
主な検査(心電図・血液検査・心エコーなど)
| 検査名 | 何がわかるか | 特徴 |
|---|---|---|
| 心電図検査 | 心筋虚血(酸素不足)や壊死に伴う特徴的な波形変化。心筋梗塞の部位や範囲を推定できる。 | 最も迅速で基本的な検査。STEMIの診断に不可欠。 |
| 血液検査(高感度トロポニン) | 心筋が傷つくと増えるトロポニンを測定し、症状や心電図などと合わせて診断する。 | 発症直後は初回値が正常でも否定できず、時間を置いて再検することがある [1][6]。 |
| 心エコー検査 | 心臓の壁の動き、ポンプ機能(左室駆出率)、弁の状態、合併症の有無をリアルタイムで評価。 | 非侵襲的でベッドサイドでも可能。診断と重症度評価に極めて有用。 |
| 冠動脈CT検査 | 症状が安定している方で、冠動脈の狭さや動脈硬化の程度を評価する。 | 急性心筋梗塞が強く疑われる場面の第一選択ではない [10]。 |
| 心臓カテーテル検査 | 冠動脈の詰まりや狭まりを確認し、治療方針を判断する。 | 診断と同時にカテーテル治療(PCI)へ移行できる。 |
当院では、トロポニンを含む院内血液検査、心電図、心エコーなどを病状に応じて行います。冠動脈CTは、症状が落ち着いており外来評価が適切な方に行う検査です。急性心筋梗塞が疑われる場合は、外来でCTや検査結果を待たず、救急搬送を優先します [1][10]。
心筋梗塞の治療|1分1秒を争う血行再建と再発予防
冠動脈の血流障害による心筋梗塞では、血流をいかに早く回復させるかが、心筋のダメージを抑える鍵になります。原因や心電図、全身状態に応じて治療法と緊急度を判断します [1][4][6]。
循環器専門医院長 浦 祐次郎から一言▶ 循環器専門医(院長 浦祐次郎)の臨床コメント 私は、これまでに九州医療センターや小倉記念病院といった心臓病治療の最前線で、数多くのカテーテル治療を執刀してきました。とにかく、いかに早くカテーテル治療を成功させられるかが非常に重要です。その経験に基づき、緊急時には迅速な判断と適切な高次医療機関への連携を行います。
心筋梗塞の種類|治療の緊急度を分ける分類 (STEMI/NSTEMI)
心筋梗塞は、心電図の変化から、主にST上昇型心筋梗塞(STEMI)と非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)に分類されます。どちらも速やかな評価と治療が必要で、STEMIでは特に迅速な血流の回復が重要です。NSTEMIでも、症状や全身状態によって直ちにカテーテル検査や治療が必要になる場合があります [1][4]。
| 分類 | 正式名称 | 特徴 | 緊急度 |
|---|---|---|---|
| STEMI(ステミ) | ST上昇型心筋梗塞 | 心電図に特徴的なST上昇がみられるタイプ。心筋のダメージが急速に広がる可能性が高い。 | 最緊急。できるだけ早いカテーテル治療が必要 [1][4]。 |
| NSTEMI(エヌステミ) | 非ST上昇型心筋梗塞 | ST上昇はみられないものの、血液検査などで心筋のダメージを認めるタイプ。完全閉塞を伴う場合もある。 | 緊急。症状や全身状態に応じて、直ちに、または早期のカテーテル検査や治療を検討する [1][4]。 |
これらは、不安定狭心症と合わせて「急性冠症候群(ACS)」と総称されます。多くは冠動脈のプラークが傷つき、血栓ができることをきっかけに起こる、一刻を争う病態です [1][6]。
急性期治療:経皮的冠動脈インターベンション(PCI)
冠動脈が詰まった心筋梗塞では、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)というカテーテル治療で血流を回復させます。手首や足の付け根の動脈から細い管を挿入し、詰まった部分を風船(バルーン)で広げ、必要に応じてステントという金属製の網状の筒を留置します [1][4]。
特にST上昇型心筋梗塞では、症状が出てから血流が回復するまでの時間を、できるだけ短くすることが重要です。医療機関での迅速な治療に加え、患者さん自身が症状を放置せず、早く救急要請することが大切です [1][4]。
薬物療法(再発予防の柱)
カテーテル治療で急性期を乗り越えた後も、再発予防のために長期の薬物療法が必要になることが多くあります。薬の種類や期間は、ステントの有無、心臓や腎臓の状態、出血しやすさなどに応じて調整します。特にステント留置後の抗血小板薬は、自己判断で中断せず、変更が必要なときは処方医に相談してください [7]。
| 薬剤クラス | 主な作用・目的 | 代表的な薬剤名 |
|---|---|---|
| 抗血小板薬 | 血栓ができるのを防ぐ。通常は抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)から始め、期間は出血と血栓のリスクに応じて決める [7]。 | アスピリン、クロピドグレル、プラスグレルなど |
| スタチン | 悪玉(LDL)コレステロールを下げ、再発を予防する。必要に応じてほかの脂質を下げる薬を追加する [8]。 | ロスバスタチン、アトルバスタチンなど |
| β遮断薬 | 心拍数や心臓の負担を調整する。心機能低下、心不全、狭心症、不整脈などの状態に応じて使用する [4][13]。 | ビソプロロール、カルベジロールなど |
| アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)/アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB) | 心臓にかかる負担を軽減し、心機能が低下した心臓の構造変化(リモデリング)を抑制する。 | エナラプリル、バルサルタンなど |
| ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA) | 心機能が低下した症例で、心臓の線維化を防ぎ、心不全の進行を抑制する。 | スピロノラクトン、エプレレノンなど |
心筋梗塞の再発予防では、LDL(悪玉)コレステロールを十分に下げることが重要です。日本のガイドラインでは、急性冠症候群などの高リスクの方では70mg/dL未満を目標としています [8]。2026年の米国ガイドラインでは、再発リスクが非常に高い方に55mg/dL未満という、より厳格な目標を推奨しています [11]。実際の目標値や薬の組み合わせは、病状や再発リスクに応じて決めます。
冠動脈バイパス術(CABG)
冠動脈の根元が詰まっている場合や、複数本の血管に複雑な病変がある場合など、カテーテル治療が困難な症例では、冠動脈バイパス術(CABG)という心臓外科手術が選択されることがあります。これは、足や胸の血管を使って、詰まった血管の先に新しい血液の通り道(バイパス)を作成する手術です。
心臓リハビリテーション
「心臓が悪いから、もう運動はできない」と不安になる方もいますが、状態が安定した後は、専門家の指導のもとで適切に体を動かすことが回復を助けます。心臓リハビリテーションでは、運動療法に加え、食事、服薬、禁煙、病気への不安なども含めて支援します。運動能力や生活の質の改善に加え、心筋梗塞や入院のリスク低下が報告されています [3][12][14]。
運動を通じて体力を取り戻し、血圧や血糖、脂質などの管理にも取り組みます。患者さんごとの状態と生活に合わせて進めることで、安心して日常生活や仕事に戻るための支えになります。
当院では、専用の心臓リハビリ器具を備え、スタッフの見守りのもとで運動療法を行います。薬物療法に運動療法を組み合わせ、定期的に体調や体重、血圧などを確認することで、狭心症悪化の変化に早く気づけるよう支援します。
心筋梗塞の後遺症と退院後の生活
後遺症として起こりうる心不全や不整脈
心筋のダメージが大きい場合は、心臓のポンプ機能が低下し、息切れやむくみなどの心不全症状が残ることがあります。不整脈が起きる場合もありますが、すべての方に同じ後遺症が残るわけではありません。退院後も、症状や心臓の働きを定期的に確認します [1][4]。
仕事や日常生活への復帰と今後の見通し
退院後は、入院中の安静などによって体力が落ち、以前と同じ活動でも疲れやすくなることがあります。心臓リハビリテーションを通じて、状態に合った活動量を確認しながら段階的に戻していきます。仕事の再開時期は、心臓の状態や仕事内容によって異なります [3][12]。
「心筋梗塞になると、あと何年生きられるのか」と不安に感じる方もいますが、余命を一律に示すことはできません。心筋のダメージ、治療までの時間、心臓の働き、合併症などで見通しは異なります。早い治療と退院後の服薬、禁煙、心臓リハビリテーションなどにより、再発を防ぎながら生活を続けることが大切です [1][4]。
心筋梗塞の予防と再発防止|日常生活でできること
心筋梗塞の予防は、発症前の「一次予防」と、発症後の「二次予防」に分けられます。どちらも基本は、動脈硬化の原因となる危険因子を徹底的に管理することです。
一次予防(発症前の予防)
まだ心筋梗塞を起こしていない方が対象です。症状がなくても危険因子を確認し、禁煙や生活習慣の改善、必要な治療に取り組むことが大切です。
- 禁煙:喫煙は心筋梗塞の主要な危険因子です。禁煙は非常に効果的な予防策です [9]。
- 食事管理:減塩を心がけ、特に高血圧のある方では食塩1日6g未満を目指します。肉の脂身やバターなどに多い飽和脂肪酸の摂りすぎを控え、魚、大豆製品、野菜などをバランスよく摂りましょう。食事の内容は腎機能などにも応じて調整します [8][9]。
- 適度な運動:体調に問題のない方では、ウォーキングなどの中強度の有酸素運動を週に150分程度行うことが目安です。胸の症状がある方や心筋梗塞後の方は、自己判断で始めず、医師に相談してください [3][9]。
- 危険因子の管理:健康診断などで高血圧、脂質異常症、糖尿病を指摘されたら、放置せずに必ず医療機関を受診し、適切な治療を受けることが重要です。
二次予防(再発予防)
一度心筋梗塞を経験された方は、再発リスクが非常に高い状態にあります。一次予防よりもさらに厳格な管理が求められます。
- 確実な服薬:処方された薬を続け、気になる副作用や飲み忘れがあるときは医師や薬剤師に相談しましょう。自己判断で中断しないでください。
- リスク管理:LDLコレステロールは、病状や再発リスクに応じて70mg/dL未満や、より厳格な55mg/dL未満を目指します。血圧の目標も、年齢、腎機能、糖尿病、ふらつきなどを踏まえて個別に決めます [4][8][11]。
- 定期通院:症状がなくても、定期的に診察と検査を受け、体の状態をチェックし続けることが不可欠です。
このような症状があればご相談ください
受診の目安と救急要請が必要な場合
新たな安静時胸痛や、頻度や強さ、持続時間が増した胸部症状は、治まっていても当日中に医療機関へ相談してください。症状が続く、または繰り返す、強い症状がある、冷や汗・息苦しさ・失神を伴う場合は、外来予約を待たず救急要請してください [1]。
- 階段や坂道を上ると胸が圧迫される、苦しくなる
- これまで大丈夫だった労作で、息切れや動悸がするようになった
- 安静時に突然、胸の違和感や痛みが出現した
- 胸の症状の頻度が増えたり、持続時間が長くなったりしている
- 健康診断で心電図異常やコレステロール、血圧の高値を指摘された
- 親や兄弟に心筋梗塞になった人がいて、自分も心配だ
よくある質問(FAQ)
痛みが改善することはありますが、効いたかどうかだけで狭心症と心筋梗塞を区別することはできません。処方されている方は指示どおり使用しつつ、これまでにない症状、強い症状、数分以上続く・繰り返す症状、冷や汗や息苦しさを伴う場合は、効果を待たず救急要請してください。他人のニトログリセリンは使用しないでください [1]。
冠動脈ステントは通常、体内に留置したままで、定期的な交換は必要ありません。再狭窄やステント内の血栓を防ぐため、抗血小板薬と危険因子の管理が重要です。2種類の抗血小板薬を続ける期間は一律ではないため、自己判断で中止せず、手術や抜歯の前も処方医に相談してください [7]。
突然の強い胸痛や圧迫感、胸の症状に冷や汗や息苦しさ、吐き気を伴う場合は、直ちに救急要請してください。強い痛みでなくても、数分以上続く、繰り返す場合は注意が必要です。胸痛がなくても、突然の強い息苦しさや意識を失う症状は救急対応が必要です。自分で車を運転して受診しないでください [1]。
福岡市で心筋梗塞の予防・再発防止なら|うらマイハートクリニックの特徴
うらマイハートクリニック(福岡市早良区藤崎・原)は、内科・循環器内科・腎臓内科・呼吸器内科を診療し、心臓リハビリテーションにも対応するクリニックです。
院長(浦 祐次郎)は、循環器専門医・総合内科専門医・心血管インターベンション治療学会認定医・TAVI実施医/指導医・SHD心エコー図認証医・心臓リハビリテーション指導士として、九州医療センターで13年間、小倉記念病院で1年半にわたり、重症心疾患の診療に従事してきました。副院長の浦 雅紀子は腎臓内科医として、福岡山王病院で約5年間、九州医療センターで6年間にわたり、心腎連関を踏まえた包括的な腎臓病診療に従事してきました。
現在はうらマイハートクリニックにて内科医2名体制で円滑な診療に努めています。
- 院内での迅速な検査体制:BNPなど含む当日結果のわかる多様な血液検査、心臓を含む各種エコー検査、総合病院レベルの64列CT(冠動脈CT含む)に対応。
- 治療後のサポート:心臓リハビリ施設「ReHeart Gym」で専門スタッフが体力回復・再発予防を支援。
- 通いやすい診療体制:診療開始は8時30分から、水曜は20時まで診療。駐車場11台完備。発熱症状のある方の専用入口あり。
福岡市早良区を中心に、胸の症状の相談、生活習慣病の管理、心筋梗塞後の再発予防や心臓リハビリテーションなら福岡市早良区のうらマイハートクリニックまでお気軽にご相談ください。現在、強い胸痛や冷や汗、息苦しさなどがある場合は、当院の予約を待たず救急要請してください。
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参考文献
[1] 日本循環器学会ほか. 急性冠症候群ガイドライン(2018年改訂版、2022年更新).
[2] 日本腎臓学会. CKD診療ガイド2024 第2章 高血圧・CVD(心腎連関).
[3] 日本循環器学会/日本心臓リハビリテーション学会. 2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン.
[4] Rao SV, et al. 2025 ACC/AHA/ACEP/NAEMSP/SCAI Guideline for the Management of Patients With Acute Coronary Syndromes. Circulation. 2025;151:e771-e862. doi:10.1161/CIR.0000000000001309.
[5] 日本循環器学会. 循環器疾患診療実態調査報告書 2024年(JROAD 2024).
[7] 日本循環器学会. 2020年JCSガイドライン フォーカスアップデート版 冠動脈疾患患者における抗血栓療法.
[8] 日本動脈硬化学会. 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版.
[9] 日本循環器学会. 冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドライン(2023年改訂版).