心筋症とは?症状・原因・種類・検査・治療を循環器専門医が解説|福岡市早良区
「「最近、体を動かすと息切れがする」「なんだか疲れやすくなった」——。年齢や日々の疲れのせいだと見過ごしがちなその症状、もしかしたら心臓からの重要なサインかもしれません。その背景には、心臓の筋肉そのものに異常が生じる「心筋症」という病気が隠れている可能性があります。
心筋症は、心不全や不整脈の原因となる病気です。症状がなく、健診や家族の検査で見つかることもあります。本記事では、心筋症の症状から検査・治療、日常生活の注意点から、臨床経験をもとに実際の診療で重視しているポイントまで循環器専門医が解説します。
この記事の要点
- 心筋症は、心臓の筋肉の形や働きに異常が起こり、心不全や不整脈の原因となる病気です。
- 「以前より階段で息切れする」「疲れやすい」「動悸がする」は相談したいサインで、症状がなくても見つかることがあります。
- 安静時の強い息苦しさ、意識を失う、強い胸痛が続く場合は、救急要請が必要です。
- 診断には心電図・心エコー・血液検査などを組み合わせ、種類や原因に応じて治療や家族の検査を検討します。
この記事を書いた医師
うらマイハートクリニック院長 浦 祐次郎
(循環器専門医・総合内科専門医・TAVI実施医/指導医・心血管インターベンション治療学会認定医・SHD心エコー図認証医・心臓リハビリテーション指導士)
循環器専門医院長 浦 祐次郎から一言▶ 循環器専門医(院長 浦祐次郎)の臨床コメント 「階段で息が切れるのは、年齢のせいだと思っていました」「健診で心臓の異常を指摘されましたが、特に困っていません」。心筋症を調べるきっかけは、日常の小さな変化や、症状のない時期の健診であることもあります。気づかないうちに歩く速度を落としたり、坂道や階段を避けたりしていると、息切れを自覚しにくくなります。診療では、「息苦しくありませんか」だけでなく、「以前と同じように歩けていますか」「外出する機会が減っていませんか」と、普段の生活の変化も伺うようにしています。
心筋症とは?心臓の筋肉に異常が起きる病気
心筋症とは、心臓の筋肉(心筋)に構造的または機能的な異常が起こる病気の総称です。その異常を説明できるほどの冠動脈疾患、高血圧、弁膜症、先天性心疾患などがない場合に診断されます[1][2]。心筋症では、心臓の収縮する力が低下する場合だけでなく、心筋が厚くなる、心臓が広がりにくくなる、不整脈が起こるなど、さまざまな異常が現れます。その結果、息切れ、むくみ、動悸、失神などの症状が起こることがあります。
心不全・心筋梗塞との違い
心筋症は心臓の筋肉に異常が起こる病気です。一方、心不全は、心臓の働きが低下して息切れやむくみなどが現れる状態を指します。心筋症は心不全の原因の一つですが、心筋症があっても心不全を起こしていない方もいます[3][1]。
心筋梗塞は、主に心臓の筋肉へ血液を送る冠動脈が詰まり、心筋が傷つく病気です。心筋症とは原因や治療が異なるため、必要に応じて冠動脈CTなどで区別します。両方の病気を伴う場合もあります[1][2]。
心筋症の症状|気づきにくい初期サインから危険な兆候まで
心筋症は、症状がなく健診や家族の検査をきっかけに見つかる場合もあれば、息切れや動悸、失神などをきっかけに見つかる場合もあります。症状の出方や進み方は、心筋症の種類や重症度によって異なります[1][2]。「以前より坂道を登るのがきつい」「疲れるので外出が減った」といった変化にも目を向けてみてください。
気づきにくい症状
息切れや疲れやすさは、加齢やほかの病気でも起こります。以下のような症状が続く場合は、原因を調べるために受診を検討してください。
- 労作時の息切れ: 以前は平気だった階段や坂道で息が上がる。
- 疲れやすさ・倦怠感: 何をするにも億劫で、すぐに疲れてしまう。
- 動悸: ドキドキと心臓の拍動を強く感じる。
症状が軽くても、以前と比べた変化が続く場合や、健診で心電図異常などを指摘された場合はご相談ください。
心不全を伴うと現れやすい症状
心臓が血液を送り出しにくくなったり、十分に広がって血液を受け入れにくくなったりすると、肺や全身の静脈に血液が滞り、息切れやむくみが現れることがあります[3][4]。
- 安静時の息切れ: じっとしていても息苦しい。
- 足や顔のむくみ(浮腫): 夕方になると靴がきつくなる、すねを押すとへこみが戻らない。
- 夜間の咳・呼吸困難: 横になると咳が出たり、息苦しくて目が覚める(夜間発作性呼吸困難)。
- 体重の急な増加:数日で2kg前後増えた場合は、体内に余分な水分がたまっている可能性があります。
救急車を呼ぶべき症状
突然意識を失う、安静にしていても強く息苦しい、強い胸痛が続く、動悸に強いめまいや冷や汗を伴う場合は、命に関わる不整脈や急性心不全などの可能性があります。119番で救急車を呼び、自分で運転して受診しないでください。
- 呼びかけに反応せず、普段どおりの呼吸がない場合は、周囲の方が119番通報し、通信指令員の指示に従って胸骨圧迫とAEDの使用を行ってください。
心筋症の原因と遺伝
心筋症の原因は一つではありません。遺伝的な要因、炎症、アルコールや薬剤による心筋障害などが関わる場合があり、原因がはっきりしないこともあります。原因を調べることは、治療方法や家族の検査を考えるうえで重要です[1][2]。
主な原因
- 遺伝的要因:肥大型心筋症や拡張型心筋症の一部には、遺伝的な要因が関係しています。ご家族に心筋症と診断された方や、若くして突然亡くなった方がいる場合は、症状がなくても医師に相談してください。必要に応じて、ご家族の心電図・心エコー検査や、遺伝カウンセリング、遺伝学的検査を検討します[1][2][5]。
- ウイルス感染・免疫異常:ウイルス感染などによって心筋に炎症が起こる「心筋炎」が、拡張型心筋症のきっかけになることがあります。また、免疫の異常によって心筋が傷つく場合もあります。
アルコール・薬剤:長期間の多量飲酒や、一部の抗がん薬などが心筋に障害を起こす場合があります。飲酒量や使用している薬を医師に伝えてください。治療薬は自己判断で中止しないでください[1][2]。
妊娠・出産との関連:妊娠の終わり頃から出産後に、心臓の収縮力が低下する周産期心筋症が起こることがあります。息切れやむくみを妊娠・産後の変化だけと考えず、強い症状や悪化があれば早めに相談してください[1][2]。
原因を特定できる心筋症|原因に応じた治療が可能
心筋症のなかには、遺伝子変異、異常なタンパク質の沈着、炎症、代謝異常など、原因を特定できるものがあります。原因に応じた治療によって病気の進行を抑えたり、心機能の改善が期待できたりするため、正確な診断が重要です[1][6]。
原因に応じた治療を検討する主な病気には、以下のものがあります。
- 心アミロイドーシス:異常なタンパク質(アミロイド)が心筋にたまり、心臓が硬くなる病気です。特に高齢者の心不全や、原因がはっきりしない心肥大の背景に隠れていることがあります。トランスサイレチン型心アミロイドーシス(ATTR-CM)では、タファミジスやアコラミジスなど、病気の進行を抑える薬が治療の選択肢となります。アミロイドの種類によって治療が異なるため、病型を正確に調べることが重要です[1][7][8][9]。
- 心臓サルコイドーシス:全身に炎症のかたまりができるサルコイドーシスが心臓に及んだ状態です。不整脈、心臓の電気信号が伝わりにくくなる伝導障害、心機能低下などを起こすことがあります。病気の活動性などを確認し、ステロイドを中心とした免疫を抑える治療を検討します[1][10]。
- ファブリー病:遺伝性の代謝異常症で、心筋が厚くなるため肥大型心筋症と見分けにくいことがあります。酵素補充療法など、原因に応じた治療があるため、正確な診断が重要です[1][6]。
当院では、心エコー検査や血液検査、心臓MRI(連携施設)などを活用し、これらの二次性心筋症を見逃さない診療を心がけています。「原因がわかれば治療できる心筋症」を一つでも多く拾い上げることが、循環器専門医としての使命と考えています。
心筋症の種類|見た目(表現型)による分類
心筋症は、まず心筋の形や働きの特徴(表現型)から、主に5つのタイプに分類します。そのうえで、遺伝性かどうか、炎症や代謝異常などの原因がないかを調べます[1]。
以前は、原因不明の「特発性心筋症」と、ほかの病気に伴う「二次性心筋症」に大きく分けられていました。現在は、心臓の状態を表現型で分類したうえで、遺伝子変異、炎症、代謝異常、異常なタンパク質の沈着など、背景にある原因を詳しく調べる考え方が重視されています[1]。
2023年欧州心臓病学会(ESC)ガイドラインでは、心筋症を心筋の形や働きに基づいて、主に以下の5つのタイプに分類しています[1]。
| 種類(略語) | 心筋の主な変化 | 心臓への影響 | 主な注意点 |
|---|---|---|---|
| 肥大型心筋症(HCM) | 心筋が厚くなる | 心室が広がりにくくなり、血液を取り込みにくくなる | 閉塞、心不全、不整脈、失神など |
| 拡張型心筋症(DCM) | 主に左心室が拡大し、収縮力が低下する | 全身へ十分な血液を送り出しにくくなる | 心不全、不整脈など |
| 非拡張型左室心筋症(NDLVC) | 左心室の拡大を伴わず、非虚血性の傷あとや脂肪への置き換わり、または収縮力低下がみられる | 収縮力の低下や電気的な異常が起こる | 心不全、不整脈など |
| 不整脈原性右室心筋症(ARVC) | 主に右心室の心筋が線維組織や脂肪組織に置き換わる | 右心室の機能低下や電気的な異常が起こる | 心室性不整脈、失神など |
| 拘束型心筋症(RCM) | 心筋が硬くなり、心室が広がりにくくなる | 心臓に血液を取り込みにくくなる | 心不全、むくみなど |
拡張型心筋症(DCM)では、主に左心室が拡大し、心筋の収縮する力が低下します。その結果、左室駆出率(LVEF:左心室にたまった血液のうち、1回の収縮で送り出される割合)が低下し、心不全を起こすことがあります。
肥大型心筋症(HCM)では、心筋が厚くなり、心臓が十分に広がりにくくなることがあります。厚くなった心筋によって心臓の出口が狭くなる「閉塞性肥大型心筋症」では、息切れや胸痛、失神などを起こすことがあります。また、一部の患者さんでは重い不整脈や突然死のリスクがあるため、定期的な評価が重要です。
その他の主な心筋症
- 非拡張型左室心筋症(NDLVC):左心室の拡大を伴わず、冠動脈疾患では説明できない心筋の傷あとや脂肪への置き換わり、または心筋の収縮力低下がみられる心筋症です。不整脈を起こすこともあります[1]。
- 不整脈原性右室心筋症(ARVC):主に右心室の心筋が線維組織や脂肪組織に置き換わり、重い不整脈を起こすことがある病気です。
- 拘束型心筋症(RCM):心筋が硬くなり、心室が十分に広がれないため、心臓に血液を取り込みにくくなる病気です。
循環器専門医院長 浦 祐次郎から一言▶ 循環器専門医(院長 浦祐次郎)の臨床コメント 「心筋症」と聞くと、不安になると思います。しかし、病気の種類や原因によって、経過も治療方法も異なります。まずは検査で今の心臓の状態を確かめ、「どんな治療が必要か」「仕事や運動をどこまで続けられるか」を一緒に整理していきましょう。
心筋症の検査・診断|心エコー検査が鍵
心筋症が疑われる場合、問診や身体診察に加え、複数の検査を組み合わせて診断を確定し、重症度や治療方針を決定します。
診断の流れ
- 問診・身体診察:症状、これまでの病気、ご家族の病歴などを伺い、心雑音やむくみの有無を確認します。
- 基本検査:胸部X線検査や心電図検査で、心臓の大きさや不整脈などを調べます。
- 血液検査:B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)などを測定し、心臓にかかっている負担を評価します。
- 心エコー検査:心筋の厚さ、心室の大きさ、心臓の動き、弁の状態などを確認します。
- 必要に応じた詳しい検査:冠動脈CT、24時間心電図検査(ホルター心電図)、心臓磁気共鳴画像検査(心臓MRI)などを行い、原因や重症度を詳しく調べます。遺伝性が疑われる場合は、遺伝カウンセリングや遺伝学的検査を検討します[1][2]。
主な検査
| 検査名 | 何がわかるか | 特徴 |
|---|---|---|
| 胸部X線検査 | 心臓の大きさ、肺に水分がたまっていないか | 心不全の状態を確認する基本的な検査です。 |
| 心電図検査 | 心肥大、心筋障害、不整脈の手がかり | 心筋症に特徴的な変化がみられることがあります。 |
| B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)/N末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP) | 心臓にかかっている負担の程度 | 症状やほかの検査結果と合わせて、心不全の診断や経過観察に用います。 |
| 心エコー検査 | 心筋の厚さ、心室の大きさ、壁の動き、左室駆出率(LVEF)、弁の状態 | 心筋症の診断の中心となる検査の一つです。被ばくがなく、繰り返し行えます。 |
| 冠動脈CT検査 | 冠動脈の狭窄や閉塞の有無 | 心筋障害に冠動脈疾患が関係していないかを調べます。 |
| 24時間心電図検査(ホルター心電図) | 日常生活中の不整脈 | 動悸や失神の原因となる不整脈がないかを調べます。 |
| 心臓磁気共鳴画像検査(心臓MRI) | 心筋の形、動き、傷あと、炎症など | 心筋症の種類や原因、重い不整脈のリスクを詳しく調べる際に役立ちます。 |
| 遺伝カウンセリング・遺伝学的検査 | 心筋症に関係する遺伝子変異の有無 | 病型や家族歴に応じて、専門医療機関で検討します。 |
当院の検査体制 心臓に負担がかかると血液中に増えるB型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)を院内で測定できます。BNPは心不全の診断や経過観察に役立ちますが、年齢、腎機能、心房細動、肥満などの影響を受けるため、症状や診察所見、心電図、画像検査などと合わせて判断します[3][4]。
当院の冠動脈CT 当院では64列マルチスライスCTを導入しており、心筋症の原因を調べる際に、冠動脈疾患が関係していないかを院内で評価できます。検査が適しているかどうかは、症状や腎機能などを確認したうえで判断します。
心筋症の治療|進行を抑え、症状を和らげる
心筋症の多くは長期的な管理が必要で、完全に治すことが難しい場合もあります。一方、原因に応じた治療によって改善したり、病気の進行を抑えたりできる心筋症もあります。治療では、心不全の症状を和らげ、病気の進行や重い不整脈を防ぎ、生活の質(QOL)を保つことを目指します[1][2]。
実際の診療では、心筋症と診断されるまでに「ただの疲れだと思っていた」という方が多く、早期発見の難しさを日々感じています。
薬物療法
拡張型心筋症などによって、左室駆出率が低下した心不全(HFrEF)を合併している場合には、心臓を保護し、心不全による入院や死亡のリスクを減らすため、複数の薬を病状に応じて組み合わせます[3][4]。
| 薬の種類 | 代表的な薬 | 主な働き |
|---|---|---|
| ベータ遮断薬 | ビソプロロール、カルベジロール | 心拍数や心臓の過剰な働きを抑え、心臓を保護します。 |
| アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)/アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)/アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB) | サクビトリルバルサルタン、エナラプリル、カンデサルタンなど | 血管を広げるなどして心臓の負担を軽くします。病状に応じていずれかを使用します。 |
| ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA) | スピロノラクトン、エプレレノン | 体内に塩分や水分がたまるのを抑え、心臓を保護します。 |
| ナトリウム・グルコース共輸送体2阻害薬(SGLT2阻害薬) | ダパグリフロジン、エンパグリフロジン | 心不全による入院などのリスクを減らします。糖尿病がない方にも使用することがあります。 |
HFrEFでは、ベータ遮断薬、レニン・アンジオテンシン系に作用する薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬、ナトリウム・グルコース共輸送体2阻害薬の4種類が治療の柱となります。むくみや息切れがある場合には、余分な水分を排出する利尿薬なども使用します[3][4]。
症状のある閉塞性肥大型心筋症で、従来の薬物療法だけでは十分な効果が得られない場合には、心筋ミオシン阻害薬のマバカムテン(商品名:カムザイオス®)が選択肢となります。症状や心臓の出口の狭さを改善し、一部の患者さんでは手術やカテーテル治療の必要性を減らせる可能性があります。心臓の収縮力が下がりすぎて心不全を起こすことがあるため、定期的な心エコー検査で確認しながら使用します。他の薬やサプリメントとの飲み合わせにも注意が必要です[5][11]。
薬以外の治療(医療機器・カテーテル治療・手術)
薬物療法だけでは不十分な場合や、突然死のリスクが高い場合には、以下のような非薬物療法が検討されます。
- 植込み型除細動器(ICD):命に関わる心室頻拍や心室細動が起きたときに、自動的に電気治療を行う機器です。突然死のリスクが高いと判断された患者さんで検討します。
- 心臓再同期療法(CRT):心臓の収縮するタイミングにずれがある一部の心不全患者さんに対して、心臓の動きを整え、ポンプ機能の改善を目指す治療です。
- 中隔縮小治療:閉塞性肥大型心筋症(HOCM)で症状が強く、薬物療法だけでは十分に改善しない場合には、外科的に厚い心筋を切除する治療や、カテーテルを使う経皮的中隔心筋焼灼術(PTSMA)を検討します。どちらが適しているかは、専門施設で病状を詳しく評価して判断します[5]。
心臓リハビリテーション
心筋症があるからといって、すべての患者さんが安静にする必要はありません。状態が安定した心不全では、一人ひとりに合わせた運動療法によって、体力や生活の質(QOL)の改善が期待できます。ただし、心筋症の種類や不整脈、失神の有無などによって適切な運動量は異なります[3][4][12]。
心臓リハビリテーションでは、検査結果や体力に応じて安全な運動強度を設定します。必要に応じて医師、看護師、理学療法士などが連携し、運動療法だけでなく、食事、服薬、日常生活についても支援します。
当院の心臓リハビリテーション 当院では、専用の運動機器を備え、心電図や血圧を確認しながら運動療法を行います。心臓の状態と体力に合わせて運動内容を調整し、無理なく続けられるよう支援します。
心筋症の悪化を防ぐために日常生活で気をつけること
心筋症と診断されたら、病気と上手く付き合い、進行を遅らせるために、日々の自己管理が非常に重要になります。
自己管理の4つの柱
- 塩分管理:心不全やむくみがある方では、塩分を取り過ぎると体内に水分がたまり、心臓への負担が増えます。食塩6g未満/日は一つの目安ですが、必要な制限は病状によって異なります。主治医の指示に沿って調整しましょう[3][4]。
- 体重管理:毎日できるだけ同じ時間に体重を測ると、心不全の悪化を早く見つけやすくなります。数日で2kg前後増えた場合は、体内に余分な水分がたまっている可能性があるため、主治医に相談してください。患者さんごとに受診の目安が決められている場合は、その指示を優先してください。
- 服薬の継続:症状や心臓の働きが改善しても、治療を中止すると再び悪化することがあります。特に拡張型心筋症では、改善後の治療中止による再悪化が報告されています。薬を続ける必要性は検査結果や経過から判断するため、自己判断で中止せず、主治医に相談してください[13]。
- 感染症予防: インフルエンザや肺炎などの感染症は、心不全を急激に悪化させる大きな引き金となります。予防接種を積極的に受けるとともに、日頃からの手洗いやうがいを徹底し、体調管理に努めましょう。
心臓と腎臓の深い関係「心腎連関」
心筋症によって心機能が低下すると、心不全の状態となり、全身の臓器に影響が及びます。なかでも特に重要なのが、「心腎連関(しんじんれんかん)」という概念です。「腎臓が悪いと心臓も悪くなり、心臓が悪いと腎臓も悪くなる」——これは、二つの臓器の密接な関係性を表す言葉です。
心不全になると、腎臓への血流低下やうっ血によって腎機能が悪化することがあります。反対に、慢性腎臓病(CKD)が進行すると、余分な水分や塩分を排出しにくくなり、心臓への負担が増えて心不全が悪化することがあります。このように心臓と腎臓は互いに影響するため、両方の状態を確認しながら治療することが大切です[3][4][14]。
併存する高血圧や糖尿病などの管理
高血圧や糖尿病、脂質異常症は、心臓や血管に負担をかけ、心不全の原因・増悪因子となります。心筋症と併存する場合も、血圧、血糖、コレステロールを適切に管理することが大切です。ただし、高血圧や冠動脈疾患だけで説明できる心筋の異常は、冒頭で説明した心筋症とは区別して評価します[3][4][1][14]。
定期通院の重要性
心筋症は長期的な管理が必要な病気です。症状が安定していても定期的に受診し、自覚症状や体重の変化を確認します。必要に応じてB型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)や心エコー検査などを行い、薬や生活上の注意点を見直します。体調がよいと感じても自己判断で通院や服薬を中断しないことが大切です。
循環器専門医院長 浦 祐次郎から一言▶ 循環器専門医(院長 浦祐次郎)の臨床コメント 九州医療センターや小倉記念病院において、心筋症を含む重症心疾患の診療に携わってきました。これらの経験は、診断や治療方針の決定に活かされています。
このような症状があればご相談ください
受診の目安|早めの相談が大切なケース
以下のような症状や状態に心当たりがある方は、心筋症の可能性を含め、循環器専門医への相談をお勧めします。
- 階段や坂道で以前より息切れがひどくなった
- 疲れやすくなった、体がだるい
- 動悸やめまい、失神したことがある
- 足のすねを押すとへこみが戻らない(むくみ)
- ご家族に心臓病の方、若くして突然亡くなった方がいる
- 健康診断で心電図異常や心拡大を指摘された
「こんな症状で受診していいのかな」と迷われる方もいらっしゃいますが、早期発見・早期治療こそが予後を大きく左右します。どんな些細なことでも、お気軽にご相談ください。
よくある質問(FAQ)
A
心筋症の種類や原因によって異なります。治療によって心臓の働きや症状が改善する場合もありますが、改善したことが、そのまま「治った」という意味になるとは限りません。特に拡張型心筋症では、心機能が改善した後も、薬をやめることで再び悪化する場合があります。薬を続ける必要性は検査結果や経過から判断するため、自己判断で中止せず、主治医と相談してください[13]。
A
心電図や胸に機器を当てる通常の心エコー検査は、一般に強い痛みがなく、外来で受けられます。血液検査では採血時に針を刺す痛みがあります。心臓MRIや冠動脈CTも外来で行える場合がありますが、造影剤の使用や腎機能などを確認して実施します。心筋の一部を採取する心筋生検など、詳しい検査には入院が必要になることがあります。
A
安静にしていても強く息苦しい、強い胸痛が続く、突然意識を失う、動悸に強いめまいや冷や汗を伴う場合は、119番で救急車を呼んでください。自分で車を運転して受診しないでください。呼びかけに反応せず、普段どおりの呼吸がない場合は、周囲の方が119番通報し、通信指令員の指示に従って胸骨圧迫とAEDの使用を行ってください。
福岡市で心筋症の診療なら|うらマイハートクリニックの特徴
うらマイハートクリニック(福岡市早良区藤崎・原)は、内科・循環器内科・腎臓内科・呼吸器内科を診療し、心臓リハビリテーションにも対応するクリニックです。
院長(浦 祐次郎)は、循環器専門医・総合内科専門医・心血管インターベンション治療学会認定医・TAVI実施医/指導医・SHD心エコー図認証医・心臓リハビリテーション指導士として、九州医療センターで13年間、小倉記念病院で1年半にわたり、重症心疾患の診療に従事してきました。副院長の浦 雅紀子は腎臓内科医として、福岡山王病院で約5年間、九州医療センターで6年間にわたり、心腎連関を踏まえた包括的な腎臓病診療に従事してきました。
現在はうらマイハートクリニックにて内科医2名体制で円滑な診療に努めています。
- 院内での迅速な検査体制:BNPなど含む当日結果のわかる多様な血液検査、心臓を含む各種エコー検査、総合病院レベルの64列CT(冠動脈CT含む)に対応。
- 治療後のサポート:心臓リハビリ施設「ReHeart Gym」で専門スタッフが体力回復・再発予防を支援。
- 通いやすい診療体制:診療開始は8時30分から、水曜は20時まで診療。駐車場11台完備。発熱症状のある方の専用入口あり。
心筋症の多くは長期的な管理が必要ですが、病気の種類と現在の状態を把握し、治療を続けることが大切です。福岡市早良区、西区、城南区、中央区などにお住まいで、息切れやむくみ、動悸など、心臓に関するご不安をお持ちの方は、うらマイハートクリニックにお気軽にご相談ください。
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当院の専門外来では最適な治療プランをご提案しております。
参考文献
[6] 北岡裕章. 二次性心筋症の診断と治療の進歩. 日本内科学会雑誌. 2024;113(9):1743-1747. doi:10.2169/naika.113.1743.