心アミロイドーシスとは?症状・原因・検査・最新治療を循環器専門医が解説|福岡市早良区
「息切れがする」「足がむくむ」といった心不全の症状に加えて、「手がしびれる(手根管症候群)」「腰が痛い(脊柱管狭窄症)」といった整形外科的な症状がある方は、単なる「年のせい」ではないかもしれません。近年、高齢者の心不全の隠れた原因として急速に注目を集めているのが「心アミロイドーシス」です。
診断技術の進歩により、高齢者の心不全の原因として見つかることが増えてきました。さらに、新しい治療薬の登場により、病気の進行を抑える治療の選択肢も広がっています。早期に発見し、病型と病状に合った治療につなげることが大切です[1][6][7]。
本記事では、循環器専門医の立場から、心アミロイドーシスの症状や原因、病気に気づく手掛かりとなるサイン、検査と治療法について、国内外の診療ガイドラインや最新の研究に基づき解説します。
【この記事の要点】
- 心アミロイドーシスは、異常なタンパク質が心臓にたまり、息切れ・むくみ・疲れやすさなどを引き起こす病気です。
- 「手根管症候群の手術歴があり、最近息切れする」「心臓の壁が厚いといわれた」は相談したいサインです。
- 安静時の強い息苦しさ、強い胸の痛み、意識を失うなどの症状がある場合は、救急要請が必要です。
- 診断には心エコー、血液・尿検査、心臓のシンチグラフィなどを組み合わせ、病気の型に応じた治療を行います。
この記事を書いた医師
うらマイハートクリニック院長 浦 祐次郎
(循環器専門医・総合内科専門医・TAVI実施医/指導医・心血管インターベンション治療学会認定医・SHD心エコー図認証医・心臓リハビリテーション指導士)
循環器専門医院長 浦 祐次郎から一言▶ 循環器専門医(院長 浦祐次郎)の臨床コメント 手や足のしびれなどの整形外科の病気から診断に近づける場合があります。「しびれと息切れは、別々のことだと思っていた」と感じる方もいるかもしれません。息切れやむくみがある場合は、整形外科の病気も診察時にお伝えください。心臓以外の症状が、原因を調べる手がかりになることがあり、以下で詳しく説明します。
心アミロイドーシスとは?|心臓が硬くなる病気
心アミロイドーシスとは、「アミロイド」と呼ばれる異常なタンパク質が心臓の筋肉(心筋)の隙間に沈着し、心臓の壁が分厚く、そして硬くなってしまう病気です。
正常な心臓は、しなやかに膨らんだり縮んだりして全身に血液を送り出しています。しかし、アミロイドが沈着して心臓が硬くなると、十分に膨らんで血液を溜め込むことができなくなります(拡張不全)。その結果、全身に十分な血液を送り出せず、肺や全身に血液が滞る「うっ血」が起こり、心不全を引き起こします[1]。
心アミロイドーシスの症状|息切れ・むくみ・手のしびれ
1. 心臓の症状
- 息切れ・疲れやすさ:階段や坂道で息が切れる、以前より疲れやすいなどの症状がみられます。
- 足のむくみ:足首やすねがむくみ、体重が増えることがあります。
- 動悸・失神:不整脈などにより、動悸や一時的に意識を失う症状が起こることがあります[1][2]。
心アミロイドーシスでは、心臓以外の臓器にもアミロイドが沈着することがあります。特にトランスサイレチン型(ATTR型)では、手根管症候群などが心臓の症状より数年前からみられ、病気に気づく手掛かりとなります[1][2]。
ただし、手のしびれや腰痛はほかの病気でも起こります。国内外の診療指針では、症状と心臓の検査所見を合わせてこの病気を疑い、必要な精密検査につなげることが大切とされています[1][3][6]。
2. 整形外科的な症状(心臓より先に現れることがあるサイン)
アミロイドは靭帯や腱にも沈着することがあり、以下の症状が診断の手掛かりになります[1][2]。
- 両側手根管症候群:親指から薬指の親指側にかけて、しびれや痛みが出ます。特に両手に症状がある場合や、手術を受けたことがある場合は、診察時に伝えてください。
- 脊柱管狭窄症:歩くと腰から足にかけて痛みやしびれが出て、休むと楽になることがあります。手術歴も診断の手掛かりになります。
- 上腕二頭筋長頭腱断裂(ポパイ・サイン):大きなけがなどがなくても、腕の筋肉の腱が切れ、力こぶの形が変わることがあります。
- ばね指(弾発指):指の曲げ伸ばしが引っかかる。
3. 神経・自律神経の症状
- 起立性低血圧:立ち上がった時に血圧が急激に下がり、立ちくらみやめまいがする。
- 末梢神経障害:足先のしびれや痛み、感覚の鈍さ。
- 消化管障害:原因不明の便秘や下痢を繰り返す。
「手根管症候群の手術をしたことがあり、最近息切れがする」といった方は、心アミロイドーシスが隠れている場合があります。循環器専門医にご相談ください。
心アミロイドーシスの原因と種類|遺伝する場合としない場合
心アミロイドーシスは、原因となるアミロイドタンパク質の種類によって、主に以下の2つに分類されます。原因に対する治療法が異なるため、この2つを正確に区別することが重要です。病型によっては、比較的若い方にも起こります[1][2]。
| 種類 | 原因タンパク質 | 特徴と発症年齢 |
|---|---|---|
| トランスサイレチン型(ATTR型) | トランスサイレチン(肝臓で作られるタンパク質) | 野生型(加齢性):加齢に伴ってタンパク質の構造が不安定になり、アミロイドが沈着します。主に高齢の男性に多く、診断される方が増えています。通常、遺伝する病気ではありません。 遺伝性(変異型):トランスサイレチンの遺伝子の変化が原因です。発症年齢は遺伝子の変化の種類などにより異なります。 |
| 免疫グロブリン軽鎖型(AL型) | 軽鎖(免疫グロブリンの一部) | 骨髄の異常な形質細胞が作るタンパク質が原因です。通常、遺伝する病気ではありません。進行が速い場合があり、早期の診断・治療が重要です。 |
心臓の壁が厚くなっている高齢の心不全患者さんでは、その原因として心アミロイドーシスが見つかることがあります。息切れやむくみを年齢のせいと決めつけず、原因を調べることが大切です[1][6]。
心アミロイドーシスの検査と診断
心アミロイドーシスでは、組織の一部を採取する「生検」が必要になることがあります。一方、ATTR型では、画像検査と血液・尿検査を組み合わせて、生検を行わずに診断できる場合もあります[1][3][6]。
診察や検査で見つかる手掛かり
原因不明の心不全、特に左室駆出率が保たれた心不全(HFpEF)や、心臓の壁の厚みがみられる場合は、以下の所見も参考にして原因を調べます[1][6]。
- 大動脈弁狭窄症:心臓の出口の弁が硬くなる病気です。特に高齢者では、心アミロイドーシスが合併していることがあります[1][3]。
- 心電図と心エコーの所見の組み合わせ:心エコーでは心臓の壁が厚いのに、心電図では波形が小さい「低電位」がみられることがあります。ただし、この組み合わせがなくても病気を否定できません[1][2]。
- 血圧が下がり、薬が使いにくくなる:これまで服用できていた降圧薬やβ遮断薬で、血圧が下がりすぎる場合も手掛かりになります。薬は自己判断で中止せず、主治医に相談してください[2][6]。
1. 最初に行う検査
- 心エコー検査(心臓超音波検査):心臓の壁の厚さや動きを評価します。心臓の先端部分の動きがほかの部分に比べて保たれる「相対的心尖部温存(apical sparing)」などの特徴的なパターンも確認します。ただし、この所見だけで診断することはできません[1][3]。
- 心電図検査:不整脈(心房細動など)や、低電位などの特徴的な波形を確認します[1][2]。
- 血液検査:B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)や高感度トロポニンを測定し、心臓への負担や心筋のダメージを評価します[1][2]。
2. 確定診断のための精密検査
- 血液・尿検査(血清・尿の免疫固定法、血清遊離軽鎖測定):免疫グロブリン軽鎖型(AL型)の原因となる異常なタンパク質がないかを調べます。AL型は速やかな治療が必要になるため、早い段階で確認することが重要です。異常が見つかった場合は、それだけでAL型と決めつけず、生検などで詳しく調べます[6][8]。
- ピロリン酸シンチグラフィ(核医学検査):微量の放射性物質を注射し、心臓への集積を特殊なカメラで撮影します。心臓の筋肉に一定以上の集積があり、心エコーなどの所見と一致し、血液・尿検査でAL型が否定的な場合は、心筋生検を行わずにATTR型と診断できることがあります。集積の程度と部位を、断層画像も用いて確認します[3][6][7]。
- 心臓磁気共鳴画像検査(心臓MRI):心筋の性質を詳細に評価し、アミロイドの沈着を示唆する画像の特徴を確認します[1][3]。
- 組織生検:必要に応じて、腹部の脂肪や胃・大腸の粘膜、あるいは心筋そのものを採取し、顕微鏡でアミロイドの沈着を確認します。沈着しているタンパク質の種類も調べ、治療方針につなげます[1][8]。
- 遺伝子検査:ATTR型と診断された場合は、遺伝性かどうかを確認するためにトランスサイレチン(TTR)遺伝子を調べます。高齢で発症した方や、家族に同じ病気の方がいない場合でも、遺伝性のことがあります[1][2][6]。
心アミロイドーシスの最新治療
心アミロイドーシスの治療は、この数年で進歩しています。治療の柱は、「アミロイドの沈着を抑える原因療法」と「心不全症状を和らげる対症療法」の2つです[1][6][7]。
1. 原因療法(疾患修飾薬)
アミロイドの種類によって治療法が異なります。
ATTR型に対する治療
- トランスサイレチン安定化薬(タファミジス、アコラミジス):原因となるタンパク質を安定させ、アミロイドが作られるのを抑える飲み薬です。タファミジスは、ATTR型心アミロイドーシス患者の死亡や心血管疾患による入院のリスクを減らすことが示されています[4]。また、アコラミジスも2025年3月に日本で承認され、治療の選択肢が広がっています[9][12]。
- トランスサイレチン産生抑制薬(ブトリシラン):肝臓で原因となるタンパク質が作られる量を減らす薬です。2025年6月に日本でATTR型心アミロイドーシスへの適応が追加されました。3か月に1回の皮下注射で投与し、臨床試験では死亡や心臓病による入院などのリスクを減らす効果が示されています[10][13]。 治療中はビタミンAが不足しやすくなるため、医師の指示で補給します。サプリメントを自己判断で増量しないでください[13]。
AL型に対する治療
AL型は、骨髄にある形質細胞という細胞が作る異常なタンパク質が原因です。原因となる細胞を減らすため、抗がん剤などを用います。進行が速い場合があるため、血液内科と連携して速やかに治療を始めることが重要です[1][2]。
- 化学療法・分子標的薬:異常なタンパク質を作り出す形質細胞を減らす薬(ダラツムマブ、ボルテゾミブなど)を使用します。ダラツムマブを含む複数の薬を組み合わせた治療では、異常なタンパク質を減らすだけでなく、長期的な経過を改善する効果も示されています[11]。
- 自家末梢血幹細胞移植:年齢や心臓などの臓器の機能を慎重に評価したうえで、強力な化学療法と組み合わせて行うことがあります[1][2]。
2. 対症療法(心不全・不整脈の管理)
- 利尿薬:体内の余分な水分を尿として排出し、息切れやむくみを改善します。心アミロイドーシスでは、血圧や腎機能、脱水の有無にも注意しながら、専門医が細かく用量を調整します[1][5][6]。
- 不整脈治療:心房細動を合併した場合は、心臓内に血栓(血の塊)ができやすいため、出血の危険性を確認したうえで、原則として抗凝固薬(血を固まりにくくする薬)を使用し、脳梗塞を予防します。また、脈が遅くなる不整脈に対しては、ペースメーカー植え込みが必要になることがあります[1][7]。
3. 心臓リハビリテーション
心不全を合併している場合には、病状に応じた心臓リハビリテーションを検討します。病状が安定していることを確認し、心機能や体力に合った運動を行うことが大切です[5]。
当院では、当院併設の「ReHeart Gym」では、循環器専門医の管理のもと、心臓リハビリテーション指導士が患者さんの心機能や体力に合わせた個別運動プログラムを提供し、生活の質の維持・向上をサポートします。
循環器専門医院長 浦 祐次郎から一言▶ 循環器専門医(院長 浦祐次郎)の臨床コメント 「珍しい病気だから、治療法はないのでは」と不安に感じるかもしれません。現在は病気の型に応じた治療の選択肢が増えています。まずは型と心臓の状態を確かめ、ご自身に合った治療や、日常生活で気をつけることを一緒に考えていきましょう。
心アミロイドーシスのよくある質問
病状が安定していれば、医師と相談して、体力に合った散歩などの運動を行います。心臓リハビリテーションで安全な運動の強さを確認する方法もあります。強い息切れ、胸痛、めまいが出る場合は無理をせず中止し、医療機関に相談してください[5]。
突然の強い息苦しさ、強い胸痛、意識を失う、呼びかけに反応しないといった場合は、救急要請してください。突然、片側の手足が動かしにくくなったり、ろれつが回らなくなったりした場合も同様です。自分で運転して受診することは避けてください[14]。
早期発見が未来を変える
心アミロイドーシスは、治療の選択肢が広がっている病気です。特にATTR型では、病気の進行を抑え、心臓病による入院や死亡のリスクを減らす治療が登場しています。早期に診断し、病状に合った治療を始めることが大切です[4][6][7][10]。
「手根管症候群の手術歴がある」「最近、息切れやむくみが気になる」「血圧が下がってきて、以前の血圧の薬が飲めなくなった」といったサインに心当たりがある方は、お早めにうらマイハートクリニックにご相談ください。循環器専門医の視点から、症状や検査結果を丁寧に確認し、適切な診断と治療につなげます。
福岡市で心アミロイドーシスの診療なら|うらマイハートクリニックの特徴
うらマイハートクリニック(福岡市早良区藤崎・原)は、内科・循環器内科・腎臓内科・呼吸器内科を診療し、心臓リハビリテーションにも対応するクリニックです。
院長(浦 祐次郎)は、循環器専門医・総合内科専門医・心血管インターベンション治療学会認定医・TAVI実施医/指導医・SHD心エコー図認証医・心臓リハビリテーション指導士として、九州医療センターで13年間、小倉記念病院で1年半にわたり、重症心疾患の診療に従事してきました。副院長の浦 雅紀子は腎臓内科医として、福岡山王病院で約5年間、九州医療センターで6年間にわたり、心腎連関を踏まえた包括的な腎臓病診療に従事してきました。
現在はうらマイハートクリニックにて内科医2名体制で円滑な診療に努めています。
- 院内での迅速な検査体制:BNPなど含む当日結果のわかる多様な血液検査、心臓を含む各種エコー検査、総合病院レベルの64列CT(冠動脈CT含む)に対応。
- 治療後のサポート:心臓リハビリ施設「ReHeart Gym」で専門スタッフが体力回復・心不全の悪化予防を支援。
- 通いやすい診療体制:診療開始は8時30分から、水曜は20時まで診療。駐車場11台完備。発熱症状のある方の専用入口あり。
「心臓の壁が厚いと指摘されたけれど原因がわからない」「心アミロイドーシスと診断され、治療や日常生活について相談したい」といった不安もお聞かせください。息切れやむくみが続く方、整形外科の病気や手術歴があり心臓の症状も気になる方は、福岡市早良区のうらマイハートクリニックまでお気軽にご相談ください。
この症状でお悩みですか?
当院の専門外来では最適な治療プランをご提案しております。
参考文献
[14] 総務省消防庁. 救急車利用リーフレット.
https://www.fdma.go.jp/publication/portal/post9.html